細菌性食中毒の防止対策に関する研究

文献情報

文献番号
200939014A
報告書区分
総括
研究課題名
細菌性食中毒の防止対策に関する研究
課題番号
H19-食品・一般-015
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
熊谷 進(東京大学 大学院農学生命科学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 山本 茂貴(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 小西 良子(国立医薬品食品衛生研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
24,840,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食品製造加工に用いられる機器の衛生管理の監視の要点を求める。殻付き卵のサルモネラ汚染防止対策の経済効果を推定する。魚介類腸炎ビブリオ汚染実態を究明し、食中毒防止対策の効果を検証する。
研究方法
食肉加工機械の汚染実験、パイプ接続部の汚染実験、ステンレス鋼表面の汚染実験、ステンレスとプラスチック表面の洗浄実験を行った。殻付き卵のサルモネラ汚染防止対策としてのワクチン接種、コールドチェーン導入、鶏卵の日付表示義務のについて費用便益分析に基づく経済効果の推定を行った。国産および輸入の市販二枚貝の定性および定量解析(MPN法)を実施することによって腸炎ビブリオ汚染実態の調査を行った。
結果と考察
食肉加工機械の構造と汚染との関係、パイプ接続器の締め力による菌分布の相違、ステンレス鋼表面の細菌の拭き取り検査における拭き取り圧力の影響、洗剤による洗浄効果のサルモネラ菌株による相違等が明らかにされ、機械表面の汚染の特徴と検査方法に関して食品製造加工に用いられる機器の衛生管理の監視に有用な知見が得られた。サルモネラ食中毒防止対策の経済効果について、各対策の費用便益比は、コールドチェーンの導入率が30%のケースで、ワクチン接種が3.00、コールドチェーン導入が2.29、鶏卵の日付表示義務が4.61、対策全体では2.93との結果を得た。tdh陽性腸炎ビブリオが魚介類から分離され、同陽性検体率も以前と変わらないこと、PFGE解析でpandemic株の腸炎ビブリオが流行した平成10年前後に分離された株がまだに国内に存在し腸炎ビブリオ食中毒を起こしていることが判明したことから、流通末端と消費段階での魚介類取り扱いの衛生的改善が食中毒減少に大きく貢献したものと考えられた。
結論
食品製造加工に用いられる機器の衛生管理の監視に有用な構造と汚染との関係および検査方法に関する知見が得られた。サルモネラ食中毒防止対策の経済効果を推定することができた。この手法を他の食中毒原因物質に適用することで、より効率的かつ効果的な食中毒防止対策の選択(事前)および食中毒防止対策実施後の効果の検証(事後)が可能となる。魚介類の腸炎ビブリオ汚染実態から、流通末端から消費における魚介類取り扱いの衛生的改善が食中毒減少をもたらしたものと考えられた。

公開日・更新日

公開日
2010-05-26
更新日
-

文献情報

文献番号
200939014B
報告書区分
総合
研究課題名
細菌性食中毒の防止対策に関する研究
課題番号
H19-食品・一般-015
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
熊谷 進(東京大学 大学院農学生命科学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 山本 茂貴(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 小西 良子(国立医薬品食品衛生研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食品製造加工に用いられる機器の衛生管理の監視に有用な知見を求める。殻付き卵のサルモネラ汚染防止対策の経済効果を推定する。魚介類腸炎ビブリオ汚染実態を究明し、食中毒防止対策の効果を検証する。
研究方法
食品の製造加工機器の衛生管理に関する既存の規格等の整理および汎用機械部品と食肉加工機械の細菌汚染実験を行った。殻付き卵のサルモネラ汚染防止対策の対策について費用便益分析に基づき経済効果の推定を行った。魚介類の腸炎ビブリオ汚染実態調査を行った。
結果と考察
食品の製造加工機器の衛生管理の監視に有用なJIS規格とEHEDGガイドライン等の諸項目を整理した。複雑な構造を持つ機械の構造と細菌汚染との関係、拭き取り方法と拭き取り効率との関係、表面組成と拭き取り効率の関係等が明らかにされた。殻付き卵のサルモネラ汚染防止対策の経済効果に関し、コールドチェーン導入率が30%の場合、ワクチン接種、コールドチェーン導入、日付表示義務の導入の費用便益比はそれぞれ3.00、2.29、4.61と推定され、対策全体の費用便益比は2.93と推定された。腸炎ビブリオ食中毒の激減はO3K6によるものだけでなく他の血清型によるものにも認められていること,現状では、魚介類のO3K6以外のtdh陽性検体率も以前と変わらないにもかかわらず、これらも菌による食中毒発生が認められないこと、PFGE解析でパンデミック株の腸炎ビブリオが流行した1998年前後に分離された株がいまだに国内に存在し、少数ながら食中毒を起こしていることが認められ、さらに魚介類取り扱い営業者へのアンケート結果から、流通末端から消費における魚介類取り扱いの衛生的改善が食中毒減少に貢献してしたものと考えられた。
結論
JIS等による機械に関する諸基準を監視に活かすことができることが判った。機械の構造と細菌汚染との関係および拭き取り検査方法に関して監視に有用な知見が得られた。サルモネラ食中毒対策の社会経済的な実施妥当性が検証された。腸炎ビブリオ汚染実態調査等により得られた知見より、食中毒対策に基づく地方自治体による指導の強化、営業者による衛生管理の向上への努力が功を奏し、本菌汚染食品の摂取を減少させたものと考えられた。

公開日・更新日

公開日
2010-05-26
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200939014C

成果

専門的・学術的観点からの成果
食品製造加工機器の構造と細菌汚染との関係を明らかにした。殻付き卵のサルモネラ汚染防止対策としての生産段階でのワクチンの接種、流通段階でのコールドチェーンの導入、小売段階での鶏卵の日付表示義務の導入を対象に費用便益分析に基づく経済効果を推定した。魚介類における腸炎ビブリオ汚染の実態を明らかにし、平成13年時点の同実態と比較することによって、腸炎ビブリオ食中毒の減少に対する食中毒対策の効果を検証した。これら成果は食品微生物学会や食品衛生学会等の国内学会に口頭発表され、高い評価が得られている。
臨床的観点からの成果
なし
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
食品製造加工機器の研究成果は、食品営業における一般的衛生管理の監視業務のための手引きまたはマニュアルの作成に利用できる。経済効果の研究成果は、食中毒対策を講じる場合に必要な経済的メリット・デメリットの予測に役立てることができる。魚介類における腸炎ビブリオ汚染の実態は魚介類の監視業務に役立つ。施策の透明性が要求される現在では、食中毒のリスク管理においても、食中毒対策による経済効果の予測とその検証、食中毒対策の食中毒発生に及ぼす効果の検証が重要であり、これらは本研究の成果に基づき可能となる。
その他のインパクト
なし

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
2件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
10件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
永島江美子,小田雄一郎,工藤由起子,他
Vibrio vulnificusの清水港湾内における分布
日本食品微生物学会雑誌 , 24 (2) , 189-193  (2007)
原著論文2
Kamio, A., Hara-Kudo, Y., Miyasaka, J., et al.
Efficiency of real-time polymerase chain reaction assay to detect Vibrio vulnificus in seawater
International Journal of Hygiene and Environmental Microbiology , 21 (5) , 518-523  (2008)
原著論文3
Nemoto, J., Sugawara, C., Akahane, K., et al.
Rapid and specific detection of the thermostable direct haemolysin gene in Vibrio parahaemolyticus by the Loop-mediated isothermal amplification
J. Food Prot. , 72 (5) , 748-754  (2009)
原著論文4
山﨑省吾,右田雄二,工藤由起子,他
長崎県沿岸におけるVibrio vulnificusの分布と環境因子
日本獣医師会誌 , 62 (4) , 649-655  (2009)

公開日・更新日

公開日
2013-05-27
更新日
-