高齢社会の医療提供体制における必要医師数の推計に関する研究

文献情報

文献番号
200937055A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢社会の医療提供体制における必要医師数の推計に関する研究
課題番号
H21-医療・一般-013
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
大島 伸一(国立長寿医療センター)
研究分担者(所属機関)
  • 長谷川 敏彦(日本医科大学)
  • 長谷川 友紀(東邦大学)
  • 平尾 智広(香川大学)
  • 清水 佐知子(大阪大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
8,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
研究の目的は、医療界の重要課題「医師の需給」につき、「診療科、地域別、性別を分野として実態把握」し、「歴史及び政策的分析」をふまえて検討し、「モデルを構築してシミュレーション」することである。
研究方法
研究の方法は、官庁統計や各種団体の調査、更には先行研究のレビューによって、まず医師の業務や医師数過不足の「実態を把握」し、その「背景や原□□ェ析」、併せて「経済分析」や「政策分析」によって「臨床」、「病院」、「地域」、「国」レベルでの「業務改善」や「政策形成」に資するよう分析した。更に「医師需給の定量的推計」については、国内外の推計モデルをレビューし、その長所や短所を踏まえて、「医師個人レベル」、「診療科レベル」、「国全体での推計」の各レベルでシミュレーションを試みた。
結果と考察
従来のモデルは、高齢化社会の医療需要等に質的課題を含めて対応していないため、そして僅かな数字の変化で結論が変わるため、安定した「新たなモデルを再構築」する必要である事が判明した。また高齢開業医が増加し「医師のキャリアが大きく変わる」ことが明らかとなった。
「診療科別医師数」の実態では社会変化を背景とする不足が生じており、従来の認識と異なる結果が得られた。「女性医師の実態」について30才代の女性医師の就業率が低下し、労働形態も多様であることが判明した。「医師の地域や診療科等の遍在」を、政府統計を用いて解析し、4地域類型に分類して分析した結果、地方中小都市での不足が大きいことが判明した。「医師の業務負担」改善には多面的方策が必要であることが明らかとなった。
「日本の医療人材政策の歴史的分析」からは、政策が工夫されていたことが判った。今日の医師労働市場の問題には、「医局の形成過程」の歴史が背景となっていることが明らかとなった。「医師供給誘導需要」の検証のため、県別医療費を用いて弾力性を計算した結果、医師一人当たり約1~2億円の医療費増の可能性が判明した。
結論
医師需給の問題は臨床・施設・地域・国の各レベルで、それぞれの「医療システムのマネジメント」の課題として捉えるべきで、単なる数字合わせでないことが明確となった。医師人材資源政策には、「医療制度改革の大きな枠組」の中で主要な要素として組み立てる必要があること、そして「医師個々人のキャリアパス」を再検討することが必須であると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2010-05-31
更新日
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