文献情報
文献番号
202324037A
報告書区分
総括
研究課題名
大麻をはじめとする薬物の効果的な予防啓発活動の実施及び効果検証に向けた調査研究
課題番号
23KC2005
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 勉(湘南医療大学 薬学部)
研究分担者(所属機関)
- 河井 孝仁(東海大学 文化社会学部広報メディア学科)
- 関野 祐子(東京大学大学院薬学系研究科ヒト細胞創薬学寄付講座)
- 花尻 瑠理(木倉 瑠理)(国立医薬品食品衛生研究所 医薬安全科学部)
- 舩田 正彦(湘南医療大学 薬学部)
- 森 友久(星薬科大学 薬品毒性学教室)
- 山本 経之(長崎国際大学 薬学部 薬理学研究室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
7,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
厚生労働省が公表した「第五次薬物乱用防止五か年戦略」(2022年6月)のフォローアップによれば、薬物事犯全体の検挙人員は近年横ばいで推移しているが、大麻事犯の検挙人員は8年連続で増加するなど、「大麻乱用期」であることが確実と言える状況にある。特に、30歳未満の大麻事犯は、大麻事犯全体の68.0%を占めており、若年層における大麻の乱用が拡大している。現在、薬物乱用防止教育が学校において広く行われているなど、国内の様々な機関が連携して薬物乱用防止に努めているが、近年はインターネット上で様々な情報を容易に得ることができ、「大麻は安全」、「大麻はタバコやアルコールよりも危険が少ない」などの若者に大麻使用を助長しかねない誤った情報が氾濫している。カナダなど一部の国において合法的な嗜好目的使用が認められたことも一因となっている可能性がある。これらの情報に若者が接することで、大麻の継続的な乱用や、他の薬物の乱用につながるなど、日本で薬物の乱用が一層進むことが危惧されている。このような状況に対応するため、これまで、先行研究「若年者を対象としたより効果的な薬物乱用予防啓発活動の実施等に関する研究」では、大麻に関する情報収集や、若者に対する効果的な予防啓発の実施等に関する研究が行われ、若者を対象としたより効果的な予防啓発に向けた考え方を整理したところである。本研究では、前述の研究にて整理された考え方に基づき、大麻をはじめとする薬物の効果的な予防啓発活動に関する調査・研究を行う。
研究方法
本研究では、若者による大麻等使用の抑制に貢献するため、(1)根拠に基づく施策の立案等に活用するため、大麻由来成分の医療での有用性等を含めた国内外の大麻に関する様々な規制・研究の調査する。(2)大麻に関する様々な規制・研究の調査の内容も踏まえた上で、若年層を対象とする薬物乱用予防啓発資料の作成する。(3)薬物乱用予防啓発の効果検証のツール及び手法を検討する。大麻をはじめとする薬物の効果的な予防啓発活動の実施及び効果検証に向けた調査研究を多角的に実施した。
結果と考察
研究代表者(鈴木)の全体統括の下で、各研究分担者により以下の研究結果と考察が得られた。(河井)大麻をはじめとする薬物の効果的予防啓発活動を目指した広報戦略を作成することを目的として自治体担当者ヒアリング、現地調査及びアンケート調査を行い、相談機関活用を促す行政広報の課題及び意義について成果を得た。(關野)予防啓発活動のためのエビデンス収集に関する研究として、生後のシナプス形成期に慢性的にカンナビノイドに曝露された時の神経細胞死について詳細に解析した。樹状突起と樹状突起スパインを可視化することで、脳の発達期特有の神経細胞死の経過を解析できた。(花尻)大麻由来成分関連化合物の含有を標榜する製品ついて調査を行なった結果、天然由来カンナビノイド(大麻抽出物もしくは合成品)製品ではカンナビジオール(CBD)について様々な種類の製品が流通していることなどが明らかとなった。(舩田)米国の医療用大麻法、レクリエーション用大麻法およびカナダの大麻法に関する調査を行った。規制の状況は、一部の州において、大麻の適応症数の増減が認められたが、大麻の所持量、摂取法などに変更はなく州間で統一されていない状況のままであった。米国では、大麻を規制物質法の中で最も規制の厳しいSchedule Iと定めているが、2018年より産業用大麻(Hemp)については国として合法化しており、州単位では医療用または成人向けに嗜好用目的での使用を認める動きが活発化している。(森)薬物乱用を正しく理解するための薬物情報や専門用語は難解であり、正しい情報が必ずしも伝達されているとは言い難い。薬物乱用の予防啓発に役立てるために、医薬品の副作用、薬物の適性使用と乱用の違いについて理解しやすい形でまとめた。(山本)Marijuana/THC/CBD edible(大麻の成分を含む大麻入り食品)に関わる問題点に係る調査研究では、大麻の経口摂取によるリスク、妊娠中の大麻使用による出産後の子供に及ぼす影響、大麻ベイピングと大麻喫煙の影響について明らかにした。
結論
初年度は、大麻をはじめとする薬物の効果的な予防啓発活動の実施及び効果検証に向けた研究として、若年層を対象とする薬物乱用予防啓発資料の作成にも取り組めた。大麻由来成分の医療での有用性等を含めた国内外の大麻に関する様々な規制・研究の調査を進めることができた。初年度の研究をより発展させつつ、革新的な薬物乱用予防啓発の効果検証のツール及び手法を検討していく。
公開日・更新日
公開日
2024-07-31
更新日
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