文献情報
文献番号
202324005A
報告書区分
総括
研究課題名
新たなアプローチ方法による献血推進方策と血液製剤の需要予測に資する研究
課題番号
21KC1005
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
田中 純子(広島大学 大学院医系科学研究科 疫学・疾病制御学)
研究分担者(所属機関)
- 鹿野 千治(日本赤十字社 血液事業本部 経営企画部 事業戦略室)
- 秋田 智之(広島大学 大学院医系科学研究科 疫学・疾病制御学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
4,850,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は、1.血液製剤の医療需要と供給の予測に関する研究、2.若年者の献血推進の方策と教育資材の開発、等4つの研究の柱からなり、エビデンスに基づいた献血施策の基盤となる成果の提示を目指す
研究方法
人口動態、疫学、社会行動確率論、情報マネジメント、社会医学、医歯薬学教育など多岐にわたる研究分野からのアプローチを実施する
結果と考察
1)血液製剤の医療需要と供給の予測に関する研究
1.免疫グロブリン製剤の使用実態と需要予測
R2年度には2012~18年度のNDBデータを用い2025年までの免疫グロブリン製剤と原料血漿の必要量の将来予測を行った。R5年度は、2022年4月に申請し、2023年7月に提供された2012~21年度(10年間)のNDBデータを解析し、将来予測の検証およびアップデートを行った。
免疫グロブリン製剤ののべ処方本数は、2012~19年度までは増加傾向であったが、2020年度に減少に転じた、処方実患者数は川崎病が最も多かったが、2020年度に大幅に減少した。のべ処方本数、患者一人当たりの年間のべ処方本数は、慢性炎症性脱髄性多発根神経炎・多層性運動ニューロパチーが最も多かった。原料血漿1ℓあたり免疫グロブリン2.5gが2.0本(収率2.0本/ℓ)と仮定した場合、2012~21年度(全期間)をもとにした必要原料血漿量の将来予測量では、R2年度研究よりやや少なく、2025年度 91.8-107.4万ℓ、2028年度 85.2-99.7万ℓと算出され、コロナ禍の減少が反映された結果となった。
2.献血の需要と供給の将来推計
R2年度研究において献血者数の将来予測を行い、2025年予測献血者数は440~444万人、予測血液製剤需要は献血者換算477~505万人分であることを示し、「献血推進2025」の目標献血率策定時の参照資料となった。コロナ禍により、献血者の行動や血液製剤の需要への影響が考えられるため、献血本数の供給(R4年度研究)と需要(今年度研究)の再予測を試みた。予測献血者数は2025年449万人、2028年414万人、需要予測値は2025年469~502万人、2028年443~474万人であり、2025年度予測値はR2年度研究の結果と大きくは変わらず、需要推計値を基に算出された「献血推進2025」目標値の変更は不要と考えられた。
3.200ml献血由来の血液製剤の使用実態
2015~21年度(7年間)のNDBデータを解析し200ml献血由来の血液製剤の使用実態について検討したところ、赤血球製剤の70%以上は70歳以上で使用され、血漿製剤の60%以上が10歳未満で使用されていた。また、処方要因別にみると、赤血球製剤では、手術(32%)、血液疾患(17%)、外傷(13%)の順に多く、血漿製剤では、手術(58%)、出産関係(10%)、血液疾患(7%)の順に多く使用されていた
2)若年者の献血推進の方策と教育資材の開発とpilot地区を対象としたモデル事業の実施
R3年度に開発した医療系大学生向け献血推進教育のための教育資材(動画コンテンツ)について、国立大学医学科学生(101人)の視聴後の意見を集計し、ポジティブな感想やブラッシュアップに有用な具体的な改善アイデアが寄せられた
3)ポストコロナにおける効果的な献血確保策の先進事例調査及び提言
全血液センター(N=47)において献血確保のための活動に従事する担当者を対象とした献血者確保に寄与する効果的な取組WEBアンケート調査を企画・実施した(回答数31、率66%)。2020年当時、パンデミックによって社会的にきわめて困難な状況であったにもかかわらず、94%(29/31)の血液センターでは、献血率をパンデミック前の水準以上に維持していた。「テレビ・ラジオでの呼びかけ」「献血推進のための独自のキャンペーンの実施」「企業等を対象とした取組み」「採血所の収容人数を制限」「商業施設等への献血バス配車」「事前予約の推奨」などが特に効果的な取組みとして報告された。コロナ禍での経験が、その後の献血確保策に与えた良い影響としては、「事前予約制の普及・定着」を指摘する意見が特に多く、主成分分析の結果からも、「事前予約の普及・定着」「独自キャンペーン」は、コロナ禍後の献血者数(人口千人対)の増加に関連性の強い因子であった
4)対策の効果と評価、効果測定指標に関する研究
「献血推進2025」の各指標について、2025年度の予測値を算出し、目標値達成見込みをスコア化したところ、若年層献血率は低値(18~32点)であったが、献血推進協力企業・団体の数、複数回献血者数、ラブラッド登録数は、コロナ禍にもかかわらず、目標値に近い値(84~96点)を示し、日赤による献血者数確保の対策が大変効果的であったと考えられた
1.免疫グロブリン製剤の使用実態と需要予測
R2年度には2012~18年度のNDBデータを用い2025年までの免疫グロブリン製剤と原料血漿の必要量の将来予測を行った。R5年度は、2022年4月に申請し、2023年7月に提供された2012~21年度(10年間)のNDBデータを解析し、将来予測の検証およびアップデートを行った。
免疫グロブリン製剤ののべ処方本数は、2012~19年度までは増加傾向であったが、2020年度に減少に転じた、処方実患者数は川崎病が最も多かったが、2020年度に大幅に減少した。のべ処方本数、患者一人当たりの年間のべ処方本数は、慢性炎症性脱髄性多発根神経炎・多層性運動ニューロパチーが最も多かった。原料血漿1ℓあたり免疫グロブリン2.5gが2.0本(収率2.0本/ℓ)と仮定した場合、2012~21年度(全期間)をもとにした必要原料血漿量の将来予測量では、R2年度研究よりやや少なく、2025年度 91.8-107.4万ℓ、2028年度 85.2-99.7万ℓと算出され、コロナ禍の減少が反映された結果となった。
2.献血の需要と供給の将来推計
R2年度研究において献血者数の将来予測を行い、2025年予測献血者数は440~444万人、予測血液製剤需要は献血者換算477~505万人分であることを示し、「献血推進2025」の目標献血率策定時の参照資料となった。コロナ禍により、献血者の行動や血液製剤の需要への影響が考えられるため、献血本数の供給(R4年度研究)と需要(今年度研究)の再予測を試みた。予測献血者数は2025年449万人、2028年414万人、需要予測値は2025年469~502万人、2028年443~474万人であり、2025年度予測値はR2年度研究の結果と大きくは変わらず、需要推計値を基に算出された「献血推進2025」目標値の変更は不要と考えられた。
3.200ml献血由来の血液製剤の使用実態
2015~21年度(7年間)のNDBデータを解析し200ml献血由来の血液製剤の使用実態について検討したところ、赤血球製剤の70%以上は70歳以上で使用され、血漿製剤の60%以上が10歳未満で使用されていた。また、処方要因別にみると、赤血球製剤では、手術(32%)、血液疾患(17%)、外傷(13%)の順に多く、血漿製剤では、手術(58%)、出産関係(10%)、血液疾患(7%)の順に多く使用されていた
2)若年者の献血推進の方策と教育資材の開発とpilot地区を対象としたモデル事業の実施
R3年度に開発した医療系大学生向け献血推進教育のための教育資材(動画コンテンツ)について、国立大学医学科学生(101人)の視聴後の意見を集計し、ポジティブな感想やブラッシュアップに有用な具体的な改善アイデアが寄せられた
3)ポストコロナにおける効果的な献血確保策の先進事例調査及び提言
全血液センター(N=47)において献血確保のための活動に従事する担当者を対象とした献血者確保に寄与する効果的な取組WEBアンケート調査を企画・実施した(回答数31、率66%)。2020年当時、パンデミックによって社会的にきわめて困難な状況であったにもかかわらず、94%(29/31)の血液センターでは、献血率をパンデミック前の水準以上に維持していた。「テレビ・ラジオでの呼びかけ」「献血推進のための独自のキャンペーンの実施」「企業等を対象とした取組み」「採血所の収容人数を制限」「商業施設等への献血バス配車」「事前予約の推奨」などが特に効果的な取組みとして報告された。コロナ禍での経験が、その後の献血確保策に与えた良い影響としては、「事前予約制の普及・定着」を指摘する意見が特に多く、主成分分析の結果からも、「事前予約の普及・定着」「独自キャンペーン」は、コロナ禍後の献血者数(人口千人対)の増加に関連性の強い因子であった
4)対策の効果と評価、効果測定指標に関する研究
「献血推進2025」の各指標について、2025年度の予測値を算出し、目標値達成見込みをスコア化したところ、若年層献血率は低値(18~32点)であったが、献血推進協力企業・団体の数、複数回献血者数、ラブラッド登録数は、コロナ禍にもかかわらず、目標値に近い値(84~96点)を示し、日赤による献血者数確保の対策が大変効果的であったと考えられた
結論
上記、得られた知見は研究目的に適う
公開日・更新日
公開日
2024-08-05
更新日
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