難治性慢性痒疹・皮膚そう痒症の病態解析及び診断基準・治療指針の確立

文献情報

文献番号
200936169A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性慢性痒疹・皮膚そう痒症の病態解析及び診断基準・治療指針の確立
課題番号
H21-難治・一般-114
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
横関 博雄(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科皮膚科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 佐藤貴浩(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科皮膚科学分野)
  • 片山一朗(大阪大学 皮膚科)
  • 戸倉新樹(産業医科大学 皮膚科)
  • 烏山一(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科免疫アレルギー分野 )
  • 河原和夫(東京医科歯科大学 政策科学)
  • 安東嗣修(富山大学大学院応用薬理学)
  • 椛島健治(京都大学皮膚科)
  • 室田浩之(大阪大学 皮膚科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では本邦における痒疹・皮膚そう痒症の診断基準、重症度基準を作成して全国的な疫学調査を施行し発症頻度を明らかにする。また、診療ガイドラインを作成して重症度にあった適切な標準的治療法の確立を目指す。さらに、痒疹・皮膚そう痒症の病態解析する。
研究方法
(1)全国の大学医学部皮膚科にアンケート用紙を送り発症頻度の解析。痒みに関しては全国アンケート調査を施行。
(2)皮膚科専門医を主体として診療ガイドライン作成委員会を発足させ慢性痒疹診療ガイドラインを作成。特に治療指針はEBMを参考にしてアルゴリズムを作成。
(3)Work Productivity and Activity Impairment questionnaire- Allergy Specific (WPAI-AS)を用い、痒みを主訴に皮膚科外来を受診した患者における労働障害率、勉学障害率、日常生活障害率を検証。
(4)慢性痒疹患者の末梢血好塩基球表面における活性化抗原(CD203c)の発現をフローサイトメトリーにて解析。その他、IgE依存性慢性アレルギー性皮膚炎症でのマウスの発症機序の解析。
結果と考察
アンケート調査による重症慢性痒疹は0.015%(1.5万人)、重症皮膚そう痒症は0.455 %(39万人)と希少性疾患であることも明らかになった。また、診療ガイドラインは作成中である。さらに、痒疹の労働障害率は36.0%、労働時間損失率は12.2%、全般労働障害率は42.9%、日常生活障害率が46.3%と著しく労働生産性、日常生活が障害されていることが明らかになった。一方、皮膚そう痒症では労働障害率が20.0%、全般労働障害率が20.0%、日常生活障害率が37.9%と、むしろ日常生活に多大な影響が及んでいることが判明した。痒疹および皮膚そう痒症の根本的な治療法を開発し改善することにより日本社会における労働生産性を向上することにより著明な経済効果(112億円・月)が期待できる。痒疹の発症機序に関する研究では好塩基球が重要な役割を果たすことが明らかになった。
結論
本研究により著明な痒みで精神的に苦しんでいる多くの患者(日本人2%が常時痒みで耐えがたい苦痛がある)が精神的苦痛から解放され勤勉、勤労意欲を高めことが可能であり社会における労働生産性の向上に役立つ。

公開日・更新日

公開日
2010-05-19
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200936169C

成果

専門的・学術的観点からの成果
痒疹の病態の解析のため免疫組織学的に17疾患129症例について、好塩基球を特異的に認識する抗Basogranulin抗体を用いて病変部での好塩基球の分布状態を観察した。痒疹では好塩基球浸潤が顕著(17/23例73%)であった。さらに基礎研究ではマウス好塩基球に特異的な抗mMCP-8抗体TUG8の樹立に成功できた。この結果は皮膚組織における好塩基球の同定が容易かつ確実に行えるようになり、慢性痒疹のモデルマウスにおける好塩基球の解析が進むものと期待される。
臨床的観点からの成果
今回、本研究により慢性痒疹、皮膚そう痒症の発症頻度が明らかにされさらに発症病態も解明されることにより難治性疾患として認識されることにより著明な痒みで精神的に苦しんでいる多くの患者(日本人2%が常時痒みで耐えがたい苦痛がある)が精神的苦痛から解放される。また、発症頻度、治療ガイドラインが作成されることにより難治性慢性痒疹、皮膚そう痒症に対する標準的な治療法が施行され高額医療費を伴う過剰医療を抑制して重症度に応じた治療指針により医療費削減も期待できる。
ガイドライン等の開発
慢性痒疹・皮膚そう痒症の治療に精通した皮膚科専門医を主体として診療ガイドライン作成委員会を発足させ慢性痒疹診療ガイドラインを作成。特に治療指針はEBMを参考にしてアルゴリズムを作成している(現在ガイドライン委員会を4回開催)。すでに疾患概念、診断基準は策定した。
その他行政的観点からの成果
慢性痒疹・皮膚そう痒症を伴う中高年齢層の著明な痒みによる精神的な不安定な状態を改善し適切に治療することにより、今後活躍が期待できる中高年齢層の勤勉、勤労意欲を高めことが可能であり社会における労働生産性の向上に役立つ。痒疹および皮膚そう痒症は痒みを伴う皮膚アレルギー疾患の2.4%を占めることが明らかにされたため、毎月112億円の損失が痒疹および皮膚そう痒症で発生することになる。
その他のインパクト
なし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
24件
その他論文(和文)
27件
その他論文(英文等)
2件
学会発表(国内学会)
18件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計2件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
2016-06-20