安全な血液製剤の安定供給に資する適切な採血事業体制の構築のための研究

文献情報

文献番号
202324030A
報告書区分
総括
研究課題名
安全な血液製剤の安定供給に資する適切な採血事業体制の構築のための研究
課題番号
22KC2007
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
大隈 和(関西医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 山口 照英(金沢工業大学 加齢医工学先端技術研究所)
  • 田野崎 隆二(慶應義塾大学医学部 輸血・細胞療法センター)
  • 岡田 義昭(埼玉医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
5,096,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
血液製剤は、人体より採取された血液を原料として製造されている。そのため、血液製剤は有限であるとともに、血液を介して病原体を伝播させるというリスクがあるという特徴を有している。特に、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の新興感染症の影響により、採血事業に大きな影響が出たため、本研究班としてもこれまで既感染回復者やワクチン接種者への迅速な対応が必要不可欠であった。令和5年度の本研究では、昨年度に引き続き、採血事業に影響を及ぼし続けている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対策に加え、採血事業に関する基準等について、最新の知見・状況を踏まえ検討を行うことを目的とした。
研究方法
COVID-19が新型インフルエンザ等感染症から5類感染症に移行したことから、これに伴う新型コロナウイルス既感染者の採血制限について見直すために、班会議において検討した。変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)に関する採血制限についても、近年海外においてこれまでの知見やリスク評価に基づき採血制限の撤廃や緩和が進んでいるため、わが国における見直しについて検討した。また男性間性交渉者(MSM)に関する採血制限について、現在LGBTに対する社会の理解や検査法の進歩から見直しが進んでいる。海外では個別リスク行為による後天性免疫不全ウイルス(HIV)感染リスクが評価され、各国ではこの結果に基づき、近年献血受け入れ基準が変更された。そのため、わが国のMSMに関する問診項目の見直しについて検討した。さらに献血の採血基準の見直し、輸血歴による献血制限の変更、非特定血液凝固因子製剤投与に係るC型肝炎症例の検討についても、現状の考え方を班会議において議論した。
結果と考察
以下の課題について検討し意見を取りまとめた。1.COVID-19 の5類感染症移行に伴う新型コロナウイルス既感染者の採血制限の見直しについて、COVID-19の知見や海外の採血制限の設定を調査した上で検討した。結論として「採血制限期間を4週間から2週間に変更する」ことに異論はなく、また採血制限期間の見直しの時期については、「1年毎ではなく、必要に応じて適宜見直すことで良い」ことが同意された。2.vCJDに関する採血制限について、わが国では2009年の国の通知でvCJD関連の献血制限が決定されて以降、一度も見直しされていない。わが国における見直しについて検討したところ、英国以外はvCJDに関する採血制限を撤廃する方向性は同意された。日本の安全性の評価方法については、引き続き議論していくこととされた。3.MSMに関する採血制限について、性的接触歴に関する問診の見直しを行う場合に、事前確率が上がらないことは留意すべきであるが、問診項目の変更を検討する方向性は了承された。変更した場合の日本の献血血液の安全性にかかる評価については、引き続き幅広く議論していくこととされた。班として問診項目の変更案も検討した。4.献血の採血基準の見直しについて、採血量や採血頻度等に関して議論された。先行研究においては健康診断基準や問診項目が検討されている。将来的に新規採血事業者が参入してくることも見据えて、引き続き、国内外の状況を改めて整理し、採血量、献血可能年齢等の検討を行う。5.輸血歴による献血制限の変更について、現状が説明され、今後も検討することとなった。6.非特定血液凝固因子製剤投与に係るC型肝炎症例の検討について、原告団・弁護団からの特に非特定製剤投与歴のあるC型肝炎2症例の調査をという求めに応じ、医学的・薬理学的観点から評価の方向性をまとめる必要があった。症例に投与された当時の血液製剤の安全性や、症例の肝障害の臨床経過について検討するために、原告団・弁護団から厚生労働省に提出された資料をもとに検討を行った。1〜3については、厚生労働省血液事業部会安全技術調査会で本研究班の意見として説明し、提言や報告を行った。
結論
COVID-19の5類感染症移行に伴う新型コロナウイルス既感染者の採血制限期間等について見直しを行い、提言内容をまとめた。また、vCJDに関する採血制限、MSMに関する採血制限について、問診見直しに向けた検討を行った。以上については、厚生労働省血液事業部会安全技術調査会で説明し、提言や報告を行った。さらに、献血の採血基準の見直し、輸血歴による献血制限の変更、非特定血液凝固因子製剤投与に係るC型肝炎症例の検討についても議論したが、継続審議とした。

公開日・更新日

公開日
2024-06-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-06-21
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202324030Z