食品への混入が懸念されている環境中のマイクロプラスチックの表面性状に着目した安全性研究

文献情報

文献番号
202323043A
報告書区分
総括
研究課題名
食品への混入が懸念されている環境中のマイクロプラスチックの表面性状に着目した安全性研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
21KA3006
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
辻野 博文(大阪大学 総合学術博物館)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
1,678,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 5 mm よりも小さいサイズのプラスチック微粒子であるマイクロプラスチック(microplastics : MP)は、ヒトが口にする可能性のある様々な海洋生物に加え、飲料水や食塩からも検出されており、その安全性が懸念されている。しかしながら、環境中に存在する MP は曝される環境や時間に依存して、微少化や鋭利化などの形状変化に加え、酸素原子の添加や構造の開裂などの表面性状変化を示すため、その物理的性状は非常に複雑であり、安全性研究は進んでいない。そこで本研究では(1)種々条件における MP 標準品を獲得し、存在様式データベースの構築を試みる。さらに(2)ハザード解析に加え、動態解析手法の確立することで、MP の安全性に関する科学的な情報集積を行うものである。
研究方法
これまでに実施していた表面性状に加えて、サイズの違いによる影響を確認するために、サイズの異なるポリエチレン・ポリスチレン・ポリプロピレン標準品の調整を行った。またハザード情報のさらなる追求及び動態解析基盤の確立を行った。
結果と考察
本年度は、表面性状に加えて、サイズの異なるポリエチレン・ポリスチレン・ポリプロピレン標準品を獲得した。また、ハザード情報として、表面性状、サイズの違いによる細胞障害性情報を獲得した。加えて、細胞障害性発原因を追求する目的でアネキシンV/PIを用いたフローサイトメトリーを実施した。また、動態解析についてナイルレッドを用いた、細胞への取り込み評価に加えて、サイズや表面性状を反映したより詳細な動態解析を可能とするため、動態解析用の蛍光ナノプラスチックの基盤を構築した。加えて、プロテインコロナやベクター効果に関する検討を実施した。
結論
これまでの検討により、種類、サイズ、表面性状の異なる多彩なプラスチックサンプルの作製を達成した。
また、ハザード検討として、サイズや表面性状が強く細胞障害性と関連することを見出し、その作用機序の一部を明らかとした。さらに細胞障害性に強く関連するサイズや表面性状を保持したまま、動態研究を可能とする蛍光サンプルの作製に加え、動態・ハザードに強く関与するプロテインコロナ形成の可能性を見出した。加えて、表面性状の変化がベクター効果が変化する可能性を示し、粒子自身の影響に加えて、吸着した低分子などによる副次的な影響にも表面性状変化が重要であることを示した。
これまでに示した結果の一部は論文発表し、広く結果を公表している。加えて、今後得られた知見を加えて、未発表結果も順次発表を予定している。

公開日・更新日

公開日
2024-10-30
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202323043B
報告書区分
総合
研究課題名
食品への混入が懸念されている環境中のマイクロプラスチックの表面性状に着目した安全性研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
21KA3006
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
辻野 博文(大阪大学 総合学術博物館)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 5 mm よりも小さいサイズのプラスチック微粒子であるマイクロプラスチック(microplastics : MP)は、ヒトが口にする可能性のある様々な海洋生物に加え、飲料水や食塩からも検出されており、その安全性が懸念されている。しかしながら、環境中に存在する MP は曝される環境や時間に依存して、微少化や鋭利化などの形状変化に加え、酸素原子の添加や構造の開裂などの表面性状変化を示すため、その物理的性状は非常に複雑であり、安全性研究は進んでいない。そこで本研究では(1)種々条件における MP 標準品を獲得し、存在様式データベースの構築を試みる。さらに(2)ハザード解析に加え、動態解析手法の確立することで、MP の安全性に関する科学的な情報集積を行うものである。
研究方法
(1)MP標準品サンプル獲得・データベース構築、について、様々な表面性状、サイズ、素材のプラスチック粒子の獲得を試みた。また、種々物性情報の取得を行なった。
 また、(2)ハザード解析・動態解析に関して、獲得した種々のプラスチック粒子のハザード情報として細胞障害性情報の取得を試みた。加えて障害性発現原因の追及と動態解析基盤の構築を行なった。
結果と考察
様々な表面性状のポリエチレン、ポリスチレンマイクロプラスチック粒子の作製に成功した。また、これらは環境中から獲得したプラスチックサンプルの表面性状と非常に類似していることが確認された。また、より小さなサイズであるナノプラスチック粒子に関してもポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン素材のものを作製した。
ハザード情報として様々なポリエチレン粒子に対して細胞障害性の測定を実施したところ、表面への酸素原子の添加量に比例して障害性が高くなること、より小さなサイズのもので障害性が高くなることが確認された。加えて、障害性発現原因の追及と動態解析基盤の構築を行なった。
結論
これまでの検討により、種類、サイズ、表面性状の異なる多彩なプラスチックサンプルの作製を達成した。
また、ハザード検討として、サイズや表面性状が強く細胞障害性と関連することを見出し、その作用機序の一部を明らかとした。さらに細胞障害性に強く関連するサイズや表面性状を保持したまま、動態研究を可能とする蛍光サンプルの作製に加え、動態・ハザードに強く関与するプロテインコロナ形成の可能性を見出した。加えて、表面性状の変化がベクター効果が変化する可能性を示し、粒子自身の影響に加えて、吸着した低分子などによる副次的な影響にも表面性状変化が重要であることを示した。
これまでに示した結果の一部は論文発表し、広く結果を公表している。加えて、今後得られた知見を加えて、未発表結果も順次発表を予定している。

公開日・更新日

公開日
2024-10-30
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202323043C

成果

専門的・学術的観点からの成果
表面性状やサイズ、素材が均質なマイクロプラスチックサンプルを作製し、環境中に存在するものと比較した。実際に環境中に存在しうるサンプルを獲得し、特性の違いによる細胞障害性等の影響を測定した。成果はMicroplasticsやEcotoxicology and environmental safetyなどの雑誌に掲載され、国内外から大きな反響があった。
臨床的観点からの成果
実際に環境中に存在し得るマイクロプラスチックについて、表面性状などの違いがハザードの違いと関連していることを見出した。
ガイドライン等の開発
特記事項無し
その他行政的観点からの成果
特記事項無し
その他のインパクト
上記研究結果を日本薬学会第143年会のシンポジウム「マイクロ・ナノプラスチックのヒト健康影響の解明にむけて」にて広く発表し、議論した。

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
2件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
10件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
日本薬学会第143年会のシンポジウム「マイクロ・ナノプラスチックのヒト健康影響の解明にむけて」にて広く発表し、議論した。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Yudai Ikuno, Hirofumi Tsujino, et al
Impact of Degradation of Polyethylene Particles on Their Cytotoxicity
Microplastics , 2 (2) , 192-201  (2023)
10.3390/microplastics2020015
原著論文2
Yasuo Tsutsumi, Hirofumi Tsujino
マイクロ・ナノプラスチックのヒト健康影響の解明に向けて
YAKUGAKU ZASSHI , 144 (2) , 163-164  (2024)
10.1248/yakushi.23-00152-F
原著論文3
Hirofumi Tsujino, Yudai Ikuno, et al
環境中の表面性状を模倣した劣化マイクロプラスチックの作製
YAKUGAKU ZASSHI , 144 (2) , 171-175  (2024)
10.1248/yakushi.23-00152-2
原著論文4
Yuya Haga, Sota Manabe, Hirofumi Tsujino, et al
劣化したマイクロプラスチックが示す細胞毒性機序の解明
YAKUGAKU ZASSHI , 144 (2) , 177-181  (2024)
10.1248/yakushi.23-00152-3
原著論文5
Yudai Ikuno, Hirofumi Tsujino, et al
Polyethylene, whose surface has been modified by UV irradiation, induces cytotoxicity: A comparison with microplastics found in beaches.
Ecotoxicology and environmental safety , 277 , 116346-116346  (2024)
10.1016/j.ecoenv.2024.116346

公開日・更新日

公開日
2025-05-26
更新日
-

収支報告書

文献番号
202323043Z