生体試料バンクを有効活用した食の安全と安心の基盤形成

文献情報

文献番号
200939037A
報告書区分
総括
研究課題名
生体試料バンクを有効活用した食の安全と安心の基盤形成
課題番号
H21-食品・一般-003
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
小泉 昭夫(京都大学 医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 原田 浩二(京都大学 医学研究科)
  • 小林 果(京都大学 医学研究科)
  • 原口 浩一(第一薬科大学 )
  • 高菅 卓三(島津テクノリサーチ 分析本部調査研究開発部)
  • 渡辺 孝男(東北文教大学 人間科学部)
  • 中塚 晴夫(宮城大学 看護学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国の食料自給率はカロリーベースで40%程度であり、食料を海外に依存しており、近年中韓越からの輸入の増大がある。食の安全を確保するために、平成18年の5月から、ポジティブリスト制度が導入された。本制度は、画期的な法制度であるが、実際に検査されるのは約10%であり、POPsや不正使用された化学物質などは捕捉できない可能性がある。そこで適切なリスク管理には、主な生産国と我が国における食事、母乳からの曝露評価の情報も活用することが安全である。
研究方法
食事・母乳の分析手法の確立、食事・母乳のポジティブリスト登録化学物質、DDT,その他POPsの分析、サンプル採取を実施する。
結果と考察
曝露評価と生物学的モニタリングの手法の確立では、ガスクロマトグラフ-飛行時間型質量分析計(GC-TOFMS)の高感度・高精度スクリーニング分析の有用性について評価した。測定感度は十分であり、また幅広い質量数にわたってスクリーニング可能で本課題の目的にかなったものであった。GC-HRMSでの結果と同等でTOFMS法の妥当性を検証できた。汚染が懸念される物質への対応では、食品試料の試行分析ではポジティブリスト農薬は検出されなかったが、POPs候補物質であるエンドスルファン、また短鎖塩素化パラフィンも検出され、食事由来曝露の寄与を解明する必要があると考えられた。今回、初めてジコホールを母乳中に検出した。日本ではトキサフェンは農薬登録されたことはないが、母乳中に検出され、越境汚染が考えられた。国際協力とリスクコミュニケーションでは中国、韓国、ベトナムに渡航し、汚染源について現地の情報を収集し、また新規に食品試料、母乳試料を採取した。試料の系統的継続的な収集では血清、全血試料各172検体、母乳試料1110検体、食事試料は134食日分の検体を試料バンクに収納、登録した。
結論
ヒト生体試料バンクの拡充を行い、提供可能な試料を増加させた。バンク試料の運用は円滑に行われ、汚染物質への曝露モニタリングを国際的、経年的に実施できることが示された。試料バンクの試料測定で時に高濃度曝露が見出され、また新規物質も検出された。今後、実態解明、リスクコミュニケーションが必要である。

公開日・更新日

公開日
2010-04-27
更新日
-