国際流通する偽造医薬品等の実態と対策に関する研究

文献情報

文献番号
202324039A
報告書区分
総括
研究課題名
国際流通する偽造医薬品等の実態と対策に関する研究
課題番号
23KC2007
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
吉田 直子(金沢大学 医薬保健研究域附属AIホスピタル・マクロシグナルダイナミクス研究開発センター)
研究分担者(所属機関)
  • 前川 京子(同志社女子大学 薬学部)
  • 小出 達夫(国立医薬品食品衛生研究所 薬品部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
1,731,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
偽造医薬品対策として、医薬品の個人輸入代行業者に着目するとともに、個人輸入が濫用等のおそれのある医薬品の入手ルートになる可能性を踏まえ、インターネットを介して国際流通する医薬品の実態や国際的規制の動向を明らかにすることにより、より効果的な啓発と対策の強化に資する。
研究方法
①医薬品個人輸入代行業者の資格要件について、フランスと米国を対象に調査した。②PubMedをデータソースとして、2023年度中に論文として報告された模造医薬品による健康被害事例を収集した。③医中誌webをデータソースとして、2023年度末までに原著論文として報告された医薬品の濫用による健康被害事例を収集した。④フォシーガ錠、デキストロメトルファン製剤、およびジフェンヒドラミン製剤を対象に、個人輸入代行サイトを介した試買調査を実施した。⑤これまでに入手した個人輸入医薬品212検体を対象に、利用した個人輸入代行サイトの記載情報から偽造医薬品取り扱いサイトを推定する方法を検討した。⑥液体クロマトグラフィー-質量分析(LC/MS)を用いた高分子医薬品セマグルチド製剤の主薬成分測定法を検討した。⑦LC/MSを用いた痩身サプリメントに含まれる未知成分の同定を試みた。
結果と考察
①フランスでは、医薬品の個人輸入代行業者は医薬品仲介業として政府Agence nationale de sécurité du médicament et des produits de santé(ANSM)への届出とリストへの登載が必要で、記録、回収など遵守すべき規則も定められていた。米国では、医薬品の個人輸入代行業者はFDAの許可は不要であり、Drug Supply Chain Security Act(DSCSA)による許可の対象とは考えられていなかった。②英語論文443編のうち模造医薬品に関する34件の内容を確認し、模造医薬品による健康被害の論文3編を特定した。いずれも、模造オピオイドならびに模造アルプラゾラムの過剰摂取による死亡事例について報告されていた。③日本語論文268編より薬物による健康被害報告199件を確認し、OTC医薬品による健康被害について、少なくとも39件を検出した。OTC医薬品の過剰摂取事例として、ジフェンヒドラミン、カフェインによる致死例が報告されていた。④処方箋医薬品であるフォシーガは約1か月分を処方箋の提示なしで、デキストロメトルファンとジフェンヒドラミンは1-2ヶ月分程度を本人確認等することなく、一度に入手することができた。国内においては、これらの製剤の供給不安定や販売制限が強化されている現状があり、日本人の医薬品個人輸入を助長し、不適正使用による健康被害につながる可能性が強く懸念された。⑤問い合わせ先や輸入代行業者の氏名、住所などの身元を保証する情報が記載されていないサイトや、個人輸入または特定商取引など規制関連の記載がないサイトを介して入手した個人輸入医薬品で偽造医薬品出現率が有意に高かった。決定木分析の結果、輸入代行業者の住所の記載がなく、代金の支払い時期の記載があるサイトを介して偽造医薬品を入手する可能性が高いことが示された。⑥セマグルチド標品のMSスペクトルは、m/z 1029.2901が主要なイオンであり、[M+4H]4+イオンとして検出された。逆相カラムと0.1%ギ酸を含有する水-アセトニトリル系の移動相を用いることによりセマグルチド及びリラグルチド(内部標準)の分離分析が可能であることを確認した。⑦これまでに同定されたシブトラミン以外の未知成分の同定を目指して、精密質量及び同位体組成演算に基づき、化合物を推定し、推定された成分の標品を用いて、新たにN-デスメチルシブトラミンの含有を確認した。
結論
医薬品個人輸入代行業者の資格要件について、フランスと米国で対象的な結果であった。偽造医薬品による健康被害報告として、新たに米国における偽造オピオイドならびに模造アルプラゾラムの過剰摂取による死亡事例情報が収集された。国内における医薬品の濫用による健康被害報告として、ジフェンヒドラミン製剤の濫用による致死事例等が報告されており、当該製品は個人輸入により一度に大量に入手できることから、OTC医薬品の販売及び購入に関わる規制の在り方について、インターネットを介した入手経路も含め、慎重に検討することが必要であると考えられた。偽造医薬品取り扱いサイトの特徴等を明らかにするとともに、消費者には、安易に個人輸入を行わないよう、さらなる情報提供や注意喚起が必要である。今後さらに増加が見込まれるセマグルチドのような高分子医薬品の品質試験や未知成分の同定においてはLC/MSが有力な手段であり、新たな偽造医薬品や未承認医薬品の同定や出所起源の解明に資するため、継続的な取り組みが必要であると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2024-06-25
更新日
-

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公開日・更新日

公開日
2024-06-25
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文献番号
202324039Z