歯科関連職種における技術能力向上に寄与する試験のあり方の研究

文献情報

文献番号
200937028A
報告書区分
総括
研究課題名
歯科関連職種における技術能力向上に寄与する試験のあり方の研究
課題番号
H20-医療・一般-019
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
石橋 寛二(岩手医科大学 歯学部)
研究分担者(所属機関)
  • 須田 英明(東京医科歯科大学 大学院・医歯学総合研究科)
  • 福田 仁一(九州歯科大学)
  • 中垣 晴男(愛知学院大学 歯学部)
  • 末瀬 一彦(大阪歯科大学 歯科技工専士門学校 歯科衛生士専門学校)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
3,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年の医療技術の進歩により患者ニーズの多様化及び患者権利の認識が進み、卒前歯科医学教育における臨床実習時間数が減少し、歯科医師国家試験合格者の技術能力の低下が懸念されている。このような状況の中、歯科医師国家試験における臨床実地問題の重要性は以前よりも増している。このことから、平成20年度は、歯学部学生の実技実習(基礎実習・臨床実習)における成績と国家試験問題から抽出した既出問題(補綴系、保存系、口腔外科系)における成績との相関性、歯科技工士学科学生の実技実習における成績と資格試験問題からの抽出問題ならびに新たに作成された問題における成績との相関性について分析した。そこで、平成21年度は、平成20年度に実施された歯学部学生と歯科技工士学科学生における実技実習成績ならびに客観式多肢選択形式による試験成績に関する分析結果をもとに、歯科衛生士学科学生について同様に分析した。
研究方法
技術能力が幅広く客観的に評価できる標準的な歯科衛生士試験問題の出題のあり方を検討するために、実技実習成績(歯科予防処置関連、スクリーニング関連、歯科保健指導関連、歯科診療補助関連)と客観式多肢選択形式(国家試験抽出問題)試験成績との相関性について検討した。
結果と考察
①一般問題、臨床問題にかかわらず0.2-0.3の識別係数を示す問題も見られ客観式多肢選択形式試験成績は実技実習成績を識別していた。②客観式多肢選択形式試験の基礎問題と臨床問題ではより臨床問題が相関する傾向にあった。③今回の客観式多肢選択形式試験では正答率が90%を超える問題があり、これらは識別係数が低くかった。客観式多肢選択形式による試験は、その中に一般問題と臨床実地問題を適切な割合で含むことにより実技成績を評価することが明らかとなる。一方、高い正答率の問題が識別係数を低くしている可能性が示唆され、適切な正答率(50%-70%)の問題による客観式多肢選択形式による試験が行われることが望まれる。
結論
客観式多肢選択形式試験評価は養成校の歯科衛生士科における実技実習成績と正の相関をしていると結論される。また、実技実習成績合計得点に対する識別係数が適当である客観式多肢選択形式試験問題は、実技を問う問題や回答肢が均質な問題であると結論された。

公開日・更新日

公開日
2010-05-23
更新日
-

文献情報

文献番号
200937028B
報告書区分
総合
研究課題名
歯科関連職種における技術能力向上に寄与する試験のあり方の研究
課題番号
H20-医療・一般-019
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
石橋 寛二(岩手医科大学 歯学部)
研究分担者(所属機関)
  • 須田 英明(東京医科歯科大学 大学院・医歯学総合研究科)
  • 福田 仁一(九州歯科大学)
  • 中垣 晴男(愛知学院大学 歯学部)
  • 末瀬 一彦(大阪歯科大学 歯科技工士専門学校 歯科衛生士専門学校)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年の医療技術の進歩により患者ニーズの多様化及び患者権利の認識が進み、卒前歯科医学教育における臨床実習時間数が減少し、歯科医師国家試験合格者の技術能力の低下が懸念されている。このような状況の中、歯科医師国家試験における臨床実地問題の重要性は以前よりも増している。本研究では、歯学部学生の実技実習成績と客観式多肢選択形式(国家試験抽出問題)試験成績との相関性を分野ごとに分析し、臨床判断能力及び技術能力が反映される標準的な出題のあり方について検討した。さらに、歯科技工士学科学生、歯科衛生士学科学生については技術・技工能力がより幅広く客観的に評価できる出題のあり方について検討した。
研究方法
歯学部学生の実技実習成績と客観式多肢選択形式試験成績との相関性を補綴系、保存系、口腔外科系の各分野にて分析した。歯科技工士学科学生、歯科衛生士学科学生においては、実技実習成績と客観式多肢選択形式試験成績との相関性について検討した。
結果と考察
歯学部学生においては各分野における客観式多肢選択形式試験成績と基礎実習および臨床実習の実技成績の間には多くの場合に有意な相関がみられた。客観式多肢選択形式試験問題を一般問題と臨床実地問題に分けて検討を行った場合、実技実習成績との相関関係に違いが見られなかった。また、一般問題も臨床実地問題も実技実習成績を識別していた。歯科技工士学科学生においても、有床義歯技工学に関する客観式多肢選択形式の試験成績と総義歯の実技評価の間には高い相関がみられ、歯冠修復技工学に関する客観式多肢選択形式の試験成績と歯型彫刻および全部鋳造冠の実技評価の間には高い相関がみられた。歯科衛生士学科学生においては、①一般問題、臨床問題にかかわらず0.2-0.3の識別係数を示す問題も見られ客観式多肢選択形式試験成績は実技実習成績を識別していた。②客観式多肢選択形式試験の基礎問題と臨床問題ではより臨床問題が相関する傾向にあった。③今回の客観式多肢選択形式試験では正答率が90%を超える問題があり、これらは識別係数が低かった。
結論
本研究より、歯学部学生、歯科技工士学科学生、歯科衛生士学科学生における実技実習成績と客観式多肢選択形式試験の成績は相関していた。技術能力が反映される試験問題を検討し、出題することで、資格試験によって技術能力を的確に評価できることが示唆された。

公開日・更新日

公開日
2010-05-23
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200937028C

成果

専門的・学術的観点からの成果
歯学部学生の実技実習と国家試験問題の成績との相関性を分野ごとに分析し、現行の客観式多肢選択形式において臨床判断及び技術能力が反映される出題のあり方を検討した。併せて歯科衛生士、歯科技工士の試験においても技術・技工能力が客観的に担保される出題のあり方を検討した。歯学部学生、歯科技工士学科学生、歯科衛生士学科学生における実技実習成績と客観式多肢選択形式試験の成績は相関していた。技術能力が反映される試験問題を検討し、出題することで、資格試験によって技術能力を的確に評価できることが示唆された。
臨床的観点からの成果
技術能力をいかに反映した国家試験問題を出題すべきか、さらには臨床実習教育結果が国家試験にどの程度反映されているのかを評価する必要がある。本研究より、技術能力を評価できる作問には良質な視覚素材が必要であることが確認された。客観試験でありながら、技術能力を評価することが可能であるという本研究から導き出された結果、ならびに歯学部学生、歯科衛生士学科学生、歯科技工士学科学生の技術能力の評価と客観式多肢選択試験の結果に有意な相関が得られたという意義は大きい。
ガイドライン等の開発
近年、患者側の臨床実習への理解度が低い現状として、日本の医療制度、歯科の社会保険制度、診療報酬等が問題になっている。教育機関である大学病院の臨床実習は、指導者の管理の元に診療が進むシステムにて質が保たれており、国民の理解が得られる対策が求められる。学生教育に協力した患者への待遇、治療者側のキャリアに応じた対価の設定は検討すべきである。歯科技工士の臨床実習については、違法性の阻却の問題があり、実現されていない。歯科技工士が歯科医療の一員として教育を受けるためにも臨床実習の法的整備、検討が待たれる。
その他行政的観点からの成果
近年の医療技術進歩により患者ニーズの多様化や患者権利の認識が進み、卒前歯科医学教育における臨床実習時間数が減少傾向にある。歯科医学教育において殆どの大学が国試対策に時間を費やし、そのため歯科医師国家試験合格者の技術能力低下が懸念される。歯学部学生、歯科衛生士学科学生、歯科技工士学科学生への技術能力が評価できる評価項目の標準化が必要である。技術能力を評価する観点からみて、臨床実習教育そのものが大切であり、臨床実習で学んだことで解答できる試験実施が必要であるということが本研究結果から明らかとなった。
その他のインパクト
本研究内容について、シンポジウムを開催し、国家試験問題のあり方,卒前臨床実習教育,技術能力向上について幅広く展開された.本研究シンポジウムより、臨床を重視した問題を国家試験へ多く導入する必要があること、歯学部学生のみならず、歯科技工士・歯科衛生士学科学生へも実技能力が反映された問題を出題することの重要性が示され、意義深いものとなった。客観試験でありながら、技術能力を評価することが可能であるという本研究から導き出された結果は、国家試験問題を作問される立場の方に是非とも情報として取り入れて頂きたい。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2020-05-27
更新日
-