子どもの死を検証し予防に活かす包括的制度を確立するための研究

文献情報

文献番号
202327007A
報告書区分
総括
研究課題名
子どもの死を検証し予防に活かす包括的制度を確立するための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22DA1002
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
沼口 敦(国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学 医学部 附属病院 救急・内科系集中治療部)
研究分担者(所属機関)
  • 竹原 健二(国立研究開発法人国立成育医療研究センター研究所 政策科学研究部)
  • 清水 直樹(聖マリアンナ医科大学 医学部)
  • 植松 悟子(研究開発法人 国立成育医療研究センター 総合診療部救急診療科)
  • 木下 あゆみ(独立行政法人国立病院機構四国こどもとおとなの医療センター 統括診療部)
  • 川口 敦(聖マリアンナ医科大学 小児科)
  • 井濱 容子(横浜市立大学 医学部)
  • 松永 綾子(藤浪 綾子)(千葉県こども病院 代謝科)
  • 山本 琢磨(長崎大学医学部)
  • 小谷 泰一(三重大学 医学系研究科法医法科学分野)
  • 山中 龍宏(緑園こどもクリニック)
  • 小保内 俊雅(東京都保健医療公社 多摩北部医療センター)
  • 仙田 昌義(総合病院国保旭中央病院 小児科)
  • 溝口 史剛(前橋赤十字病院 小児科部)
  • 宮原 弘明(愛知医科大学 加齢医科学研究所)
  • 河村 有教(長崎大学 大学院多文化社会学研究科・多文化社会学部)
  • 松原 英世(甲南大学 法学部)
研究区分
こども家庭科学研究費補助金 分野なし 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
13,850,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 子どもの死亡の原因に関する情報の収集・管理等に関する体制の整備を実現するため,チャイルド・デス・レビュー(CDR,予防のためのこどもの死亡検証)が探索されるが,子どもの死の予防にどう寄与し,安全・安心な社会の実現にどう役割を果たすか,十分に明らかではない。この探索の経過で明らかになった子どもの死亡をめぐる諸課題に対処するため,CDRを主軸とした多機関で継続的に整理し解決する包括的な制度を提案することを目的とする。併せて,実務者および国民への普及啓発戦略と遺族支援(グリーフケア)の提案も目指す。第二年度には,第一年度から開始した探索の継続を通して,子どもの死にかかる課題を取り扱う仕組みを各地域および中央の両面から模索し,最終年度の具体的な制度提案につなげることを目的とした。
研究方法
 CDRの各段階(準備−調査−検証−提言)にかかる幅広い課題を解決するため,予期せぬ傷害と乳幼児突然死を主要な対象として取り上げながら,5つの主要課題を設定して探索を行なった。
(課題1)子どもの死亡に対応する包括的な仕組みの基盤策定:CDRモデル事業の実務支援と実地調査を行い,この知見を基に同事業実施における制約,支援策,制度を探索した。
同事業を担う多職種会議体が子どもの死を包括的に扱う母体として機能するための課題解決を探索した。
(課題2)乳幼児突然死の死因究明と予防対応策の探索:乳幼児突然死の疫学にかかる研究を推進し,環境疫学的な検討を行うための基盤を模索した。均霑化された死因究明,グリーフケア等を含むSUIDセンターを探索し,バイオバンクの実現可能性の検討を開始した。
(課題3)子どもの傷害予防にかかる情報収集と予防策の探索:子どもの予期せぬ傷害,特に入院を要する重症度の高い小児外傷例について,多施設医療機関から情報を集約し,受傷原因、受傷時の状況を解析する準備を行った。また統計情報の解析により,死亡に至った傷害事例の疫学調査を行った。これまでの工学的検証について情報を集約した。
(課題4)子どもを亡くした遺族へのケアのあり方とそれを提供する仕組みの探索:子どもの死亡に際して遺族に提供されるケアの現状調査を継続した。医療機関外でのグリーフケアの実態調査,ニーズアセスメントを踏まえた具体的提案を行い,社会制度としての遺族ケア提供を探索した。
(課題5)子どもの死亡に関するデータベースの探索:CDRモデル事業の観測と支援で得られた知見から,実用的な死亡事例データベース策定を目指すCDRで収集する死亡関連情報の集積様式を探索した。また検証結果データベースの探索のため,検証結果の質的評価を試行した。
 これら5主要課題をとおして,CDRが安全で安心な社会を構築するための制度として国民に受け入れられ,子どもの死亡事象に真摯に対処する社会基盤として確立する方策を探索した。
結果と考察
(課題1)CDRモデル事業の支援を継続した。遺族同意を必須とする課題につき調査を行い,当該業務は臨床実務者の心理的負担が大きく,同意割合は小さいことが判明した。わが国でCDRが稼働するための法的基盤について検討を行なった。検証の有効性を担保するための実務者の要件を考察し,これを確保するための研修資材の改訂と実務者研修の構築を行なった。CDRモデル事業にかかる各方面への啓発事業について実践的に考察した。
(課題2)乳児の死因究明の現状と課題を調査探索し,SUIDセンターの構成を立案した。SIDS診断ガイドラインの改訂を見据えて,各学会と連携して診断基準の探索および疫学調査を開始した。
(課題3)入院を要した予期せぬ傷害症例を集積する多施設共同研究を構築し,研究実施のための倫理審査を開始した。個別の事象に対する工学的検証結果を蓄積するとともに,その社会還元のありかたの探索を開始した。
(課題4)複数の医療施設で個別的に提供されるグリーフケアの現状調査を継続した。遺族団体等とも連携して,遺族の求める情報,社会制度として期待される内容について探索を継続し,非医療機関におけるグリーフケアの提供ツールを開発した。
(課題5)子どもの死亡にかかる情報収集のありかたについて,収集して入力する情報,結果として出力する情報の2面から探索を継続した。前者について新規データベースの策定を試み,また後者について質的情報の解析のあり方の探索を開始した。
結論
 CDRは多機関多職種からなる協議体で運営される。当該協議体を形成し,その職務範囲を規定し,効果的に運営し,有用な結果を発出して国民にフィードバックするために,解決するべき課題が山積する。これらの探索を引きつづき継続し,子どもの死を検証して予防に活かすための包括的な制度を探索する必要がある。
 また,各地域においてこの制度を有効たらしめるための全国的な支援制度についても,引き続き探索が望まれる。

公開日・更新日

公開日
2025-07-22
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2025-07-18
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202327007Z