14番染色体父性片親性ダイソミー関連疾患の実態把握と診断・治療指針作成

文献情報

文献番号
200936199A
報告書区分
総括
研究課題名
14番染色体父性片親性ダイソミー関連疾患の実態把握と診断・治療指針作成
課題番号
H21-難治・一般-144
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
鏡 雅代(国立成育医療センター研究所 小児思春期発育研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 柴崎淳(神奈川県立こども医療センター 新生児科)
  • 左合治彦(国立成育医療センター 周産期診療部)
  • 宮崎治(国立成育医療センター 放射線診療部)
  • 黒澤健司(神奈川県立こども医療センター 遺伝科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
14番染色体父性片親性ダイソミ(upd(14)pat)は胎児期より羊水過多、胎盤過成長を呈し出生後はベル型と形容される小胸郭、臍帯ヘルニア等の腹壁の異常、特徴的な顔貌を示すが、その疾患概念は、周知されていない。また、病因もダイソミーだけではなく、微小欠失、エピ変異(ダイソミーや欠失を伴わないメチル化異常)が含まれていることが最近明らかとなっている。本研究では、upd(14)patの胎児期から小児期にいたる経過を明らかとし、診断・治療指針を示すことを目指す。本研究では、以下のことを実施する。(1) 疾患診断法の確立、(2) 発症率の推定と臨床データの集積、(3) 出生前診断法の確立、(4) 臨床および放射線診断法の確立、(5)臨床像、長期予後の把握、(6) 診断・治療指針の作成
研究方法
全国のNICU及び遺伝外来の医師に対し患者実態調査を施行した。さらに我々の遺伝子解析により確定診断されている患者の臨床像、画像所見を集積し、診断基準・治療指針を作成する。
結果と考察
全国患者実態調査: 33例の14番染色体父親性ダイソミー表現型陽性患者の報告があった(回答率65%)。
分子遺伝学的解析:表現型陽性患者27名の解析の結果、父親性ダイソミーが62%、微小欠失が21%、エピ変異が17%であった。
出生前診断法の確立:特徴的な超音波所見として、疾患特異的なベル型胸郭、軽度四肢短縮、腹壁異常、および、妊娠中期後半から出現する羊水過多と巨大胎盤が認められた。
画像診断法の確立:コートハンガー型肋骨変形は経時的な改善傾向を示さず、ベル型胸郭は改善した。よって、2歳以降はコートハンガー型肋骨変形で画像診断する必要がある。
患者臨床像、長期予後:①喉頭軟化,気管・気管支軟化,胸郭低形成,肺低形成のために出生後から必要とされる人工呼吸管理は、3日間から3年8ヶ月間と幅広い。離脱には、気管気管支軟化症、胸郭の成長が極めて重要な因子であった。②約1/3の症例が気管切開を必要とした。③発達障害(DQは32から48)を認めた。④長期呼吸管理にも関わらず、生存3例はいずれも4歳までに独歩達成を得ている。⑤慢性便秘の症例を認める。⑥2例において肝芽腫を認める。
以上の結果より本疾患の発症頻度、原因、画像所見、臨床像を把握できたと考えられる。
結論
本年度、全国調査で33例の表現型陽性患者の報告があった。自験例の解析から病因はダイソミーが62%、微小欠失が21%、エピ変異が17%と判明し、胎児期、新生児期、乳児期以降の臨床像や画像所見を明らかとした。

公開日・更新日

公開日
2010-05-18
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200936199C

成果

専門的・学術的観点からの成果
14番染色体父親性ダイソミー表現型を示す患者の病因は、ダイソミー62%、微小欠失21%、エピ変異17%と判明した。さらに、14q32.2領域のインプリンティングセンターである生殖細胞でメチル化が確立するgerm line DMRであるIG-DMRと受精後にメチル化が確立するsecondary-DMRであるMEG3-DMRのそれぞれの機能、役割分担を明らかとした。同一インプリンティング領域においてgerm line DMRとsecondary-DMRの機能が明確となった初めての研究である。
臨床的観点からの成果
患者臨床像、長期予後について以下が明らかとなった。①喉頭軟化,気管・気管支軟化,胸郭低形成,肺低形成のために出生後から必要とされる人工呼吸管理は、3日間から3年8ヶ月間と幅広い。離脱には、気管気管支軟化症、胸郭の成長が極めて重要な因子であった。②約1/3の症例が気管切開を必要とした。③発達障害(DQは32から48)を認めた。④長期呼吸管理にも関わらず、生存3例はいずれも4歳までに独歩達成を得ている。⑤慢性便秘の症例を認める。⑥2例において肝芽腫を認める。
ガイドライン等の開発
診断基準、治療指針の私案を作成した。来年度に完成予定である。
その他行政的観点からの成果
全国において約30症例の本疾患患者の報告を認めたことにより、発症頻度の推定が可能となった。非常にまれな疾患ではあるが、年間5例程度の発症があることになる。
その他のインパクト
本疾患についてのホームページを作成した(http://www.nch.go.jp/endocrinology/upd14/)。学会などとリンクすることにより、疾患概念の周知をすすめていく。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
4件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
4件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
ホームページの作成(http://www.nch.go.jp/endocrinology/upd14/)

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kagami M et al.
The IG-DMR and the MEG3-DMR at Human Chromosome 14q32.2: Hierarchical Interaction and Distinct Functional Properties as Imprinting Control Centers.
PLoS genetics  (2010)

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
2016-06-20