文献情報
文献番号
200936150A
報告書区分
総括
研究課題名
ロイス・ディーツ症候群の診断基準作成に向けた臨床所見の収集と治療成績の検討
課題番号
H21-難治・一般-095
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
森崎 裕子(国立循環器病研究センター研究所分子生物学部)
研究分担者(所属機関)
- 荻野 均(国立循環器病研究センター心臓血管外科)
- 塘 義明(国立循環器病研究センター心臓血管内科)
- 東 将浩(国立循環器病研究センター放射線部)
- 白石 公(国立循環器病研究センター小児循環器部)
- 森崎 隆幸(国立循環器病研究センター研究所分子生物学部)
- 圷 宏一(日本医科大学付属病院集中治療室)
- 古庄 知己(信州大学医学部附属病院遺伝子診療部)
- 水野 誠司(愛知県心身障害者コロニー中央病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
ロイス・ディーツ症候群(LDS)はTGF-β受容体(TGFBR1 / TGFBR2)の遺伝子変異による常染色体優性遺伝性結合織疾患として近年新規に提唱された疾患で、大動脈病変を主に特徴的な全身症状を伴う。臨床症状からマルファン症候群(MFS)などの類縁の結合織疾患を鑑別することは難しいことが多いため、現時点での診断はもっぱら遺伝子解析によっている。疾患概念も新しいため、疾患頻度や患者数の把握も不十分で、効果的な内科的・外科的治療法の選択基準も不明である。こうした状況をふまえたうえで、本邦におけるLDSの診断および治療の現状についての調査研究を行う。
研究方法
1)疾患認知度および疾患頻度調査:アンケート票郵送による。(対象:小児循環器科・小児整形外科)
2)遺伝子解析:MFS類縁疾患が疑われた患者について網羅的に解析。
3)遺伝子診断により診断確定した患者における臨床情報の収集:画像データおよび臨床所見シートによる情報収集。
4)診断確定した患者における治療成績の検討
2)遺伝子解析:MFS類縁疾患が疑われた患者について網羅的に解析。
3)遺伝子診断により診断確定した患者における臨床情報の収集:画像データおよび臨床所見シートによる情報収集。
4)診断確定した患者における治療成績の検討
結果と考察
1)LDSという疾患名および疾患概念はほとんど認知されていないため、未診断例が多い。疾患頻度は5万人に1人程度で、MFSが疑われる患者の約10%がLDSであると予測された。
2)臨床的にMFS類縁疾患が疑われた198例のうち、16例でTGFBRs遺伝子変異が同定された。
3)遺伝子診断によりLDSと診断された29例中11例がMFSの診断基準を満たしていたが、このうち、10例で眼間解離を、5例で動脈蛇行や小動脈瘤などのLDSに特徴的な所見を認めた。画像診断では、頚部動脈MRAによる動脈蛇行所見が有効であった。(検出率88%)
4)大動脈合併症については、MFSに比べて若年発症で、一旦解離すると早期に大動脈全置換が必要となる症例が多い傾向を認めたが、外科的治療成績は、良好であった。
2)臨床的にMFS類縁疾患が疑われた198例のうち、16例でTGFBRs遺伝子変異が同定された。
3)遺伝子診断によりLDSと診断された29例中11例がMFSの診断基準を満たしていたが、このうち、10例で眼間解離を、5例で動脈蛇行や小動脈瘤などのLDSに特徴的な所見を認めた。画像診断では、頚部動脈MRAによる動脈蛇行所見が有効であった。(検出率88%)
4)大動脈合併症については、MFSに比べて若年発症で、一旦解離すると早期に大動脈全置換が必要となる症例が多い傾向を認めたが、外科的治療成績は、良好であった。
結論
LDSの疾患認知度はまだ低く、未診断例も多い。疾患頻度は、5万人に1人程度と推測された。診断面では、現行のMFS診断基準では、MFSとLDSを鑑別することは不可能であるが、血管症状の進行や治療管理が異なることを考えても、この両疾患をきちんと鑑別することは必要であり、新たな診断基準の作成が必要であると考えられた。治療面では、LDSは、適切な疾患管理により大動脈解離等の重篤な合併症を予防することが可能であり、QOLと予後の改善のためには早期診断と適切な介入が必須であると考えられた。
公開日・更新日
公開日
2010-05-31
更新日
-