文献情報
文献番号
200936192A
報告書区分
総括
研究課題名
牟婁病の実態の把握と治療指針作成
研究課題名(英字)
-
課題番号
H21-難治・一般-137
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
小久保 康昌(三重大学大学院医学系研究科 神経病態内科学講座)
研究分担者(所属機関)
- 辻 省次(東京大学大学院医学系研究科 神経内科学講座)
- 紀平 為子(関西医療大学 保健医療学部 )
- 長谷川 成人(東京都精神医学総合研究所 分子神経生物学研究チーム )
- 広川 佳史(三重大学大学院医学系研究科 腫瘍病態解明学講座 )
- 岡本 和士(愛知県立大学 看護学部 )
- 富山 弘幸(順天堂大学医学部 脳神経内科)
- 高島 明彦(理化学研究所 脳科学研究センター アルツハイマー病研究チーム )
- 村山 繁雄(東京都健康長寿医療センター 高齢者ブレインバンク)
- 冨本 秀和(三重大学大学院医学系研究科 神経病態内科学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
牟婁病 (紀伊半島の筋萎縮性側索硬化症/パーキンソン認知症複合:紀伊ALS/PDC) について、これまでの臨床神経学、神経放射線学、神経病理学的所見を総括し、今年度の新たな研究成果についてまとめた。
研究方法
1)環境要因研究:多発地区の水質調査と食餌アンケート調査を行った。2)発症遺伝子解析:大家系の多数例から得たDNA資料を用いた連鎖解析を施行中である。3)関連遺伝子解析:候補遺伝子解析をおこない、新たな治験を得た。4) 異常凝集蛋白質解析:タウ、α-synuclein 、TDP-43について、ウエスタンブロットを用いた解析を行った。5) 神経病理学的研究:多数例について、TDP-43の分布を検討した。6) 診断基準の作成:前回作成した診断基準を改訂した。7) 治療指針の作成と今後の治療に向けての展望:現時点での治療指針を策定した。
結果と考察
1)これまでの研究の経緯についてまとめを行った。 2)生活習慣と環境要因に関する実態調査:生活習慣では、食餌調査の結果から多発地区では、糖質摂取割合が高く、脂質及びタンパク質摂取割合、抗酸化に関連するミネラル(亜鉛、マンガンなど)やビタミン諸量の摂取量は少ないことが明らかになった。水質調査では、飲用水中のCa含量は1960年代と同様に低値を示し、住民の血中Ca値も対照に比し低値を示した。3)原因遺伝子解析:計20を超える候補遺伝子解析を行ったが、病的変異は認めなかった。塩基配列解析、二点連鎖解析を行った結果、牟婁病においてはグアム島のALS/PDCで報告されたTRPM7遺伝子は関与していないことがわかった。4)神経病理学的検索:牟婁病では、免疫組織化学的に、TDP43神経細胞内沈着を、側頭葉、海馬、脳幹、脊髄に認めた。5)異常凝集蛋白質解析:形態的にも生化学的にもグアムALS/PDC症例とよく似たTDP-43の病変が観察され、生化学的にはFTLDとALSの中間的な特徴を示した。6)治療指針の作成と今後の治療方針:2010年版の診断基準を作成した。
結論
2010年版の牟婁病診断基準を策定した。今後、さらに環境因子、遺伝素因を含めた病態解明を推進し、病因と治療法の確立を目指す。
公開日・更新日
公開日
2010-05-20
更新日
-