危険ドラッグと関連代謝物の有害作用評価と乱用実態把握に関する研究

文献情報

文献番号
202324003A
報告書区分
総括
研究課題名
危険ドラッグと関連代謝物の有害作用評価と乱用実態把握に関する研究
課題番号
21KC1003
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
舩田 正彦(湘南医療大学 薬学部)
研究分担者(所属機関)
  • 栗原 正明(湘南医療大学 薬学部)
  • 浅沼 幹人(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科脳神経機構学分野)
  • 北市 清幸(岐阜薬科大学 医療薬剤学大講座 薬物動態学研究室)
  • 嶋根 卓也(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 薬物依存研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
2,970,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
危険ドラッグの検出および有害作用評価に関する研究を実施した。オピオイド化合物について、行動薬理学的特性および細胞毒性とオピオイドµ受容体作用強度の相関性に関する検討を行った。また、化学計算によるインシリコ評価法を用いてtetrahydrocannabinol(THC)類縁体、HHC誘導体のカンナビノイドCB1受容体活性予測を行った。同様に、危険ドラッグの検出手法を明確にする目的で、フェンタニル類似化合物の代謝物の検出手法確立に関する基盤研究を行なった。さらに、新規乱用薬物の研究および評価の際の基礎資料を提供する目的で、10代の大麻使用少年を対象に大麻ベイプを含む大麻の使用実態に関する疫学調査を実施した。
研究方法
ニタゼン系化合物のオピオイド受容体作用の解析、運動活性に対する影響および精神依存性について検討した。カチノン系化合物の神経毒性を評価するため、ドパミントランスポーター (DAT)をターゲットとする簡易機能評価キットの作製を試みた。コンピュータシミュレーションによる危険ドラッグの作用強度予測に関する研究としては、活性既知のTHC類縁体を用いてQSAR(定量的構造活性相関)解析を行い、作成した確度の高いQSAR式を用いて活性が未知のHHC類縁体の活性予測を行った。代謝物の検出に関する研究では、ヒト肝ミクロソームを用いて、フェンタニル類似体であるbenzoylfentanyl (BZF) のin vitro代謝挙動の解明を試みた。ヒト肝ミクロソームにBZFを添加し、経時的に採取したサンプルをLC-MS/MSおよびLCMS-IT-TOFにて解析し、代謝物の同定を行った。疫学調査:10代の大麻使用少年を対象に大麻ベイプを含む大麻の使用実態および危険ドラッグを含む大麻以外の違法薬物の使用実態を行った。
結果と考察
ニタゼン系オピオイド化合物butonitazeneの投与によって、強力な運動促進作用が発現し、中枢興奮作用を有することが明らかになった。また、conditioned place preference(CPP)法の解析から精神依存形成能を有することが明らかになった。同様に、オピオイドµ受容体発現細胞を利用して機能解析を行ったところ、µ受容体を介して薬理作用が発現することが明らかになった。行動解析データとµ受容体作用強度に良好な相関性があった。オピオイド化合物について、µ受容体発現細胞による薬理学的実験、動物実験では運動活性の評価およびCPP法を併用することで迅速かつ客観的な依存性予測が可能になると考えられる。同様に、THC誘導体について、QSAR解析によりCB1受容体を標的にした活性予測を実施し、良好なQSAR式(R2= 0.979)を用いて、HHC類縁体の活性予測を行った。化合物6個のマトリックスを完成し、HHC誘導体の包括的な活性予測が可能であった。また、マウス線条体の粗膜分画にDAtracerを反応させ、クリック反応による蛍光標識を行ったところ、DATへの結合と考えられる蛍光シグナルが確認できた。この蛍光シグナルは、フェネチルアミン系の危険ドラッグにより抑制されることから、DATへの競合拮抗作用を評価できると考えられる。粗膜分画標品を用いたクリックケミストリーは細胞培養を要さない薬理作用評価法として有用である。さらに、ヒト肝ミクロソームを用いて、BZFのin vitro代謝挙動の解明を試みた。BZF摂取証明のためのバイオマーカーとしては、親化合物とnor代謝物が利用可能であることが示唆された。危険ドラッグの代謝挙動の推定において、HLMs培養細胞による解析は有用であることが示唆された。疫学調査:調査対象の少年において、過去1年以内の大麻ベイプの使用率は、全体の85%であった。大麻ベイプ使用者は全員が乾燥大麻も併用していた。一方、危険ドラッグを併用していたのは11.8%にとどまった。大麻ベイプを使用する少年は、使用しない少年に比べて、薬物関連問題の重症度(DAST-20スコア)が高く、大麻使用日数が多く(ベイプ群5.0日、対照群0.3日)、過去1年以内にビンジ飲酒を経験している割合が高い傾向がみられた。
結論
本研究で確認された動物実験と細胞による総合的な有害作用評価システムは、オピオイド化合物並びに合成カンナビノイドの迅速規制のために貢献できる解析手法であると考えられる。また、コンピュータシミュレーションによる解析を併用することにより、危険ドラッグの有害作用の推測が可能となり、適切な包括指定対象範囲を設定することが可能であると考えられる。培養細胞を利用したフェンタニル類似化合物の代謝物検出ならびに細胞毒性の検出法の妥当性が示された。実態調査については、危険ドラッグに加え、大麻および濃縮製品についても継続して乱用状況を把握していく必要がある。

公開日・更新日

公開日
2024-06-19
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2024-06-19
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202324003B
報告書区分
総合
研究課題名
危険ドラッグと関連代謝物の有害作用評価と乱用実態把握に関する研究
課題番号
21KC1003
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
舩田 正彦(湘南医療大学 薬学部)
研究分担者(所属機関)
  • 栗原 正明(湘南医療大学 薬学部)
  • 浅沼 幹人(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科脳神経機構学分野)
  • 北市 清幸(岐阜薬科大学 医療薬剤学大講座 薬物動態学研究室)
  • 嶋根 卓也(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 薬物依存研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
危険ドラッグの検出および有害作用評価に関する研究を実施した。オピオイド化合物について、行動薬理学的特性および細胞毒性とオピオイドµ受容体作用強度の相関性に関する検討を行った。また、化学計算によるインシリコ評価法を用いてtetrahydrocannabinol(THC)類縁体のカンナビノイドCB1受容体活性予測を行った。同様に、危険ドラッグの検出手法を明確にする目的で、フェンタニル類似化合物の代謝物の検出手法確立に関する基盤研究を行なった。さらに、新規乱用薬物の研究および評価の際の基礎資料を提供する目的で、10代の大麻使用少年を対象に大麻ベイプを含む大麻の使用実態に関する疫学調査を実施した。
研究方法
新規オピオイド化合物のオピオイド受容体活性、運動活性に対する影響および精神依存性について検討した。カチノン系化合物の神経毒性を評価するため、ドパミントランスポーター (DAT)をターゲットとする簡易機能評価キットの作製を試みた。コンピュータシミュレーションによる危険ドラッグの作用強度予測に関する研究としては、活性既知のTHC類縁体を用いてQSAR(定量的構造活性相関)解析を行い、合成カンナビノイドの活性予測を行った。代謝物の検出に関する研究では、ヒト肝ミクロソームを用いて、フェンタニル類似化合物のin vitro代謝挙動の解明を試みた。ヒト肝ミクロソームに薬物を添加し、経時的に採取したサンプルをLC-MS/MSおよびLCMS-IT-TOFにて解析し、代謝物の同定を行った。疫学調査:10代の大麻使用少年を対象に大麻ベイプを含む大麻の使用実態および危険ドラッグを含む大麻以外の違法薬物の使用実態を行った。
結果と考察
危険ドラッグとして流通しているオピオイド化合物(12種類のフェンタニル類縁化合物、5種類のニタゼン系オピオイド化合物)について解析を行い、中枢興奮作用を有することが明らかになった。また、conditioned place preference(CPP)法の解析から精神依存形成能を有することが明らかになった。同様に、オピオイドµ受容体発現細胞を利用して機能解析を行ったところ、オピオイド化合物による中枢興奮作用および報酬効果とµ受容体活性強度において有意な相関性が確認された。オピオイド化合物による中枢興奮作用および報酬効果はµ受容体活性化強度の解析から予測できると考えられる。オピオイド化合物について、µ受容体発現細胞による薬理学的実験、動物実験では運動活性の評価およびCPP法を併用することで迅速かつ客観的な依存性予測が可能になると考えられる。同様に、活性既知のTHC誘導体について、QSAR解析によりCB1受容体を標的にした活性予測を実施し、良好なQSAR式を用いて、新規THC誘導体およびHHC類縁体の活性予測を行った。新規THC誘導体およびHHC誘導体の包括的な活性予測が可能であった。また、培養細胞およびマウス線条体の粗膜分画にDAtracerを反応させ、クリック反応による蛍光標識を行ったところ、DATへの結合と考えられる蛍光シグナルが確認できた。本法は、カチノン系化合物のDATへの競合拮抗作用を評価できると考えられる。さらに、ヒト肝ミクロソームを用いて、フェンタニル類似化合物のin vitro代謝挙動を検討し、摂取証明のためのバイオマーカーの候補を見出した。危険ドラッグの代謝挙動の推定において、HLMs培養細胞による解析は有用であることが示唆された。疫学調査:調査対象の少年において、過去1年以内の大麻ベイプの使用率は、全体の85%であった。大麻ベイプ使用者は全員が乾燥大麻も併用していた。一方、危険ドラッグを併用していたのは11.8%にとどまった。大麻ベイプを使用する少年は、大麻使用日数が多く、薬物関連問題の重症度が高かった。また、過去1年以内にビンジ飲酒を経験している割合が高い傾向がみられた。
結論
本研究で確認された動物実験と細胞による総合的な有害作用評価システムは、オピオイド化合物並びに合成カンナビノイドの迅速規制のために貢献できる解析手法であると考えられる。また、コンピュータシミュレーションによる解析を併用することにより、危険ドラッグの有害作用の推測が可能となり、適切な包括指定対象範囲を設定することが可能であると考えられる。カチノン系化合物の新規の検出手法およびフェンタニル類似化合物の代謝物検出手法が確立され、摂取証明となるマーカーが同定されたことから薬物規制行政への貢献が期待できる。実態調査については、危険ドラッグに加え、大麻および濃縮製品についても継続して乱用状況を把握していく必要がある。

公開日・更新日

公開日
2024-06-19
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-06-19
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202324003C

収支報告書

文献番号
202324003Z