抑肝散の示す精神疾患周辺行動改善に対する科学的検証

文献情報

文献番号
200937033A
報告書区分
総括
研究課題名
抑肝散の示す精神疾患周辺行動改善に対する科学的検証
課題番号
H20-医療・一般-025
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
遠山 正彌(大阪大学大学院医学系研究科 神経機能形態学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 宮田信吾(大阪大学大学院医学系研究科 神経機能形態学講座 )
  • 松崎伸介(大阪大学大学院小児発達学研究科 )
  • 熊本奈都子(大阪大学大学院医学系研究科 神経機能形態学講座 )
  • 服部剛志(大阪大学大学院医学系研究科 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
特定の漢方薬が臨床的に有効で副作用が少ないことは経験的に知られているが「その科学的立証が乏しいため広範囲には使用されていない。漢方薬の効果に科学的根拠が与えられれば上記の問題は解決でき、有効成分の同定から新規創薬の開発に道を開きうる。本研究は臨床的に効果が認められている漢方薬、抑肝散のアルツハイマー病や統合失調症の改善効果を科学的に立証することにある。
研究方法
1)抑肝散のアルツハイマー病への効果の科学的検証
・小胞体ストレスを負荷した培養神経細胞への抑肝散効果を期待した。
・アルツハイマー病危険遺伝子産物であるプレセニリン1(PS1)変異産物(⊿9)を強制発現させた神経細胞においても同様の検討を行って効果のあった生薬から有効成分を抽出した。
2)抑肝酸の統合失調症への効果の科学的解析〔阪大島田教授のグループの協力を得て〕D1,D2,5HT1A,5HT2A,5HT2C,5HT受容体への抑肝散あるいはその構成分の効果を検討した。
結果と考察
1)抑肝散のアルツハイマー病への効果の科学的検証
培養神経細胞に小胞体ストレスを負荷すると一定数の神経細胞が細胞死を起こす。(⊿9)を強制発現された神経細胞に小胞体ストレスが負荷されると細胞死を起こす細胞数は急増する。抑肝散の7種の構成成分のうちセンキュウのみが容量依存性に小胞体ストレス負荷による神経細胞死を救済した。細胞死を目安としてセンキュウのどの構成分がその効果を担うかを検討したところ成分xがその効果を担うこと明らかとした。
2)抑肝酸の統合失調症への効果の科学的解析
抑肝散の構成生薬チョウトウコウに含まれる各種アルカロイドの5HT,DA受容体への効果を検討した。その結果、成分xxは5-HT1A受容体のagonist、5-HT2A, 2C受容体のantagonist、5-HT7受容体のantagonist、D2受容体のpartial agonistであることが明らかとなった。他のアルカロイドはこのような効果を有しなかった。

1)抑肝散のアルツハイマー病への効果の科学的検証
センキュウに含まれる成分xがその作用発現を担っていることが解明できた。2)抑肝酸の統合失調症への効果の科学的解析
成分xxは5HT、DA受容体を制御することが示された。
結論
本研究は抑肝散の構成生薬センキュウに含まれる成分xが小胞体ストレス負荷による神経細胞死を防ぐことが明らかとなった。また抑肝散の統合失調症への効能は抑肝散の構成生薬チョウトウコウに含まれるアルカロイド、成分xx、が5HT, DA受容体の機能を制御することにより発揮されることも明らかとなった。

公開日・更新日

公開日
2010-05-12
更新日
-

文献情報

文献番号
200937033B
報告書区分
総合
研究課題名
抑肝散の示す精神疾患周辺行動改善に対する科学的検証
課題番号
H20-医療・一般-025
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
遠山 正彌(大阪大学大学院医学系研究科 神経機能形態学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 宮田 信吾(大阪大学大学院医学系研究科 神経機能形態学講座 )
  • 松崎 伸介(大阪大学大学院医学系研究科 神経機能形態学講座 )
  • 熊本 奈都子(大阪大学大学院医学系研究科 神経機能形態学講座 )
  • 服部 剛志(大阪大学大学院医学系研究科 神経機能形態学講座 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
特定の漢方薬が臨床的に有効で副作用が少ないことは経験的に知られているがその科学的立証が乏しいため広範囲には使用されていない。本研究は臨床的に効果が認められている漢方薬、抑肝散のアルツハイマー病や統合失調症の改善効果を科学的に立証することにある。
研究方法
1)抑肝散のアルツハイマー病への効果の科学的検証
・小胞体ストレスを負荷した培養神経細胞群への抑肝散効果を検討した。
・アルツハイマー病危険遺伝子産物であるプレセニリン1(PS1)変異産物(⊿9)を強制発現させた神経細胞においても同様の検討を行った。
・効果のあった生薬から有効成分を細胞死をマーカーとして抽出する。
2)抑肝酸の統合失調症への効果の科学的解析
D1,D2,5HT1A,5HT2A,5HT2C,5HT7受容体への抑肝散あるいはその構成分の効果を検討した。
結果と考察
1)抑肝散のアルツハイマー病への効果の科学的検証
培養神経細胞に小胞体ストレスを負荷すると少数の神経細胞が細胞死を起こす。⊿9を強制発現された神経細胞に小胞体ストレスが負荷されると細胞死を起こす細胞数は急増する。すなわちアルツハイマー病における神経細胞死は変異産物が小胞体機能を障害するために引き起こされる。抑肝散の7種の構成成分のうちセンキュウのみが小胞体ストレス負荷による神経細胞死を救済した。センキュウのどの構成分がその効果を担うかを検討したところ成分xがその効果を担うことを明らかとした。
2)抑肝酸の統合失調症への効果の科学的解析
抑肝散の構成生薬チョウトウコウに含まれる各種アルカロイドの5HT,DA受容体への効果を検討した。その結果、成分xxは5-HT1A受容体のagonist、5-HT2A, 2C受容体のantagonist、5-HT7受容体のantagonist、D2受容体のpartial agonistであることが明らかとなった。
考察
1)抑肝散のアルツハイマー病への効果の科学的検証
抑肝散成分Xがアルツハイマー病神経細胞死を防ぐ事が明らかとなった。
2)抑肝酸の統合失調症への効果の科学的解析
抑肝散構成生薬チョウコウトウの成分xxが5HT,DA受容体の作用を制御することが明らかとなった。
結論
本研究により抑肝散のアルツハイマー病への効能はセンキュウに含まれる成分xが小胞体ストレス負荷による神経細胞死を防ぐことにより発揮されることが明らかとなった。また抑肝散の統合失調症への効能は抑肝散の構成生薬チョウトウコウに含まれるアルカロイド、成分xx、が5HT, DA受容体の機能を制御することにより発揮されることも明らかとなった。

公開日・更新日

公開日
2010-05-06
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200937033C