食品中の毒素産生食中毒細菌および毒素の直接試験法の研究

文献情報

文献番号
200939031A
報告書区分
総括
研究課題名
食品中の毒素産生食中毒細菌および毒素の直接試験法の研究
課題番号
H20-食品・一般-013
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
鎌田 洋一(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)
研究分担者(所属機関)
  • 小西 良子(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)
  • 重茂 克彦(岩手大学 農学部)
  • 山本 茂貴(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部)
  • 宮原 美知子(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
毒素が直接の危害因子となっている食中毒について、ブドウ球菌とセレウス菌の嘔吐毒素、ならびにウエルシュ菌下痢毒素とそれら毒素産生菌を食品中から直接検出する試験法を開発し、食中毒発生予防に資し、食品の安全安心を確保する。
研究方法
肝臓癌由来のHep G2細胞をセレウス菌嘔吐毒素処理し細胞毒性を観察した。その毒性がどのような過程で誘導されるか、遺伝子とシグナル伝達を解析した。同毒素をウサギとニワトリに免疫した。ブドウ球菌事例株のエンテロトキシン産生量を測定し、発症量との関係を検討した。IgY抗体をELISAに適応し同毒素を定量した。ウエルシュ菌下痢毒素遺伝子の核酸クロマト法における検出感度を検討した。同菌の腸管腔内での挙動、および同菌毒素と腸管上皮との相互作用を解析した。
結果と考察
Hep G2細胞ではセレウス菌嘔吐毒素処理後数時間で細胞毒性が観察され、従来のHEp-2細胞の48時間に比べ、結果の判定までの時間が大幅に短縮された。Hep G2細胞における同毒素の毒性は、アポトーシスにより誘導されることがわかった。同毒素にIgGおよびIgY抗体が作出された。Protein A存在下でもIgY抗体を用いれば、ブドウ球菌エンテロトキシンが測定可能だった。食中毒事例ブドウ球菌は各種の型の毒素を産生するが、産生毒素の総和は発症濃度を越えることが分かった。腸管上皮細胞の活動による酸化還元電位の低下がウエルシュ菌の増殖を刺激し、細胞を障害した。また著しい細菌数の増加があり、障害を受けた細胞から同菌の増殖を強く刺激する物質が放出されると考えられた。酵素標識ラテックスを利用した核酸クロマトでは、検出に必要な同菌下痢毒素遺伝子コピー数は10^6で、食品への応用が考えられる程度まで感度が向上した。同菌下痢毒素は、受容体の塩基性アミノ酸を認識して腸管上皮細胞と相互作用することが示唆された。
結論
セレウス菌嘔吐毒素のバイオアッセイおよび免疫学的検出法開発の可能性が示唆された。同毒素はアポトーシスを誘導する毒性機構を示した。より高感度で単純なブドウ球菌エンテロトキシンの免疫学的検査法が開発された。核酸クロマト法によるウエルシュ菌下痢毒素遺伝子検出法開発の可能性が示唆された。ウエルシュ菌食中毒の発病機構を調べる新しい実験系が開発された。同菌エンテロトキシンは静電気的な作用で標的細胞と相互作用していた。

公開日・更新日

公開日
2010-05-31
更新日
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