乳幼児の発育・発達、栄養状態の簡易な評価手法の検討に関する研究

文献情報

文献番号
202327027A
報告書区分
総括
研究課題名
乳幼児の発育・発達、栄養状態の簡易な評価手法の検討に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
21DA2001
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
横山 徹爾(国立保健医療科学院 生涯健康研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 佐々木 渓円(実践女子大学 生活科学部)
  • 多田 由紀(東京農業大学応用生物科学部栄養科学科)
  • 小林 知未(武庫川女子大学 食物栄養科学部)
  • 盛一 享徳(国立成育医療研究センター  研究所 小児慢性特定疾病情報室)
  • 森崎 菜穂(国立研究開発法人国立成育医療研究センター 社会医学研究部)
  • 和田 安代(国立保健医療科学院 生涯健康研究部)
  • 磯島 豪(国家公務員共済組合連合会 虎の門病院 小児科)
  • 杉浦 至郎(あいち小児保健医療総合センター 保健センター保健室)
研究区分
こども家庭科学研究費補助金 分野なし 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
10,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
乳幼児の身体発育の客観的な評価は、わが国ではほぼ10年ごとに実施されている乳幼児身体発育調査による発育値を基準値として比較することにより行われる。令和2年に予定されていた最新の同調査は、COVID-19感染拡大の影響で令和5年9月まで順延されることとなり、感染拡大の影響を鑑みて自治体と病院の負担軽減を考慮し、かつ十分な精度で実現可能な調査となるように調査設計を工夫する必要がある。一方、身体発育に大きな影響を与える栄養状態の評価も重要であり、早い年齢で確立される食習慣等についても、懸念がある場合は早期に介入する必要があるため、乳幼児健診時だけでなく、家庭や保育所等でも養育者やその支援者が、児の栄養状態・食習慣等を評価できることが望まれる。そこで本研究では2つのテーマを設定し、テーマ1では乳幼児の栄養状態の簡易な評価手法の開発、テーマ2では乳幼児身体発育調査に関する検討を目的とする。
研究方法
[テーマ1]乳幼児の栄養状態の簡易な評価手法の開発
NutriSTEPを参考として、令和3〜4年度に行った文献的研究、既存データの分析結果、市区町村調査結果を踏まえて、評価ツール(案)原案を作成した。対象年齢は、1歳6か月以上3歳未満と3歳以上6歳未満の2区分とした。専門家による妥当性検討を行い、改訂版を作成した。さらに、実務者および保護者によるフォーカス・グループ・インタビューで有用性などを検討して再改訂版を作成した。再改訂版を用いて、保護者パネルを用いた妥当性の検証を行った。また、保護者による幼児の体格に関する誤認識や低身長に対する対応についてパネル調査を行い、栄養状態や体格に関する情報源等について検討した。
[テーマ2]乳幼児身体発育調査に関する検討
①十分な精度で乳幼児身体発育調査を実施するための方法を検討・提案する、②乳幼児の発育・発達の長期的推移を示す、③今後の調査手法の基礎的検討を行うことの3つの観点から研究を進めた。
結果と考察
[テーマ1]食品群別の摂取頻度7項目(3歳以上は8項目)、望ましくない食品の摂取頻度3項目、食生活8項目(3歳以上は6項目)、食生活以外の生活習慣1項目(3歳以上は2項目)、保護者による体重の認識1項目、保護者の育児状況1項目、経済状況1項目の質問項目による22項目の評価ツール(案)を作成した。専門家による妥当性検討、実務者等による有用性の検討によって改訂した評価ツール(案)は、保護者パネル調査で既存のヘルスリテラシー指標との関連性、Cronbach のα係数で妥当性、再調査法で再現性を確認した。児の体格を誤認識している保護者には、適切な情報源を用いていない者が認められた。一方で、実際に評価ツール(案)を利用する方法や評価方法、フィードバック方法について、実務者や保護者から改善点が挙げられた。
[テーマ2]①推計精度と自治体と病院の負担軽減を考慮したうえで、調査項目と標本抽出方法、地区数・人数、病院数、調査時の留意点、計測時の着衣の扱い等に関する見直しを検討・提案し、また計測の標準化を図るため、調査員の研修に活用できる身体計測方法の動画を作成・提供した。これらを踏まえて令和5年9月にこども家庭庁が同調査を実施した。②令和5年調査データがまだ利用できないため、2000年と2010年の同調査データを用いて栄養法の違いを比較し、愛知県内市町村乳幼児健診データを用いて身体計測結果の11年間の変化を示した。③今後の調査時期の参考とするため、4か月児健康診査の身体測定値に測定月が与える影響を分析した。身長平均値は8月に最大、3月に最小であった。
結論
[テーマ1]2つの年齢層に応じた評価ツール(案)を作成した。妥当性や有用性は確認できたが、その利用方法について実証研究が必要である。[テーマ2]令和5年乳幼児身体発育調査の標本抽出や調査時の留意点等について検討・提案し、それを踏まえて9月にこども家庭疔が調査を実施した。今後の調査のあり方を検討するための基礎資料も得られた。

公開日・更新日

公開日
2024-08-19
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2024-08-19
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202327027B
報告書区分
総合
研究課題名
乳幼児の発育・発達、栄養状態の簡易な評価手法の検討に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
21DA2001
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
横山 徹爾(国立保健医療科学院 生涯健康研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 佐々木 渓円(実践女子大学 生活科学部)
  • 多田 由紀(東京農業大学応用生物科学部栄養科学科)
  • 小林 知未(武庫川女子大学 食物栄養科学部)
  • 盛一 享徳(国立成育医療研究センター  研究所 小児慢性特定疾病情報室)
  • 森崎 菜穂(国立研究開発法人国立成育医療研究センター 社会医学研究部)
  • 和田 安代(国立保健医療科学院 生涯健康研究部)
  • 磯島 豪(国家公務員共済組合連合会 虎の門病院 小児科)
  • 杉浦 至郎(あいち小児保健医療総合センター 保健センター保健室)
研究区分
こども家庭科学研究費補助金 分野なし 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では2つのテーマを設定する。[テーマ1]幼児の体格と食生活等との関連性の分析等に基づき評価ツール(案)を作成し、その妥当性の評価を行うこと、[テーマ2]①十分な精度で乳幼児身体発育調査を実施するための方法を検討・提案する、②乳幼児の発育・発達の長期的推移を示す、③今後の調査手法の基礎的検討を行うことを目的とする。
研究方法
[テーマ1]NutriSTEPのPreschooler版とToddler版を参考として、評価ツール(案)の対象年齢は、1歳6か月以上3歳未満と3歳以上6歳未満の2区分とした。文献的研究、既存データの分析結果、市区町村調査結果を行い、得られた結果をもとに評価ツール(案)原案を作成した。専門家による妥当性検討、実務者および保護者によるフォーカス・グループ・インタビューによる有用性検討により修正を行った。さらに、保護者パネルを用いた妥当性の検証を行った。また、保護者による幼児の体格に関する誤認識や低身長に対する対応についてパネル調査を行い、栄養状態や体格に関する情報源等について検討した。[テーマ2]上記の3つの観点から研究を進めた。
結果と考察
[テーマ1]食品群別の摂取頻度7項目(3歳以上は8項目)、望ましくない食品の摂取頻度3項目、食生活8項目(3歳以上は6項目)、食生活以外の生活習慣1項目(3歳以上は2項目)、保護者による体重の認識1項目、保護者の育児状況1項目、経済状況1項目の質問項目による22項目の評価ツール(案)を作成した。専門家による妥当性検討、実務者等による有用性の検討によって改訂した評価ツール(案)は、保護者パネル調査で既存のヘルスリテラシー指標との関連性、Cronbach のα係数で妥当性、再調査法で再現性を確認した。児の体格を誤認識している保護者には、適切な情報源を用いていない者が認められた。一方で、実際に評価ツール(案)を利用する方法や評価方法、フィードバック方法について、実務者や保護者から改善点が挙げられた。[テーマ2]①COVID-19感染拡大により、最新の同調査が令和5年まで順延されたため、乳幼児身体発育曲線の作成に関する当初計画は変更となった。感染拡大の影響を鑑みて自治体と病院の負担軽減を考慮し、十分な精度で実現可能な調査となるように、調査項目と標本抽出方法、地区数・人数、病院数、調査時の留意点、計測時の着衣の扱い等に関する見直しを検討・提案し、また計測の標準化を図るため、調査員の研修に活用できる身体計測方法の動画を作成・提供した。これらを踏まえて令和5年9月にこども家庭庁が同調査を実施した。
また、こども家庭庁で見直しを行った集計事項一覧に応じた集計表(案)の様式を精査し、いくつかの修正点を提案した。過去の調査データを用いてGAMLSS on Rによって発育曲線作成を試行し、想定サンプルサイズで平滑化が困難になることはなく、より強い平滑化を行うための方法も確認した。②長期的推移の分析は、令和5年調査データがまだ利用できないため、1980~ 2010年の同調査データを用い、小児の発育・発達の長期的推移と寄与要因を分析し論文発表した。また、2000年と2010年の同調査データを用いて栄養法の違いを比較し、愛知県内市町村乳幼児健診データを用いて身体計測結果の11年間の変化も示した。③今後の調査手法の検討は、各国の状況について文献調査し、既存情報を活用した身体発育曲線作成について米仏国の関係者から情報収集した。また、わが国で乳幼児健診等のデータを利用して身体発育曲線を作成する場合の課題検討のため、協力自治体の乳幼児健診データを用いて季節変動を確認し、シミュレーションにより年月齢別の誤差率を推定した。
結論
[テーマ1]2つの年齢層に応じた評価ツール(案)を作成した。妥当性や有用性は確認できたが、その利用方法について実証研究が必要である。[テーマ2]令和5年乳幼児身体発育調査の標本抽出や調査時の留意点等について検討・提案し、それを踏まえて9月にこども家庭疔が調査を実施した。調査結果の集計表様式(案)を精査し、いくつかの修正点を提案した。小児の発育・発達の長期的推移と寄与要因を示した。今後の調査のあり方を検討するための基礎資料も得られた。

公開日・更新日

公開日
2024-08-19
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2024-08-19
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202327027C

成果

専門的・学術的観点からの成果
特になし
臨床的観点からの成果
特になし
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
令和5年乳幼児身体発育調査の標本抽出や調査時の留意点等について検討・提案し、それを踏まえて9月にこども家庭疔が調査を実施した。
その他のインパクト
今後、母子健康手帳に掲載される身体発育曲線等は、広く国民の間で活用される。

発表件数

原著論文(和文)
4件
原著論文(英文等)
4件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
11件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
乳児の身体測定を安全かつ正確に実施するための基本的手技の動画。 https://www.ncchd.go.jp/recruitment/douga/shintai_keisoku.html
その他成果(普及・啓発活動)
1件
乳児の身体測定を安全かつ正確に実施するための基本的手技の動画。 https://www.ncchd.go.jp/recruitment/douga/shintai_keisoku.html

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kato N, Sauvaget C, Yokoyama T, et al
Factors associated with birthweight decline in Japan (1980-2004).
BMC Pregnancy Childbirth , 21 (1) , 337-337  (2021)
原著論文2
Yoshida H, Kato N, Yokoyama T
Early full-term birth is an important factor for the increase in the proportion of low-birth-weight infants between 1980 and 2015 in Japan
Journal of the National Institute of Public Health , 71 (1) , 77-86  (2022)
原著論文3
Morisaki N, Yoshii K, Yamaguchi TO, et al.
Preschool-children’s height, trend, and causes: Japanese national surveys 1990–2010
Clinical Pediatric Endocrinology , 31 (1) , 10-17  (2022)
原著論文4
Yoshii K, Michihata N, Hirasawa K, et al
Secular trends in early motor development between 1980 and 2010 in Japan
Archives in Diseases in Childhood , 107 (5) , 468-473  (2022)

公開日・更新日

公開日
2024-06-11
更新日
-

収支報告書

文献番号
202327027Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
10,500,000円
(2)補助金確定額
9,928,000円
差引額 [(1)-(2)]
572,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,559,422円
人件費・謝金 2,187,873円
旅費 438,542円
その他 4,743,087円
間接経費 0円
合計 9,928,924円

備考

備考
○旅費の減額
情報収集のために必要であった出張をオンライン会議で行った、また、情報収集のために予定していた学会を現地ではなくオンライン参加に変更したため旅費がかからなかった。必要な情報収集は収集できたため当初の研究計画及び研究目的達成に支障はなかった。

公開日・更新日

公開日
2024-09-30
更新日
-