小児期発症の脊髄性筋萎縮症の生体試料収集に関する研究

文献情報

文献番号
200936136A
報告書区分
総括
研究課題名
小児期発症の脊髄性筋萎縮症の生体試料収集に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H21-難治・一般-081
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
斎藤 加代子(東京女子医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 伊藤 万由里(東京女子医科大学 医学部)
  • 松尾 真理(東京女子医科大学 医学部)
  • 中野 今治(自治医科大学 医学部 内科学講座 神経内科学部門 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
小児期発症SMAの病態解析と治療開発の準備を目的として、臨床情報の収集、分析、データベース構築、生体試料の収集を行った。
研究方法
258例を対象にSMN遺伝子解析を実施し、欠失例119例の臨床分析を行った。臨床情報データベースを作成し、生体試料を収集した。
結果と考察
1)SMAの臨床情報の収集と分析
(1)SMN遺伝子解析
1型87例中93%、2型65例中97%、3型84例中65%、4型22例中10%にSMN1遺伝子exon 7,8の両者またはexon 7のみの欠失を認めた。
(2)SMAの型別の発症年齢
発症年齢は1型0?5ヶ月(平均42.1日)、2型1ヶ月?4歳(平均9.4か月)、3型5ヶ月?15歳(平均4.1歳)、4型20歳?72歳(平均36.5歳)だった。1型では平均死亡年齢は0歳4ヶ月、平均レスピレーター導入年齢は0歳5ヶ月であった。2型で、人工呼吸管理を施行は7例、NIPPV導入は8例であった。
(3)SMN遺伝子欠失を示す119例の臨床分析
下肢優位筋力低下79例(66%)、近位筋優位筋力低下85例(71%)、筋線維束性収縮58例(49%)、中枢神経障害がない92例(77%)、知能障害がない83例(70%)、血清CKが高値23例(19%)と、診断基準に非該当例への留意が必要と考えた。
(4)成人SMAの調査研究
68例(男:女=38:30)において、上肢遠位筋優位の筋力低下は8例(12%)であり、うち高CK血症を示す症例が5例あった。
2)臨床情報データベースの作成
SMA臨床個人調査票の入力を目標として臨床情報データベースを作成した。
3)生体試料の収集
リンパ球の芽球化、血液からDNAを調製、皮膚線維芽細胞を培養しバンクを作成した。
結論
1)日本のSMA患者の1/4に相当する症例の分析を行った。SMAの臨床には幅があり、診断基準を用いた判定では注意が必要であると考えられた。
2)小児期発症のSMAと成人発症には臨床的な開きがあり、4型はALSとの病因的異同の検討が必要である。
3)生体試料の収集は、今後の継続と協力体制が必要である。
4)SMAは運動障害を来す重篤な疾患であり、乳児期・小児期に気管切開を受ける人も多い。本研究の臨床情報のデータベース化を発展させ、日本におけるSMAの全貌の解明につなげたい。発生機序の解明と治療法の開発への貢献が必要である。

公開日・更新日

公開日
2010-05-26
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200936136C

成果

専門的・学術的観点からの成果
日本のSMAの患者の約1/4に相当する症例の分析を行った。臨床情報の収集と分析、データベース化により、発症年齢、重症度、臨床所見の分析ができた。SMAの臨床には幅があり、診断基準を用いた判定において、注意が必要であると考えられた。小児期発症と成人発症には開きがあり、4型はALSとの病因的異同の検討が必要である。生体試料の収集には継続と協力体制が必要であると考える。
臨床的観点からの成果
SMAは運動障害を来す重篤な疾患であり、乳児期・小児期に気管切開を受ける人も多い。臨床情報の解析は本研究がわが国で初めてのものである。本研究で構築したデータベースを発展させ、日本におけるSMAの全貌の解明につなげる端緒と考えられる。さらに、生体試料収集によって発生機序の解明と治療法の開発への貢献につなげていく。
ガイドライン等の開発
厚生労働省難治性疾患克服研究「神経変性疾患に関する調査研究班(班長:中野今治教授)」との協力にて、「脊髄性筋萎縮症の診断基準」および「脊髄性筋萎縮症の臨床調査個人票」を作成した。
その他行政的観点からの成果
診断基準を制定し、臨床調査個人票を作成したことによって、脊髄性筋萎縮症が特定疾患治療研究事業の対象疾患として認定された。
その他のインパクト
脊髄性進行性筋萎縮症(SPMA)と脊髄性筋萎縮症(SMA)の名称について、従来、SPMAとSBMAの疾患名が使用されていた。しかし、海外の成書や論文で、SPMAは使用されておらず、SMAと表わされている。国際的な表現に統一を図るためにSPMAとSMAを「脊髄性筋萎縮症(SMA)」とした。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
2件
その他論文(和文)
4件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
6件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
2件
遺伝性神経難病における遺伝子医療公開講座第6回遺伝性神経難病のケア.2009/9/27於:大阪 遺伝性神経難病における遺伝子医療.平成21年度難病医療従事者研修会.2009/19/20於:盛岡

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
-