ドナーミルクを必要とする児に普及するために必要なエビデンスを構築するための研究

文献情報

文献番号
202327018A
報告書区分
総括
研究課題名
ドナーミルクを必要とする児に普及するために必要なエビデンスを構築するための研究
課題番号
23DA0901
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
水野 克己(学校法人昭和大学 医学部小児科学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 櫻井 基一郎(亀田総合病院 新生児科)
  • 和田 友香(佐野 友香)(国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター 新生児科)
  • 谷 有貴(辻本 有貴)(奈良県立医科大学 医学部)
  • 新藤 潤(東京都立小児総合医療センター 新生児科)
  • 西巻 滋(横浜市立大学附属病院 臨床研修センター)
  • 田 啓樹(昭和大学 医学部)
  • 宮田 昌史(藤田医科大学 医学部小児科学)
研究区分
こども家庭科学研究費補助金 分野なし 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
5,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
A)エビデンスの創設:ドナーミルク(DHM)を利用して経腸栄養を標準化することで、早産・極低出生体重児の予後にどのような効果があるのかを知ること。また、同じ年に出生した超低出生体重児を対象にDHM利用が予後に与える影響についても調査した。本研究班DBとNRNデータを用いて分析し、極低出生体重児を対象としたDHM利用による経腸栄養の標準化についてエビデンスレベルを高める。DHMの適応についてもDBより検討した。
B)レシピエント家族の不安や要望に応えられる冊子をつくること。C)安全性について調査すること、ならびにバンクを利用していない施設に対して、その理由を明らかにすること。D)世界のバンク運用について調査することで運用方法の検討に資する情報を収集すること。
研究方法
A)エビデンスの創設:DHMを用いて経腸栄養を標準化した施設を対象に、標準化前後におけるヒストリカル研究を行った。また、5年に1度行われる日本小児科学会ハイリスク新生児調査を利用して、2022年出生の超低出生体重児を対象に、これまでの調査内容に栄養管理に関する項目を加えることで、栄養と合併症の関連を明らかにする。極低出生体重児を対象としたバンクDBとNRNDBによるエビデンス創設はこれからも継続する。B)レシピエント家族には各施設から対象家族にオンラインによるアンケートについて参加をお願いしてもらった。C)安全性調査ならびにバンク未利用施設に対する調査はオンライン回答とした。D)世界のバンク運用状況についてもオンラインにて回答をもとめるとともに、シンガポールとスペインのバンクを見学した。
結果と考察
A)多施設でのヒストリカル研究より、DHMを利用することで在宅酸素や治療を要する未熟児網膜症が減少したことを示した。同じ年に出生した超低出生体重児を対象とした小児科学会調査はデータ集計中である。DHMの適応については、出生体重が1500g以上の児も約1割程度DHMを利用していた。この使用理由には外科治療を要する心疾患や消化器疾患が散見された。B)レシピエント家族への調査も現在進行しており、2024年夏には結果が出る予定である。C)安全性についてはCMV感染が3例あった。今回、CMV感染あり、疑いと回答した施設に問い合わせたところ、児の母親の検査は行っておらず、児の母親の母乳からの感染も疑われる。家族からの不安に対応することも本研究班の課題であると認識し、最終年度にレシピエント家族向けの冊子も作成する。D)海外ではDHMを食品または未分類にて扱っていることがおおかった。病院にバンクを併設していることがおおく、運用費も病院が支払っている国が多く見られた。我が国では独立したバンクであり、DHMの分類ならびにバンクの安定運用のための資金確保をどうするかについてさらなる検討が必要と考えた。
結論
今回、複数施設でのヒストリカル研究でも、在宅酸素症例・治療を要するROPともに減少することが示された。以前より静脈栄養期間が短縮するという報告もあり、早産・極低出生体重児に広くDHMを使ってもらいたい。CMV感染症やDHMに対するレシピエント家族の不安もあり、本研究班からご家族用にわかりやすくバンクとDHMに関する冊子を作ることが求められる。DHM未利用施設の中には、DHMを必要とする症例が少ないため、利用していない施設が多かったが、その一方で超低出生体重児を年間20人以上診療する大規模NICUも含まれており、壊死性腸炎の罹患率が比較的高い施設も散見された。我が国において超低出生体重児を一定数診療する施設に対しては、DHM利用のエビデンスに加えて、安全性ならびに母乳育児の利点を伝えられる冊子を作成し、配布することが必要と考えた。最終的に、超早産児に対して、生後早期からの母乳を用いた経腸栄養を行うことが標準医療となることが求めら、DHMに伴うエビデンスが得られた段階で新生児栄養に関するガイドライン作成を検討したい。
日本においてバンクを制度化して運用するための具体的な方策は定まっていないが、DHMは人体由来物質であるとするフランスやオーストラリアのガイドラインを参考として、バンク運用基準を見直すとともにバンク規模に応じて一定額の支援が得られるようになることが求められる。また、WHOから2024年にバンクのglobal guidanceが発行される予定であり、最終的にこの内容も参考にしたうえで、運用方法の検討及び運用基準の改訂を行うことのが適切と考える。最終的にはエビデンス創出・安全性と懸念事項に対する説明をわかりやすく社会に行うことで、さらにバンクが早産・極低出生体重児に役立つようになるものと考える。

公開日・更新日

公開日
2024-07-22
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2024-07-22
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202327018Z