文献情報
文献番号
202323048A
報告書区分
総括
研究課題名
飲料水中の有機リン化合物の健康影響評価に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22KA3004
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
徳村 雅弘(静岡県公立大学法人 静岡県立大学 食品栄養科学部)
研究分担者(所属機関)
- 王 斉(ワン チー)(労働安全衛生総合研究所 生体防御評価研究室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
2,301,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
有機リン化合物はプラスチックの難燃剤や可塑剤として使用され,室内空気やハウスダストを介した曝露が主要とされている。一方,近年,我が国においてウォーターサーバーを設置し常飲する家庭が急増しているが,海外の事例では,その水中から高濃度の有機リン化合物が検出されたことが報告されている。
飲料水は調理過程にて加熱されることがあり,また,COVID-19の影響から,紫外線照射などの化学反応を伴う浄水器も普及し始めている。有機リン化合物は,加熱や光照射により置換基の脱離など,非意図的変化体を生成し,毒性が向上する場合もある。
本研究では,飲料水に含まれる有機リン化合物の分析方法の精緻化および汚染実態調査を行う。また,非意図的変化体についても測定・毒性試験(アセチルコリンエステラーゼ阻害能評価)を行う。以上により,多様化する飲料水中の有機リン化合物に対し,優先的に取り組みを進めるべき物質や広く事業者がリスク低減に取り組めるような提案を行うことを目的とする。
飲料水は調理過程にて加熱されることがあり,また,COVID-19の影響から,紫外線照射などの化学反応を伴う浄水器も普及し始めている。有機リン化合物は,加熱や光照射により置換基の脱離など,非意図的変化体を生成し,毒性が向上する場合もある。
本研究では,飲料水に含まれる有機リン化合物の分析方法の精緻化および汚染実態調査を行う。また,非意図的変化体についても測定・毒性試験(アセチルコリンエステラーゼ阻害能評価)を行う。以上により,多様化する飲料水中の有機リン化合物に対し,優先的に取り組みを進めるべき物質や広く事業者がリスク低減に取り組めるような提案を行うことを目的とする。
研究方法
有機リン化合物の汚染実態調査:飲料水として、水道水、ウォーターサーバーの水、浄水器により浄水した水、ボトルドウォーターを対象とする。液体クロマトグラフタンデム質量分析計(LC-MS/MS)を用いて、飲料水中の有機リン化合物の一斉分析法を開発し、IUPACの国際ハーモナイズドガイドラインを参考に分析法の妥当性を検証し、それを用いて飲料水中濃度の測定を行う。
非意図的変化体の汚染実態調査:既往研究にて環境水および飲料水からの検出例のある有機リン化合物の非意図的変化体として、リン酸ジエステル類およびリン酸モノエステル類を対象として、飲料水中の分析法を開発する。分析はLC-MS/MSを用いて行う。
AChE活性阻害能評価:有機リン化合物の非意図的変化体で、特に毒性の向上が懸念される神経毒性に着目し、アセチルコリンエステラーゼ(AChE)活性阻害試験を行う。一方、リガンドドッキング計算(in silico評価)によりスクリーニングすることで、AChE活性阻害試験の優先順位をつけ、効率的に試験を行う。AChE活性阻害試験はEllmanらの方法を基とした改良型Ellman法により行う。
非意図的変化体の汚染実態調査:既往研究にて環境水および飲料水からの検出例のある有機リン化合物の非意図的変化体として、リン酸ジエステル類およびリン酸モノエステル類を対象として、飲料水中の分析法を開発する。分析はLC-MS/MSを用いて行う。
AChE活性阻害能評価:有機リン化合物の非意図的変化体で、特に毒性の向上が懸念される神経毒性に着目し、アセチルコリンエステラーゼ(AChE)活性阻害試験を行う。一方、リガンドドッキング計算(in silico評価)によりスクリーニングすることで、AChE活性阻害試験の優先順位をつけ、効率的に試験を行う。AChE活性阻害試験はEllmanらの方法を基とした改良型Ellman法により行う。
結果と考察
飲料水中の有機リン系化合物の測定法を開発した。飲料水としてウォーターサーバーの水中の有機リン化合物濃度を測定した結果,7種類の有機リン化合物が検出頻度50%以上で検出され,tris(2-chloroethyl) phosphate(TCEP),triphenyl phosphine oxide(TPhPO),tris(2-chloroisopropyl) phosphate(TCPP),tris(1,3-dichloro-2-propyl) phosphate(TDCPP)の濃度が高い傾向にあった。EDIは,TCEPおよびTPhPO,TCPP,TDCPPでそれぞれ1.9および1.8,1.1,0.2 ng kg-bw−1 day−1であった。EDIから推算したHQは10−5から10−7の値となった。
ウォーターサーバーの飲料水の汚染要因としては,現時点で得られているデータにおいては,ウォーターサーバーの使用年数とウォーターサーバーの水中の有機リン化合物濃度などには統計学的な有意差はなく,有機リン化合物のオクタノール/水分配係数(Log KOW)とウォーターサーバーの水中の有機リン化合物濃度に統計学的な有意差がみられた。
ウォーターサーバーの飲料水の汚染要因としては,現時点で得られているデータにおいては,ウォーターサーバーの使用年数とウォーターサーバーの水中の有機リン化合物濃度などには統計学的な有意差はなく,有機リン化合物のオクタノール/水分配係数(Log KOW)とウォーターサーバーの水中の有機リン化合物濃度に統計学的な有意差がみられた。
結論
飲料水中の有機リン系化合物の測定法を開発した。飲料水としてウォーターサーバーの水中の有機リン化合物濃度を測定した結果,7種類の有機リン化合物が検出頻度50%以上で検出され,TCEP,TPhPO, TCPP,TDCPPの濃度が高い傾向にあった。
ウォーターサーバーの水中の有機リン化合物の汚染経路として,ウォーターサーバーのウォーターサーバーボトルと取水口の間に使用されているシリコンチューブの透過性が,ウォーターサーバーの水中の有機リン化合物濃度に関連している可能性が考えられた。
ウォーターサーバーの水中の有機リン化合物の汚染経路として,ウォーターサーバーのウォーターサーバーボトルと取水口の間に使用されているシリコンチューブの透過性が,ウォーターサーバーの水中の有機リン化合物濃度に関連している可能性が考えられた。
公開日・更新日
公開日
2024-12-26
更新日
-