有機酸代謝異常症(メチルマロン酸血症・プロピオン酸血症)、尿素サイクル異常症(CPS1,OTC欠損症)、肝型糖原病の新規治療法の確立と標準化

文献情報

文献番号
200936097A
報告書区分
総括
研究課題名
有機酸代謝異常症(メチルマロン酸血症・プロピオン酸血症)、尿素サイクル異常症(CPS1,OTC欠損症)、肝型糖原病の新規治療法の確立と標準化
課題番号
H21-難治・一般-042
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
堀川 玲子(国立成育医療センター 第一専門診療部 内分泌代謝科)
研究分担者(所属機関)
  • 笠原 群生(国立成育医療センター 第二専門診療部 移植外科)
  • 重松 陽介(福井大学 医学部 )
  • 大浦 敏博(東北大学大学院 医学系研究科 仙台市立病院 小児科)
  • 依藤 亨(京都大学 医学研究科 発達小児科学)
  • 中村 公俊(熊本大学 医学部付属病院 小児科)
  • 齋藤 昭彦(国立成育医療センター 第一専門診療部 感染症科)
  • 伊藤 秀一(国立成育医療センター 第一専門診療部 腎臓科)
  • 梅澤 明弘 (国立成育医療センター研究所 生殖医療研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、内科的治療法に限界のある先天代謝異常症において、新規外科的治療法を確立し、身体的・神経学的・および生命予後の改善を図ることを目的とする。

研究方法
当該疾患について生体肝移植施行例実態調査を行い、比較対象として同疾患患者の実態把握を行った。疫学指針に則った調査票を作成し、当該疾患の症例数、発症時期、発症年齢、診断方法、重症度、内科的治療内容、栄養摂取の評価、合併症の有無、予後の判定方法、食事療法を調査した。生体肝移植施行例については、移植の適応基準、周術期管理の問題点、予後を調査し、その実態を把握した。調査票を解析、予後検討から生体肝移植治療の妥当性を検討した。また、生体肝移植治療に対する医療者の意識調査を行った。
結果と考察
全国疫学調査にて本邦における研究対象疾患の有病者概数(診断確定例数)は、有機酸血症196例、尿素サイクル異常症240例、肝型糖原病164例であった。二次調査(個別実態調査)にて、有機酸血症111例、尿素サイクル異常症134例、肝型糖原病130例の診療実態が把握された。内科的治療として、本邦未承認薬であるフェニル酪酸、シトルリンの有効性が示された。生体肝移植施行例では、代謝異常の場が肝臓に限局される尿素サイクル異常症、肝型糖原病において疾患治癒が可能であり、予後は著しく改善されていた。有機酸血症では、QOLは明らかに改善されていたが、髄液中のMMA濃度などの改善は見られず、神経学的予後は注意深く観察する必要があると思われた。代謝異常が肝臓に限局しない疾患では、移植後の内科的治療の在り方を検討する必要があり、晩期合併症の完全な予防が困難であることから、疾患管理上の問題と共に、移植前にこれらを患者/家族に正確に伝える必要性が示された。新規外科的治療法の有効性,問題点が明らかとなり、適切な治療選択による予後改善がもたらされることは、医療福祉においても,医療経済上も有益であり、社会的貢献は大きい。先天代謝異常症の生体肝移植治療の多数例がまとまった報告は国際的にも少なく、移植前後の生化学的変化や摘出肝組織の分子生物学的変化の機序検討も含め、今後検討を重ねる予定である。
結論
先天代謝異常症の生体肝移植について実態を調査し、現行の内科的治療法との比較を行い、その有用性と問題点が明らかとなった。今後、新規治療として適応に関する提言をまとめ、診療の均てん化を図っていく。

公開日・更新日

公開日
2010-05-27
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200936097C

成果

専門的・学術的観点からの成果
全国疫学調査にて本邦における研究対象疾患の有病者数が明らかとなり、個別実態調査により各疾患の病型の実態を把握することができた。これらにより各診療施設における診断可能な時期、特徴的な臨床症状、治療法の選択、予後が明らかになった。生体肝移植実態調査では国内移植例の約80%が網羅され、治療選択の妥当性が検証され今後の治療指針作成に資するデータが得られた。生体試料のバンク化は順調に進行しており、今後も細胞バンクの体制を推進していく。
臨床的観点からの成果
個別実態調査により、当該疾患の内科的治療として本邦未承認薬であるフェニル酪酸、シトルリンの有効性が示された。生体肝移植では移植医療のメリットと問題点が明らかにされた。すなわち肝臓が代謝の主たる臓器である場合は治癒が見込めること、一方全身性疾患ではQOLは著しく改善するが疾患の治癒ではなく、多臓器障害の進行は予防できない可能性が明らかとなった。
ガイドライン等の開発
第51回日本先天代謝異常学会において、「尿素サイクル異常症、有機酸代謝異常症、肝型糖原病における肝移植治療指針の作成」にて暫定的提言を発表した。
その他行政的観点からの成果
難病を患う患者にとって新規外科的治療法の有効性、問題点が明らかとなり、適切な治療選択による予後改善がもたらされることは医療福祉、医療経済上有益である。
その他のインパクト
なし

発表件数

原著論文(和文)
6件
原著論文(英文等)
27件
その他論文(和文)
13件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
9件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
-