脊柱変形由来の胸郭不全症候群の実態調査とその診断・治療方針の検討

文献情報

文献番号
200936204A
報告書区分
総括
研究課題名
脊柱変形由来の胸郭不全症候群の実態調査とその診断・治療方針の検討
課題番号
H21-難治・一般-149
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
川上 紀明(名城病院 整形外科/脊椎脊髄センター)
研究分担者(所属機関)
  • 南 昌平(聖隷佐倉市民病院 整形外科)
  • 宇野 耕吉(独立行政法人国立病院機構 神戸医療センター 整形外科)
  • 松本 守雄(慶應義塾大学医学部附属病院 整形外科)
  • 伊東 学(北海道大学医学部附属病院 整形外科)
  • 竹下 克志(東京大学医学部附属病院 整形外科)
  • 柳田 晴久(福岡市立こども病院・感染症センター 整形外科)
  • 辻 太一(国家公務員共済組合連合会名城病院 整形外科)
  • 渡邉 航太(慶應義塾大学 先進脊椎脊髄病治療学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
脊柱変形由来の胸郭不全症候群は、乳幼児期から発症し変形が進行した場合、肺成長が阻害され呼吸障害を生ずる病態である。この疾患は概念そのものが新しく、その病態や自然経過等の実態把握がされていない。本疾患は非常に難治性であり、これに対し欧米に次いで本邦においてもVEPTR(ベプター)と呼ばれるデバイスで治療が開始されている。しかし、その適応や治療指針は未だ明らかとなっていない。本研究の目的は疾患の実態を調査、検討することによりVEPTRによる治療のガイドラインを作成することである。
研究方法
アンケート送付によるデーター収集を行なった。全国450施設の整形外科、小児科743部署にアンケートを郵送し回答のあった施設から、さらなる患者情報、X線写真の提供を受け検討した。対象は先天性側弯症に伴う胸郭不全症候群とし初診時10歳以下で最低 2年間自然経過を観察できたものとした。医原性のものは除外した。肋骨、脊椎の変形の有無や程度、タイプ等の違いが側弯(変形)の進行に影響するか否かを検討した。
結果と考察
アンケートの回収率は50.5% 総患者数312名であり、64患者(男性25名、女性39名)が今回の検討の対象となった。初診時年齢は平均2.4歳、経過観察期間は8.3年であった。この間に側弯は41.6°が60.9°まで進行していた。初診時の側弯角度が50°以上のものではそれ以下と比較し側弯進行が早かった。肋骨奇形が両側性のものでは側弯進行は年平均2.0°で片側性では3.1°と有意に進行していた。また肋骨変形が胸郭の大部分を占めるものでは、3分の1を占めるものより側弯進行が速かった。脊椎奇形ではunilateral unsegmented bar が年平均3.6 °の側弯進行を示しその他の1.7°と比較し有意に進行していた。これらの結果より、全ての患者で側弯が進行している訳ではなく、肋骨奇形のlateralityや部位、脊椎奇形のタイプにより差が生じていた。これらを勘案すると胸郭不全症候群の進行予測ができ、治療指針構築の一助となると考えられた。
結論
先天性側弯症に伴う胸郭不全症候群の進行の危険因子は、1. より若年で側弯が存在する。2. 肋骨奇形が片側である。3. Unilateral unsegmentd barが存在する。4. より広い部位に肋骨奇形が存在する場合、と考えられた。

公開日・更新日

公開日
2010-05-10
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200936204C

成果

専門的・学術的観点からの成果
胸郭不全症候群という新しい疾患概念は未だ広く知れ渡っておらず、引き起こす可能性の高い肋骨異常を伴う先天性側弯症、高度側弯症、医原性側弯症などの各疾患における悪化因子やどのような疾患が予後不良であるのか明確ではなかった。今回本症候群の原因疾患の代表的疾患である肋骨異常を伴う側弯にフォーカスをあててその自然経過と悪化の危険因子を明らかにすることができた。今後の研究推進するための基本的データとなり、さらなる研究の方向付けができた。
臨床的観点からの成果
胸郭不全症候群を引き起こす可能性のある代表的疾患である肋骨異常を伴う先天性側弯症の自然経過にはその奇形椎のタイプや特徴、肋骨異常のタイプや難易、部位などから様々な状態があることがわかった。全く側弯の悪化しないものから、年4度以上で悪化する物まであり、その悪化因子として片側分節異常で反対側に半椎を合併する混合型、広範囲な片側肋骨癒合、幼少児期の異常、などがあることを報告した。
ガイドライン等の開発
本研究は始まったばかりで、ガイドラインや治療指針をたてるには未だ至っていない。
その他行政的観点からの成果
胸郭不全症候群の疾患群の各特徴を把握しておくことは本疾患で苦しむ小児の患者を治療する上において大変重要なことである。早期の悪化進行するタイプを見極めることは一般的に困難である。一部の疾患ではあるが、自然経過と悪化因子を明らかにすることができた。この結果をもとに早期治療の重要性をアピールでき、その生命予後を改善することが期待できる。
その他のインパクト
本研究はまだ始まったばかりといえるもので、今後、2010年7月のIMAST学会で報告する予定である。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
-