年齢依存性てんかん性脳症の分子疫学と臨床像の解明

文献情報

文献番号
200936166A
報告書区分
総括
研究課題名
年齢依存性てんかん性脳症の分子疫学と臨床像の解明
課題番号
H21-難治・一般-111
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
松本 直通(横浜市立大学 医学研究科 環境分子医科学教室)
研究分担者(所属機関)
  • 加藤 光広(山形大学 医学部 小児科学教室)
  • 小坂 仁(神奈川県立こども医療センター 神経内科)
  • 秦 健一郎(国立成育医療センター研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
年齢依存性てんかん性脳症における既知の責任遺伝子変異の寄与度とその責任遺伝子毎の臨床病型を確立すると共に、さらに新規の責任遺伝子単離を行うことを目的とする。
研究方法
I.症例集積:既にEIEE・West症候群およびその類縁のてんかん性脳症の症例が130例程度集積している。さらに研究期間を通じて計200例を目指す。
II.既知責任遺伝子の解析:年齢依存性てんかん性脳症の既知責任遺伝子ARX, CDKL5, SLC25A22, STXBP1の症例における変異解析を行う。
III.候補遺伝子アプローチ: STXBP1に機能的に関連する10種の責任候補遺伝子の変異解析を行う。
IV.アレーによる全ゲノム微細構造異常解析:高解像度オリゴDNAアレーを用いて、候補遺伝子群の異常のない症例群に対して全ゲノム微細構造異常解析を行う。
V.責任遺伝子毎の年齢依存性てんかん性脳症の臨床病型の確立:本研究で変異が明らかになった各責任遺伝子毎の臨床病型を確立する。
結果と考察
I.症例集積: 2010年1月現在で191例の年齢依存性てんかん性脳症の日本人症例が集積した。内訳はEIEE50例,West症候群141例である。
II.既知責任遺伝子の解析: これまでにEIEE4例、West症候群2例でARX遺伝子の変異を、EIEE 15例でSTXBP1変異を同定した。CDKL5とSLC25A22では変異を認めなかった。
III.候補遺伝子アプローチ:10種類の候補遺伝子のいくつかに興味深い塩基変化を同定した。
IV.アレーによる全ゲノム微細構造異常解析: 1例の微細欠失からWest症候群の新たな責任遺伝子EIEE2を同定した(投稿中)。
V.責任遺伝子毎の年齢依存性てんかん性脳症の臨床病型の確立:STXBP1変異を有する症例の詳細な臨床情報解析を行い、その臨床病型は脳奇形を伴わないEIEEであることが明らかになった。
結論
遺伝的異質性が高いと想定されていたEIEEのおよそ1/3をSTXBP1変異で説明できる。STXBP1変異の中核的臨床スペクトラムが脳奇形を認めないEIEEであることが明らかになった。アレー解析によって新たなEIEE2(仮称)変異を、West症候群の一型で同定した。

公開日・更新日

公開日
2010-05-17
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200936166C

成果

専門的・学術的観点からの成果
STXBP1変異で脳奇形を伴わないEIEEのおよそ1/3を説明できること、West症候群に変異を認めないことでSTXBP1変異の中核的な臨床スペクトラムは脳奇形のないEIEEであることは明白となった。また新たに発見したEIEE2変異で起こる病態は、髄鞘化遅延と脳幹・小脳低形成を伴うWest症候群であった。遺伝子異常から年齢依存性てんかん性脳症の臨床像が明らかに成りつつある。
臨床的観点からの成果
STXBP1遺伝子をEIEE44例で解析し、15例(34%)で変異を同定した。両親検体の得られた症例では変異は全て新生突然変異であった。STXBP1異常をWest症候群の初発例54例で解析したが、変異は無かった。さらにEIEE30例とWest症候群109例に対しARX変異解析を行い、EIEE4例,West症候群2例でARX遺伝子の変異を認めた。SLC25A22とCDKL5には変異を認めなかった。
ガイドライン等の開発
大田原症候群とWest症候群の診断基準案を策定した。
その他行政的観点からの成果
国外からすでに30例近い大田原症候群の遺伝子診断依頼があるなど、STXBP1の変異は世界的に認知された。発達期のてんかん関連疾患は依然原因不明なものも多く本研究のような分子以上を一つ一つ同定していく試みが極めて重要である。
その他のインパクト
アレー解析によって常染色体の微細欠失内に存在していたEIEE2(仮称)の変異を、髄鞘形成遅延を伴うWest症候群で世界に先駆けて同定した(論文投稿中)。本研究班員で、ARX、STXBP1、EIEE2という年齢依存性てんかん性脳症の3つの責任遺伝子を単離した実績は特筆すべきである。EIEE2を用いた診断法については特許出願を行った(特願2009-146055)。

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
11件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
6件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計1件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Goto A, Wang Y, Kabuta T, et al.
Proteomic and histochemical analysis of proteins involved in the dying-back-type of axonal degeneration in the gracile axonal dystrophy (gad) mouse.
Neurochem Int. , 54 , 330-338  (2009)
原著論文2
Tsuji M, Aida N, Obata T, et al.
A New Case of GABA Transaminase Deficiency Detected with Proton MR Spectroscopy.
J Inherit Metab Dis , 33 (1) , 85-90  (2010)

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
-