文献情報
文献番号
202326023A
報告書区分
総括
研究課題名
『新しい生活様式』に即した熱中症予防対策の評価及び推進のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22LA2001
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
横堀 將司(日本医科大学 大学院医学研究科救急医学分野)
研究分担者(所属機関)
- 神田 潤(帝京大学 医学部)
- 鈴木 健介(日本体育大学 保健医療学研究科)
- 阪本 太吾(日本医科大学付属病院 救命救急科)
- 林田 敬(慶應義塾大学 医学部救急医学)
- 登内 道彦(一般財団法人気象業務支援センター配信事業部)
- 伊香賀 俊治(慶應義塾大学 理工学部)
- 上野 哲(独立行政法人 労働安全衛生総合研究所)
- 三宅 康史(帝京大学 医学部 救急医学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
12,720,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は疫学的・科学的研究を背景に『新しい生活様式』に対応した熱中症予防対策を確立し、かつ感染症対策の推進にも貢献すべくポストコロナ時代における新しい熱中症の診療ガイドラインを作成することを目的とする。GRADE法を用いたEvidence Based Guidelineを作成し、広く熱中症診療の日常臨床における指針として発出する。さらにはICTを用いたデータ収集として、熱中症予防ツールの開発に加え、災害医療分野の標準手法として実績のあるJ-SPEED の手法を活用し、熱中症患者の発生データをタイムリーかつ継続的に把握する体制を構築する。
研究方法
熱中症アプリを使用した患者の年齢、性別、既往歴、熱中症を起こしたと思われる状況(運動下、在宅)、マスク着用の有無、障害の有無、重症度等について調査した。またJ-SPEEDを用いた即時的データ収集を行った。WBGT水平分布の推定と提供に関する研究においては同情報のベースとなる5kmメッシュの気象情報を、熱中症搬送者が急増した2010年以降について5~10月の期間整備し、緯度・経度・期間を指定することにより情報の整備を行った。学校施設の室内環境と暑さによる体調不良の実態把握については冷房導入前に実施した調査と、新型コロナ禍の2020年の冷房導入後に実施した調査を分析対象とした。暑熱順化に関する研究については総務省消防庁が公表している都道府県別日別熱中症救急搬送者数と環境省が発表している地域別時間別WBGT予測値を用いて分析した。『新しい生活様式』に即したガイドライン作成のための基礎調査については匿名レセプト情報と、気象庁から公開される本邦における主要6都市(東京、名古屋、新潟、大阪、広島、福岡)のWBGT最高値平均を比較検討した。
結果と考察
2021年6月より2023年6月27日の熱中症アプリを使用した患者データ655例のうち、一般市民が入力した528例を解析した。アプリ使用患者の平均年齢は39.0±22.0歳(0-99歳)、うち男性は349例 (66.1%)であった。既往歴は高血圧等の心血管系既往歴が最多(72例、13.6%)であり、さらに以前の熱中症の既往(66例、12.5%)、糖尿病(42例、7.95%)、呼吸器系疾患(33例、6.25%)と続いた。発生場所については、屋外が63.3%、屋内が36.4%、スポーツが36.4%、肉体労働が25.8%であった。重症度は軽症にカテゴライズされるⅠ度熱中症が104例(20.3%)、中等症のⅡ度熱中症が310例(60.4%)、重症熱中症のⅢ度熱中症が99例(19.3%)見られた。Ⅰ度熱中症は「めまい」の症状が最も多く、マスク非着用12例(48.0%)、マスク非着用群が30例(41.7%)であり、有意差は認められなかった(P=0.75)。Ⅱ度熱中症では、頭痛の症例が最も多く、マスク非着用75例(61.5%)、マスク着用群が113例(66.5%)であり、有意差は認められなかった(P=0.45)。Ⅲ度熱中症は、「意識が悪い」の症例が最も多く、マスク非着用16例(13.1%)、マスク着用群が26例(15.3%)であり、有意差は認められなかった(P=0.84)。マスク着用が熱中症の重症度に関わる可能性は低いと考えられた。J-SPEEDを用いた即時的データ収集においては、1日前、直近7日、過去8-14日、および累計によるデータ収集と解析が可能であり、熱中症発生のトレンドを知ることができた。また、各救命センターへの搬送者数についても明らかになり、救急医療への負荷の程度も把握することができた。
暑熱順化に関する研究については、65歳以上の高齢者では同じ日最高WBGTに対しての熱中症救急搬送者数が最も多く、18-64才の成人が最も少なかった。熱中症ガイドラインについては、とくに広く国民の健康増進に資するべく、ポストコロナ時代における新しい熱中症の診療ガイドラインを作成することができた。
暑熱順化に関する研究については、65歳以上の高齢者では同じ日最高WBGTに対しての熱中症救急搬送者数が最も多く、18-64才の成人が最も少なかった。熱中症ガイドラインについては、とくに広く国民の健康増進に資するべく、ポストコロナ時代における新しい熱中症の診療ガイドラインを作成することができた。
結論
本研究結果は、アプリケーションが熱中症患者の実態把握に有効である可能性があることを示唆している。また、今後の新しいデータベースに基づき、スコアリングが転帰を予測しうることの評価が望ましいと思われる。
季節に関しては、少年、成人、高齢者いずれの年齢層も7月が最もW10の値が低く、9月が最も高くなり暑熱順化が夏の間に進んでいることを示した。年齢の違いでは、スポーツ等で屋外に出て暑熱ばく露を受ける機会が多いのに加えて体の順応も早いと考えられる。それに対して成人や高齢者は、屋外での暑熱ばく露の機会は少年より少なく、暑熱への体の順応も遅くなると思われる。暑熱順化は少年では夏の早い時期に進み、成人や高齢者では時間をかけて進むことが示され、我が国に特徴的な高齢者の熱中症予防の参考になると思われる。
季節に関しては、少年、成人、高齢者いずれの年齢層も7月が最もW10の値が低く、9月が最も高くなり暑熱順化が夏の間に進んでいることを示した。年齢の違いでは、スポーツ等で屋外に出て暑熱ばく露を受ける機会が多いのに加えて体の順応も早いと考えられる。それに対して成人や高齢者は、屋外での暑熱ばく露の機会は少年より少なく、暑熱への体の順応も遅くなると思われる。暑熱順化は少年では夏の早い時期に進み、成人や高齢者では時間をかけて進むことが示され、我が国に特徴的な高齢者の熱中症予防の参考になると思われる。
公開日・更新日
公開日
2024-09-17
更新日
-