文献情報
文献番号
200936177A
報告書区分
総括
研究課題名
進行性心臓伝導障害の病態診断と遺伝子基盤に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H21-難治・一般-122
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
鎌倉 史郎(国立循環器病センター 心臓血管内科)
研究分担者(所属機関)
- 堀江 稔(滋賀医科大学 呼吸循環器内科)
- 蒔田 直昌(長崎大学 循環生理学)
- 清水 渉(国立循環器病センター 心臓血管内科)
- 西井 明子(関 明子)(東京女子医科大学 循環器内科)
- 牧山 武(京都大学 循環器内科)
- 渡部 裕(新潟大学 第1内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
進行性心臓伝導障害(CCD)は、進行性の房室ブロック・脚ブロックという心電図所見を特徴とし、心臓刺激伝導系の線維変性によって突然死をきたす稀な致死性不整脈である。本研究の目的は、CCDの臨床病態を把握し、適切な診断指針を確立し、さらにその分子病態を解明することによって、心臓突然死の克服を目指すことである。
研究方法
1. 心臓伝導障害の発症頻度の疫学調査
新潟県成人病予防協会の基本健診データを基にして、心臓伝導障害の発症率の疫学調査を行った。
2.遺伝子解析
高度房室ブロック症例のうち、QT延長またはtorsades de pointes(TdP)を認めた14例、国際共同研究で集積したCCD発端者139例、家族性徐脈性不整脈患者38例で、末梢血ゲノムDNAを抽出し、遺伝子解析を行った。
3.機能解析
Naチャネル遺伝子変異はtsA201細胞を用いた全細胞パッチクランプ法、Cx40遺伝子変異はN2A細胞を用いたダブル全細胞パッチクランプ法および単一チャネル記録で電気生理学的な解析を行った。また共焦点顕微鏡を用いて変異タンパクの細胞内発現パターンを解析した。
新潟県成人病予防協会の基本健診データを基にして、心臓伝導障害の発症率の疫学調査を行った。
2.遺伝子解析
高度房室ブロック症例のうち、QT延長またはtorsades de pointes(TdP)を認めた14例、国際共同研究で集積したCCD発端者139例、家族性徐脈性不整脈患者38例で、末梢血ゲノムDNAを抽出し、遺伝子解析を行った。
3.機能解析
Naチャネル遺伝子変異はtsA201細胞を用いた全細胞パッチクランプ法、Cx40遺伝子変異はN2A細胞を用いたダブル全細胞パッチクランプ法および単一チャネル記録で電気生理学的な解析を行った。また共焦点顕微鏡を用いて変異タンパクの細胞内発現パターンを解析した。
結果と考察
1.CCDの診断基準を策定した。
2.心臓伝導障害の発症頻度の疫学調査
132,111人の住民を平均10.45±2.8年の経過観察したところ、2,611人(2.0%)がPQ延長、8517人(6.5%)が右脚ブロック、850人(0.6%)が左脚ブロック、88人(0.07%)が完全房室ブロックを発症していた。
3.CCD及び関連疾患の遺伝子解析
高度房室ブロック14例中、4例(29%)に心筋Kチャネル遺伝子のミスセンス異常を認め、その電気生理学的検討では優位抑制型の電流低下を示した。139症例のCCD発端者の遺伝子解析では、心筋Naチャネル遺伝子(SCN5A)の変異を12症例に、コネキシン40遺伝子(GJA5)変異を1症例に、ラミンA/Cの遺伝子変異を2例に同定した。家族性徐脈性不整脈38例中10例(26%)にSCN5A変異を、11例(29%)にlamin A/C変異を同定した。SCN5Aキャリア10例中、6例は他の心臓Naチャネル病を合併し、lamin A/C変異キャリア11例中5例が拡張型心筋症を合併していた。
2.心臓伝導障害の発症頻度の疫学調査
132,111人の住民を平均10.45±2.8年の経過観察したところ、2,611人(2.0%)がPQ延長、8517人(6.5%)が右脚ブロック、850人(0.6%)が左脚ブロック、88人(0.07%)が完全房室ブロックを発症していた。
3.CCD及び関連疾患の遺伝子解析
高度房室ブロック14例中、4例(29%)に心筋Kチャネル遺伝子のミスセンス異常を認め、その電気生理学的検討では優位抑制型の電流低下を示した。139症例のCCD発端者の遺伝子解析では、心筋Naチャネル遺伝子(SCN5A)の変異を12症例に、コネキシン40遺伝子(GJA5)変異を1症例に、ラミンA/Cの遺伝子変異を2例に同定した。家族性徐脈性不整脈38例中10例(26%)にSCN5A変異を、11例(29%)にlamin A/C変異を同定した。SCN5Aキャリア10例中、6例は他の心臓Naチャネル病を合併し、lamin A/C変異キャリア11例中5例が拡張型心筋症を合併していた。
結論
国内の多施設共同研究と海外研究協力者の研究共同体制によって、CCDに関する最初のステップの知見が得られた。初年度の知見をもとに、新たな手法を用いて分子病態の解明と適切な診断指針の確立をめざして研究を推進し、心臓突然死の克服を目指すことが望まれる。
公開日・更新日
公開日
2010-06-18
更新日
-