歯科補綴物の多国間流通に関する調査研究

文献情報

文献番号
200937027A
報告書区分
総括
研究課題名
歯科補綴物の多国間流通に関する調査研究
課題番号
H20-医療・一般-018
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
宮崎 秀夫(国立大学法人新潟大学 大学院医歯学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 佐藤 博信(福岡歯科大学 歯学部)
  • 末瀬 一彦(大阪歯科大学 歯科技工士専門学校)
  • 吉成 正雄(東京歯科大学 口腔科学研究センター)
  • 阿部 智(神奈川歯科大学 歯学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
3,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本を含む各地域で使用される陶材焼付鋳造冠の金属の成分を確認すること,および,歯科補綴物の安全性に関する米国の動向について検証することを目的とした。
研究方法
世界の4地域(日本,米国,欧州,中国)各4ヵ所の歯科技工所計16ヵ所から,陶材焼付鋳造冠各4個,計64個を分析試料として収集し,陶材焼付鋳造冠の金属部分を分析対象として電子線マイクロアナライザー(EPMA)および誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP)により構成元素の同定(定性分析),簡易定量分析および微量成分分析を行った。また,海外の歯科技工所で作製された歯科補綴物から鉛が検出されたとする米国オハイオ州のテレビ局報道(2008年2月放映)に端を発した歯科補綴物の安全性に関する米国の関係諸機関の動向について一次資料を用いて検証した。
結果と考察
EPMA 分析では,カドミウム(Cd),鉛(Pb)の含有量は全ての試料でEPMAの検出限界0.1質量%未満であった。また,ICP 分析において,Be,CdおよびPbの含有量はすべての試料でICPの検出限界100 ppb(実質的な検出限界10 ppm = 0.001質量%)未満であった。米国での歯科補綴物の安全性に関する見解では,米国歯科医師会(ADA)が陶材焼付鋳造冠の陶材部分と陶材粉末を対象に測定した鉛の濃度は,平均46 ppmと極めて低かった。また,ADA は鉛について含有量よりも溶出量の測定の方が重要であるとし,溶出試験を行ったところ,口腔内よりも厳しい環境下(4 % 氷酢酸,80 ℃,16時間)でも鉛の溶出は確認されなかった。さらに,試験用に高濃度(500 ppm)の鉛を加えたサンプルでも鉛は全く検出されなかったことから,ADAは患者への健康被害はないと2009年3月に米国疾病予防管理センター(CDC)および米国食品医薬品局(FDA)へ回答した。また,鉛の問題について,国際標準化機構技術委員会歯科(ISO/ TC 106)の分科委員会(SC)補綴材料ワーキンググループでは,鉛溶出の可能性が極めて低いことからISO の基準に採択されなかった。
結論
世界4地域から収集した64個の陶材焼付鋳造冠の金属部分にBe,Cd およびPbは含有しないと判断された。ADAが測定した陶材焼付鋳造冠の陶材部分の鉛の濃度は極めて低かった。また,鉛の含有量よりも溶出量の測定の方が重要であるとしてADA が行った溶出試験では,口腔内よりも厳しい環境下でも鉛の溶出は確認されず,高濃度の鉛を加えたサンプルでも鉛は全く検出されなかった結果をCDCとFDAに報告した。

公開日・更新日

公開日
2010-05-30
更新日
-

文献情報

文献番号
200937027B
報告書区分
総合
研究課題名
歯科補綴物の多国間流通に関する調査研究
課題番号
H20-医療・一般-018
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
宮崎 秀夫(国立大学法人新潟大学 大学院医歯学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 佐藤 博信(福岡歯科大学 歯学部)
  • 末瀬 一彦(大阪歯科大学 歯科技工士専門学校)
  • 吉成 正雄(東京歯科大学 口腔科学研究センター)
  • 阿部 智(神奈川歯科大学 歯学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本では受注側と供給側の視点から歯科補綴物の海外への発注の実態を明らかにすること,世界に流通する歯科補綴物の安全性および諸外国の歯科補綴物の安全性に対する対応を検証すること。
研究方法
日本歯科医師会会員 61,460名の5 %(3,073名)を無作為抽出し,アンケート形式による往復郵送調査法を行った。また,世界の4地域から陶材焼付鋳造冠を計64個収集し,米国歯科医師会(ADA)の調査で実施されなかった陶材焼付鋳造冠の金属部分を対象として電子線マイクロアナライザー(EPMA)および誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP)により成分分析を行った。さらに,歯科補綴物の安全性に関する米国の関係諸機関の動向について一次資料を用いて検証した。
結果と考察
海外に補綴物製作を発注した経験のある日本の歯科医師の割合は7.4 %と低く,毎月の発注件数10件未満が96.0%であり,91.3%が外注全体に占める割合5%未満であった。さらに,83.8%が今後発注する予定がないと回答した。発注先は中国が最も多く,次いで,アメリカ,EU諸国であり,歯科補綴物の種類ではノンクラスプ義歯が多かった。EPMA 分析の結果,カドミウム(Cd),鉛(Pb)の含有量は全ての試料でEPMAの検出限界0.1質量%未満であった。また,ICP 分析では,Be,CdおよびPbの含有量はすべての試料でICPの検出限界の100 ppb未満であった。米国での歯科補綴物の安全性に関する見解では,米国歯科医師会(ADA)が行った陶材焼付鋳造冠の陶材中の鉛濃度測定結果は平均46 ppmと極めて低い値であった。また,溶出量測定の方が重要であるという視点から,口腔内よりも厳しい環境下(4 % 氷酢酸,80 ℃,16時間)で溶出試験を行った結果,鉛溶出の確認はできなかった。さらに,試験用に高濃度(500 ppm)の鉛を加えたサンプルでも鉛は全く検出されなかった。これらに基づきADAは,患者への健康被害はないと2009年3月に米国疾病予防管理センター(CDC)および米国食品医薬品局(FDA)へ回答した。
結論
海外に補綴物製作を発注した経験のある日本の歯科医師の割合は7.4 %であり,ノンクラスプ義歯が多かった。世界4地域から採取した陶材焼付鋳造冠の金属部分にBe,Cd およびPbは含有しないと判断された。2008年にADAが測定した陶材焼付鋳造冠の陶材部分の鉛の濃度は極めて低く,口腔内よりも厳しい環境下での溶出試験では鉛の溶出は確認されず,高濃度の鉛を加えたサンプルでも鉛は全く検出されなかった。ADAはこれらの結果を2009年3月にCDCとFDAに報告した。

公開日・更新日

公開日
2010-05-30
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200937027C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 日本歯科医師会会員から5 %無作為抽出し,歯科補綴物の海外発注の実態調査したところ,7.4 %が経験有りとし,ノンクラスプ義歯を多く発注していた。陶材焼付鋳造冠の金属分析では,有害物質は検出されなかった。米国の陶材焼付鋳造冠の鉛汚染を検証し,1)鉛濃度は平均46 ppmと低く,2)溶出量測定で鉛は検出されず,3) 高濃度鉛添加サンプルでも鉛は検出されなかった。よって,米国歯科医師会は患者への健康被害はないと結論付けた。
臨床的観点からの成果
 ノンクラスプ義歯の需要は増えていたが,設計のガイドラインもなく,エビデンスが少ないことから,今後の基礎的研究に加えて臨床や技工の状況(海外発注を含む)の追跡調査が望まれる。また,CAD/CAM補綴修復の海外の歯科技工所への発注の増加が予想され,同様に今後も調査が必要である。陶材焼付鋳造冠の陶材部分と金属部分の安全性は確認できたが,医療の質を担保するトレーサビリティーなどの検証が必要であると考えられた。
ガイドライン等の開発
 終了直後により,該当無し。
その他行政的観点からの成果
 終了直後により,該当無し。
その他のインパクト
 以下の通り,新聞,テレビなどマスコミで研究結果を引用された。
・TBS「報道特集NEXT」:中国製歯科技工物は安全か(2010年2月6日 放送)
・TBS「報道特集NEXT」:続報!中国製義歯の安全性(2010年2月13日 放送)
・日本歯科新聞(2009年4月14日付)

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2020-05-27
更新日
-