父親の子育て支援推進のためのプログラムの確立に向けた研究

文献情報

文献番号
202327016A
報告書区分
総括
研究課題名
父親の子育て支援推進のためのプログラムの確立に向けた研究
課題番号
23DA0701
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
竹原 健二(国立研究開発法人国立成育医療研究センター研究所 政策科学研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 加藤 承彦(国立成育医療研究センター 社会医学研究部)
  • 小崎 恭弘(大阪教育大学 健康安全教育系教育学部教員養成課程家政教育部門)
  • 髙木 悦子(帝京科学大学 医療科学部看護学科)
研究区分
こども家庭科学研究費補助金 分野なし 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
7,650,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
成育基本法の基本方針において、わが国における今後の課題の一つとして「父親の孤立」が 挙げられた。その課題解決とわが国の父親支援事業の推進を目指して、令和5年度は、①父親の健康や生活実態、育児参加に関するエビデンスの創出【課題1】、②基礎自治体における父親への育児支援の実施状況の把握【課題2】、③父親の育児支援マニュアル作成とのそのための情報収集【課題3-1】、④ポピュレーションアプローチの視点からの父親支援推進に向けた研修とその資材開発【課題3-2】、を目的とする4つの研究をおこなった。
研究方法
【課題1】父親の健康や生活実態、育児参加に関する研究では、厚生労働省が実施している国民生活基礎調査の健康票および世帯票、総務省が実施している社会生活基本調査の調査票A、インターネットコホート(JACSIS研究)の横断データ(パートナー票)を用いて、二次データ解析をおこなった。
【課題2】基礎自治体における父親への育児支援の実施状況に関する研究では、全国の1,741の自治体における母子保健担当部署の課長クラスの職員を対象に、郵送留め置き法による自記式アンケート調査を実施し、2022年度の父親支援事業の実施状況の把握と過去に実施した2019年度時点の状況との比較をおこなった。
【課題3-1】父親の育児支援マニュアルに関する研究では、父親の育児支援マニュアルの作成に向けて、カナダ・アメリカの北米の文献・公的機関やNPO等父親支援関係団体の活動を対象に、父親支援プログラム・マニュアルの収集をおこなった。それらの内容や項目、章立てを参考にしながら、わが国における父親支援マニュアルの試案の作成に取り組んだ。
【課題3-2】ポピュレーションアプローチの視点からの父親支援推進に向けた研修とその資材開発に関する研究では、現状の母子保健事業を、ポピュレーションアプローチの視点から父親を含めた家族全体に働きかける仕組みへと見直すことを促進するためのポイントについて検討をおこない、研修の手引き案(研修資材)の開発をおこなった。
結果と考察
【課題1】父親の生活の実態や健康状態に関する二次データ解析と科学的根拠の創出に取り組み、令和5年度には3本の英文論文が受理、1つの学会発表をおこなった。父親の生活時間の分析では、2016年と2021年を比較したところ、仕事関連時間(仕事と通勤)が12時間を越える父親の割合が減少し、睡眠時間や家事・育児関連時間が増加していた。多胎児を育てる父親は単胎児を育てる父親に比べて、睡眠時間が短いことや、悩みやストレスを抱えやすいことが示唆された。父親が産前・産後にIPV(Intimate Partner Violence)の被害を受けている割合は13.6%であることを示した。
【課題2】2019年度の実態把握と同様の方法で、全国1,741の自治体を対象に質問票調査をおこない、613の自治体から回答を得た(回収率35.2%)。主な対象を母親ではなく父親とする育児支援事業の実施は、前回調査の2019年時点の6.5%から2022年時点で10.3%に上昇し、父親支援事業を実施していない自治体のうち、「父親支援事業は実施する必要がある」と回答している自治体も前回の70.0%から、今回の75.3%と増加しており、父親支援への認識・実施ともに広まっていることが示唆された。また、父親支援事業の実施に至っていない原因については、前回調査から大きな変化は確認されず、「父親の支援ニーズが分からない」などがあげられた。
【課題3-1】北米の19の既存の父親支援・父親の育児支援マニュアル、プログラムについて内容の精査をおこなった。単なる問題解決型の取り組みだけでなく、父親自身のWellbeingや家族全体の幸福や福祉的な視点など包括的な視点を踏まえた取り組みが行われていることがうかがわれた。また、父親の育児支援マニュアルの章立てや記載すべき事項の整理をおこない、研究班メンバーで分担して執筆に着手した。
【課題3-2】これまでの取り組みから、一部の父親のみを対象にするのではなく、ポピュレーションアプローチの視点からの父親支援のあり方の検討と推進を目指して、自治体職員や父親支援を実施する専門家を対象とした研修資材の開発を進めた。実際に研修で活用するためのワークシートなどを開発し、学会のワークショップなどで試行した。
結論
当初令和5年度は、当初の計画通りに研究を進めることができた。また今年度の研究班内での議論を通じて、新たに「ポピュレーションアプローチの視点からの父親支援」の重要性について議論を深めることができ、具体的にその推進に向けた取り組みをおこなうことができた。

公開日・更新日

公開日
2024-08-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-08-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202327016Z