指定薬物の指定に係る試験法の評価検証に資する研究

文献情報

文献番号
202324011A
報告書区分
総括
研究課題名
指定薬物の指定に係る試験法の評価検証に資する研究
課題番号
22KC1005
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 勉(湘南医療大学 薬学部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
3,360,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
指定薬物は中枢神経系に作用して、興奮若しくは、抑制又は幻覚作用を発現する薬物に分類される。次々と市場に出回る幻覚作用を発現する薬物を速やかに評価して、適時に規制するためには、精度が高く、簡便で迅速な評価法の開発が望まれる。また、幻覚作用の客観的評価として、定量化・数値化する必要がある。
研究方法
本研究では、幻覚発現薬と作用機序が類似するκ-オピオイド受容作動薬および 5-HT2 受容体作動薬を使用しマウスを用いた条件づけ場所嗜好性試験を実施した。同時に幻覚発現薬による幻覚発現時には情動異常を引き起こす可能性が考えられるため、マウスガラス玉覆い隠し試験を実施した。さらに、幻覚作用の指標として使用されるマウスの首振り反応 Head Twitch Response (HTR) に着目して、HTR を定量化できる自動測定装置の開発を試みた。加えて、幻覚作用を有すると考えられるκ-オピオイド受容作動薬 U50,488H ((±)-U-50488 hydrochloride (trans-(±)-3,4-Dichloro-N-methyl-N-[2-(1-pyrrolidinyl)cyclohexyl]benzeneacetamide hydrochloride) および 5-HT2 受容体作動薬 DOI (4-iodo-2,5-dimethoxy-α-methylbenzeneethanamine) の合成を行った。様々なタイプの幻覚誘発薬によって引き起こされる行動変化を評価しうる実験系の構築を目指すため、構造変換が容易なphenylpiperadine誘導体に着目し、解析法についても検討した。幻覚作用を有するDOI によって引き起こされるマウス異常行動を検討した。5-HT2A 受容体とドーパ/GPR143 シグナルとの関連性を明らかにするため、GPR143 欠損マウスを用いて、5-HT2A 受容体作動薬である DOI の薬理作用を野生型と比較・検討した。
結果と考察
幻覚作用の客観的評価が困難な要因として、定量化・数値化が難しいことが挙げられる。本研究では、幻覚発現薬と考えられる薬物が条件づけ場所嗜好性試験において嫌悪効果を示した。この嫌悪効果は 5 日間という比較的短期間で評価可能であり、幻覚発現を定量化・数値化できると考えられた。ガラス玉覆い隠し試験においてκ-オピオイド受容体作動薬および 5-HT2 受容体作動薬で情動異常を検出できた。本試験を用いることで、幻覚発現薬の幻覚発現に伴う情動異常が評価可能であると考えられた。さらに、本研究で作製した磁力測定装置により、マウスの首振り反応の発現回数を定量的に解析することが可能になった。κ-オピオイド受容作動薬 U50,488H および 5-HT2 受容体作動薬 DOI の合成を行った。弁別刺激効果による蓋然性評価と比べ、自発運動促進効果による評価は非常に簡便でスクリーニングにも非常に有用と考えられた。ICR系マウスにおける幻覚発現薬による異常行動は、特に前肢洗顔行動とそれに続く伏臥位の発現頻度の間に強い相関関係が認められた。加えて、GPR143 が 5-HT2A 受容体応答を抑制することを明らかにし、ドーパ、ドパミン、セロトニンの遊離測定系を確立した。
結論
これらの研究結果を基に、指定薬物の指定に係る試験法の評価検証に資する研究、特に幻覚作用を発現する薬物の簡便で精度が高く迅速な評価法の開発を遂行していく。

公開日・更新日

公開日
2024-06-19
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-06-19
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202324011Z