ダイオキシン類等の有害化学物質による食品汚染実態の把握に関する研究

文献情報

文献番号
200939002A
報告書区分
総括
研究課題名
ダイオキシン類等の有害化学物質による食品汚染実態の把握に関する研究
課題番号
H19-食品・一般-002
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
堤 智昭(国立医薬品食品衛生研究所 食品部)
研究分担者(所属機関)
  • 松田りえ子(国立医薬品食品衛生研究所 食品部 )
  • 芦塚由紀(福岡県保健環境研究所 保健科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
57,820,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ダイオキシン類(DXN)、有機フッ素化合物(PFOA/S)、臭素系DXN等について、食品からの摂取量の把握を目的とした。また、食品中のDXN、ポリ塩化ビフェニル(PCB)及びベンゾトリアゾール類(BTA)を対象に、迅速測定法の開発を目的とした。
研究方法
1)トータルダイエット(TD)試料中のDXNを分析し、平均一日摂取量を算出した。また、魚介、健康食品等についてはDXN、魚介、ファーストフード等についてはPFOA/Sの汚染調査を行った。ハイリスク集団と考えられる魚介類多食者、小児に対してDXN摂取量を推定した。2)新規細胞株を用いたレポータージーンアッセイ(RGA)のDXN検出能を評価した。また、健康食品に含まれるDXN様活性成分を解析した。その他、機器分析によるDXN/PCBの一斉測定法、及びBTAの迅速測定法を開発した。3)魚介類及びTD試料について、臭素系DXN、臭素系難燃剤(PBB、PBDE、HBCD及びTBBPA)、コプラナー塩素・臭素化ビフェニル(Co-PXB)を分析し、摂取量を明らかにした。
結果と考察
1)DXNの平均摂取量は0.84 pgTEQ/kg/日であり、耐容一日摂取量(TDI)の約1/5であった。個別食品のDXN汚染濃度は比較的低かった。一部の魚から低濃度ではあるが、PFOSが検出された。ハイリスク集団の平均DXN摂取量はTDIを下回っていた。2)新規RGAは、従来法と比較し2倍以上、高感度であった。また、食品成分の中でtectochrysinが比較的高いDXN様活性を示した。DXN/PCB一斉測定法の魚試料中の定量値は従来法と良く一致し、実試料に適用可能であった。BTA分析では分析条件を最適化し、魚試料に適用可能なことを確認した。3)魚試料における臭素系難燃剤の検出濃度は高かった。TD試料を分析した結果、一日摂取量は臭素系DXNが0.0038 pgTEQ/kg/日、各臭素系難燃剤については0.0065から3.1 ng/kg/日であった。Co-PXBは不検出であった。
結論
1)平均的な食生活におけるDXN摂取量、及び調査した個別食品のDXNやPFOA/S濃度については、健康危害が生じるレベルでないと考えられた。2)各迅速測定法の分析条件が確立でき、食品試料に適用可能になった。3)臭素系DXN及び関連化合物の食品からの摂取量についても、健康影響が生じる可能性は低かった。

公開日・更新日

公開日
2010-06-08
更新日
-

文献情報

文献番号
200939002B
報告書区分
総合
研究課題名
ダイオキシン類等の有害化学物質による食品汚染実態の把握に関する研究
課題番号
H19-食品・一般-002
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
堤 智昭(国立医薬品食品衛生研究所 食品部)
研究分担者(所属機関)
  • 松田りえ子(国立医薬品食品衛生研究所 食品部 )
  • 芦塚由紀(福岡県保健環境研究所 保健科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ダイオキシン類(DXN)、有機フッ素化合物(PFOA/S)、臭素系DXN等について、食品からの摂取量の把握を目的とした。また、食品中のDXN、ポリ塩化ビフェニル(PCB)及びベンゾトリアゾール類(BTA)を対象に、迅速測定法の開発を目的とした。
研究方法
1)トータルダイエット(TD)試料中のDXNを分析し、国民の平均一日摂取量を算出した。魚介、健康食品等の個別食品についてDXN分析を行った。また、個別食品の汚染結果を使用して、一般の国民における魚介類からのDXN摂取量分布を推定した。PFOA/Sについても、TD試料を分析し摂取量を推定した。2)DXNに対する高感度なレポータージーンアッセイ(RGA)を開発した。また、健康食品に含まれるDXN様活性成分を調査した。その他、機器分析によるDXN/PCBの一斉測定法、及びBTAの迅速測定法を開発した。3)魚介類及びTD試料について、臭素系DXN、臭素系難燃剤(PBB、PBDE、HBCD及びTBBPA)、コプラナー塩素・臭素化ビフェニル(Co-PXB)を分析し、摂取量を明らかにした。
結果と考察
1)19から21年度のDXNsの平均一日摂取量は、0.84から0.93 pgTEQ/kg/日であり、耐容一日摂取量(TDI)を下回っていた。個別食品では一部の鮮魚及び健康食品のDXN濃度が比較的高かった。魚介類からのDXN摂取量は平均1.0 pgTEQ/kg/日(90%タイル値は2.6 pgTEQ/kg/日)であった。PFOA/S摂取量もTDIを下回っていた。2)開発したRGAは、従来法と比較し高感度であった。また、食品成分の中でtectochrysinが比較的高いDXN様活性を示した。DXN/PCB一斉測定法の定量値は従来法と良く一致し、魚試料に適用可能であった。BTA分析では分析条件を最適化し、魚試料に適用可能なことを確認した。3)魚試料における臭素系難燃剤の検出濃度は高かった。TD試料(3地域)を分析した結果、平均の一日摂取量は臭素系DXNが0.0018 pgTEQ/kg/日、各臭素系難燃剤については0.0058から3.0 ng/kg/日であった。Co-PXBは不検出であった。
結論
通常の食生活から摂取するDXN、PFOA/S、臭素系DXN及び関連化合物により、健康危害が生じる可能性は低かった。また、各種の迅速測定法が開発でき、食品試料に適用可能になった。

公開日・更新日

公開日
2010-05-28
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200939002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
ダイオキシン類(塩素化、臭素化、塩素・臭素化物を含む)、臭素系難燃剤及び有機フッ素化合物について、トータルダイエット調査により食品からの摂取量を推定した。耐容一日摂取量等と比較した結果、食品由来の摂取により健康危害を生じる可能性は低いことが明らかになった。また、ダイオキシン類、ポリ塩化ビフェニル、ベンソトリアゾール類を対象に、分析法の高感度や迅速化を行い、効率的に食品中の汚染濃度を把握するための分析法を開発した。
臨床的観点からの成果
臨床と関わりのない調査研究である。
ガイドライン等の開発
本研究で実施してきた分析法の検討などを含めて、ダイオキシン類の分析ガイドラインを改正した。改正したガイドラインは、「食品中のダイオキシン類の測定方法暫定ガイドライン」として平成20年2月28日に通知(食安監発0228003)された。
その他行政的観点からの成果
塩素化ダイオキシン類のトータルダイエット調査結果及び個別食品の汚染調査結果については、薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会において、報告事項として提示された(合計3回)。また、本研究のトータルダイエット調査で得られた塩素化ダイオキシン類摂取量については、環境省がまとめている「環境統計集」や「環境白書」、関係省庁共通パンフレットである「ダイオキシン類」等で引用されている。
その他のインパクト
日本薬学会レギュラトリーサイエンス部会主催の「第7回食品安全フォーラム」(平成21年11月30日)において、本研究成果の一部を発表した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
14件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
18件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
食品中のダイオキシン類の測定方法暫定ガイドライン. 食安監発第0228003(2008.2)
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Hori T, Yasutake D, Tobiishi K et al.
Comparison of accelerated solvent extraction and alkaline digestion-hexane shaking extraction for determination of dioxins in animal-origin food sample.
Organohalogen Compounds , 69 , 1118-1121  (2007)
原著論文2
Murata S, Nakagawa R, Ashizuka Y et al.
Brominated flame retardants (HBCD,TBBPA and ΣPBDES) in market basket food samples of northern Kyushu district in Japan.
Organohalogen Compounds , 69 , 1985-1988  (2007)
原著論文3
Tsutsumi T, Amakura Y, Tanno K et al.
Dioxins and other organohalogen compounds in fish oil supplements on the Japanese market.
Organohalogen Compounds , 69 , 2371-2374  (2007)
原著論文4
Ashizuka Y, Nakagawa R, Murata S et al.
Daily intake of brominated dioxins and polybrominated diphenyl ethers estimated by market basket study.
Organohalogen Compounds , 69 , 2769-2772  (2007)
原著論文5
Ashizuka Y, Nakagawa R, Hori T et al.
Determination of brominated flame retardants and brominated dioxins in fish collected from three regions of Japan.
Mol. Nutr. Food Res. , 52 , 273-283  (2008)
原著論文6
Tsutsumi T, Amakura Y, Ashieda K et al.
PCB 118 and aryl hydrocarbon receptor immunoassays for screening dioxins in retail fish.
J. Agric. Food Chem. , 56 , 2867-2874  (2008)
原著論文7
Tsutsumi T, Miyoshi N, Sasaki K et al.
Biosensor immunoassay for the screening of dioxin-like polychlorinated biphenyls in retail fish.
Anal. Chim. Acta. , 617 , 177-183  (2008)
原著論文8
Tsutsumi T, Amakura Y, Yanagi T et al.
Dietary exposure to dioxins in Japan: Nationwide total diet study 2002-2006.
Organohalogen Compounds , 70 , 1900-1903  (2008)
原著論文9
Amakura Y, Tsutsumi T, Sasaki K et al.
Influence of food polyphenols on aryl hydrocarbon receptor-signaling pathway estimated by in vitro bioassay.
Phytochemistry , 69 , 3117-3130  (2008)
原著論文10
Nakagawa R, Murata S, Ashizuka Y et al.
Hexabromo-cyclododecane in marine products collected from four regions of Japan.
Organohalogen Compounds , 70 , 1900-1903  (2008)
原著論文11
Amakura Y, Tsutsumi T, Tanno K et al.
Dioxin concentrations in commercial health tea materials in Japan.
J. Health Sci. , 55 , 290-293  (2009)
原著論文12
Ashizuka Y, Yasutake D, Nakagawa R et al.
Determination of polybrominated dibenzo-p-dioxins, Co-PXBs and brominated flame retardant in fish.
Organohalogen Compounds , 71 , 1251-1254  (2009)
原著論文13
Tsutsumi T, Ishizuka N, Denison MS et al.
A new reporter gene assay for dioxins using green fluorescent protein: increased responsiveness using amplification of the dioxins responsive element.
Organohalogen Compounds , 71 , 1349-1352  (2009)
原著論文14
Hori T, Yasutake D, Ashizuka Y et al.
Simultaneous determination of dioxins and all PCB isomers in food samples using accelerated solvent extraction and gel permeation chromatography.
Organohalogen Compounds , 71 , 2578-2582  (2009)

公開日・更新日

公開日
2013-05-27
更新日
-