保健所ならびに市町村保健センター間の情報連携を見据えたデジタル化推進に関する研究

文献情報

文献番号
202326027A
報告書区分
総括
研究課題名
保健所ならびに市町村保健センター間の情報連携を見据えたデジタル化推進に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23LA2001
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
増野 園惠(兵庫県公立大学法人 兵庫県立大学 地域ケア開発研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 林 知里(兵庫県立大学 地域ケア開発研究所)
  • 本田 順子(兵庫県立大学 地域ケア開発研究所)
  • 坂下 玲子(兵庫県立看護大学看護学部)
  • 石井 美由紀(兵庫県立大学 看護学部)
  • 浦川 豪(兵庫県立大学大学院 減災復興政策研究科)
  • 大島 裕明(兵庫県立大学 情報科学研究科)
  • 菊池 宏幸(東京医科大学 公衆衛生学分野)
  • 神原 咲子(神戸市看護大学 看護学部)
  • 毛利 好孝(姫路市保健所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
新型コロナウイルス感染症の対応においては、急増した感染者・濃厚接触者の把握と把握後の対応に大きな遅れが生じ、混乱をきたした。その要因の一つに、保健活動における情報収集・情報集約のデジタル化の遅れがあげられる。保健活動におけるデジタル化は、感染症対応のみの課題ではない。コロナ禍以前より、国民の健康と安心安全な生活を守るための次世代型保健医療システムの構築に向け、ICT活用によるデジタル・トランスフォーメーション(DX)の推進が議論されてきた。感染症流行等健康危機に迅速かつ的確に対応するためには、平時の保健活動のデジタル化・DX推進が不可欠である。地域保健行政の中心である保健所からは、デジタル化の早期達成が要望されており、喫緊の課題である。しかし、保健所や自治体規模によっても異なる具体的な課題については明確ではなく、保健所行政のデジタル化・DXを推進する具体的な方策も示されていない。そこで本研究では、地域保健活動のデジタル化推進の現状と阻害要因を明らかにするとともに、保健所・保健センターにおける効果的・効率的な情報連携を進め保健行政のデジタル化および地域保健活動におけるDX推進に資する具体的な資料を作成することを目的とした。
研究方法
規模や設置の異なる保健所でのCOVID-19対応におけるデジタル化の現状等に関する聞き取り調査および全国の保健所・保健センターを対象とした質問紙調査、他分野および海外におけるDX推進のグッドプラクティスに関する資料を収集した。
結果と考察
研究協力への同意が得られた保健所及び行政企画部に対して行ったヒアリングからは、新型コロナウイルス感染症への対応フローを、デジタル化の状況および発生した課題やその対処と合わせて流行のフェーズ(波)毎に作図して整理した。
次に、ヒアリング結果を元に質問紙を作成し、全国の保健所と保健センターに対する全国調査を実施した。その結果、190の保健所および239の保健センターより回答が得られた。保健所における新型コロナウイルス対応では、業務の効率化・省力化のためにデジタルデータによる情報入力・情報共有・情報管理がさまざまな方法で試みられたが、デジタル化の導入は保健所によって差が生じていたこと、デジタル化対応後にも「入手や時間が余分に必要」「電話での確認が必要」「情報管理がしづらい」など課題が多く残っていたことなどが明らかとなった。また、新型コロナウイルス感染症対応において保健所と保健センター間で実施された患者情報等に関する情報共有は主に電子メールや電話、対面などの方法がとられていたことも確認された。デジタル化を進めるうえでの課題として、保健所・保健センター共に「組織風土・体制」「IT専門家の確保」、「職員のITリテラシー教育」が上位に挙げられた。
保健活動のデジタル化推進の参考となりうる他分野事例として災害発生後の主要な災害対応業務支援システムについて調査し、新しい技術を利活用する概念としてCOTS(commercial off-the-shelf)の採用や定型業務と非定型業務を明確にし、定型業務のための既存システム等スタンドアロン型の情報システムと非定型業務のための柔軟性の高い仕組みの両面を検討すべきであることなどが明示された。
海外事例としては、英国における新型コロナウイルス感染症対応とEUにおける今後の健康データ共有に関する取り組みについての情報を得た。
COVID-19対応を契機に、地域保健行政におけるデジタル化の必要性と課題が浮き彫りになった。感染者情報の管理においては、HER-SYSの導入が一定の成果を上げたものの、医療機関との連携やITシステムの統合における問題点も明らかになった。対応した保健所では、独自のデジタル管理システムを開発・導入する動きが見られた一方で、デジタルリテラシーの向上や専門的なIT人材の不足が課題として浮上した。
デジタル化推進の好事例から学ぶべきは、データの連携と共有の重要性である。効果的なデジタル化には、時系列でのデータ連携、最新情報の更新と共有、そして高精度な情報管理が不可欠となる。これは災害対応や他の公共保健業務にも共通する要件であり、各自治体が独自にシステムを運用する際にも統一された情報基盤が求められる。
結論
今後の地域保健行政におけるデジタル化の進展には、単なるアナログデータのデジタル化に留まらず、業務フローやプロセスの根本的な改革が必要である。これは、デジタルトランスフォーメーション(DX)の本質を理解し、実行することを意味する。新たな健康危機に備え、地域や国を超えたヘルスデータの連携・共有による社会変革を視野に入れた取り組みが求められる。

公開日・更新日

公開日
2024-10-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2024-10-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202326027Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
10,400,000円
(2)補助金確定額
10,150,000円
差引額 [(1)-(2)]
250,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 521,819円
人件費・謝金 2,658,841円
旅費 596,015円
その他 3,973,784円
間接経費 2,400,000円
合計 10,150,459円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2024-10-23
更新日
-