血球貪食症候群の病態・診療研究

文献情報

文献番号
200936090A
報告書区分
総括
研究課題名
血球貪食症候群の病態・診療研究
課題番号
H21-難治・一般-035
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
安友 康二(徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 石井 榮一(愛媛大学大学院)
  • 藤本 純一郎(国立成育医療センター研究所)
  • 安川 正貴(愛媛大学大学院)
  • 河 敬世(大阪府立母子保健総合医療センター)
  • 金兼 弘和(富山大学医学部)
  • 大賀 正一(九州大学病院総合周産期母子医療センター)
  • 北村 明子(徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
血球貪食症候群(HPS)は原発性と二次性に大別され、多様な原因によって発症する疾患群である。原発性のHPSは家族性HPS(FHL)と称され、これまで4種類の原因遺伝子が報告されている。しかし、日本のFHL症例の40%程度は未だ原因遺伝子が同定されていない。本研究では、HPSの病態解明と実態把握を目指して、以下の項目を研究目的とした。(1) FHLの原因遺伝子を見出す。(2) FHLの新規診断法を開発する。(3) HPSの診断・治療指針を作成する。
研究方法
(1) これまでの治療指針、診断指針について改訂点を検討する。予後についても検討する。(2) FHL検体の収集し全ゲノム解析を実施する。(3) Munc18-2遺伝子変異を探索する。(4) Munc13-4に対する単クローン抗体を樹立する。
結果と考察
(1) 日本小児白血病・リンパ腫グループと連携をしてHPSの実態把握を行い、新たな診断フローチャート作成した。診断フローチャートについては、本研究班で独自に開設したホームページ(http://hlh-fhl.basic.med.tokushima-u.ac.jp/index.html)に掲載し誰でもがアクセスできる環境を構築した。(2) 診断基準と治療基準をこれまでの症例を見直して改訂点を抽出した。(3) 日本におけるHPS 症例はデータセンターに登録され HLH-2004治療が行われている。2009年12月末までに52例が登録された。移植前の死亡は37例(18%)で HLH-94 の63例(27%)を有意に上回った。しかし移植後の予後に差はなかった。(4) 血族婚を有する1家系(FHL-102)を対象に、Illumina 370 quadを用いて全ゲノムSNP遺伝子型タイピングを行い、有意なRegional LOD 値を示す3つの領域を候補領域として同定することに成功した。2例のMUNC18-2遺伝子異常(FHL5)を同定することに成功した。(5) フローサイトメーターで用いることのできるMunc13-4に対する抗体の樹立に成功した。
結論
(1) HPS診療の実態を把握し今後の診療に生かす体制を構築することができた。(2) HPSの診断・治療指針を改訂した。(3) Munc18-2の変異を持つ日本人患者を同定することに成功した。(4) FHLの新しい原因遺伝子候補領域の同定に成功した。(5) Munc13-4の簡易診断が可能な単クローン抗体の樹立に成功した。

公開日・更新日

公開日
2010-05-26
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200936090C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本年度の研究から家族性血球貪食症候群の原因遺伝子が存在する新たな候補領域を見出すことに成功した。本候補領域は血族家系の症例を中心とした連鎖解析を実施することによって見出した。本候補領域に存在する遺伝子を見出すことによって、血球貪食症候群の新たな診断・治療方法の開発に結びつくことが期待でき、その学術的価値は高いと考えられる。
臨床的観点からの成果
本年度の研究から、フローサイトメーターを用いてMunc13-4のタンパク発現を検出できる単クローン抗体を樹立することに成功した。この抗体を用いることによって、簡便な診断法の開発が期待でき、血球貪食症候群の診断に大きく貢献できると思われる。新生児期発症の血球貪食症候群の臨床的特徴についても検討し、幼児期発症とはことなる診断方法を用いることが重要である可能性が示唆された。
ガイドライン等の開発
血球貪食症候群の診断および治療指針を改定してその案を作成した。特に、新生児期発症の血球貪食症候群の診断および骨髄非破壊処置法を用いた移植術の可能性について言及した。その臨床的有用性については今後の研究で明らかにしていく必要がある。
その他行政的観点からの成果
血球貪食症候群の治療後の予後についても検討を実施した。治療予後については一年間の研究であるために未だ結論は出ていないが、今後の研究を重ねることによってその研究は臨床・行政面での指標になるような成果になると期待できる。
その他のインパクト
日本小児白血病リンパ腫グループと連携を構築して、協力して血球貪食症候群の臨床・病態研究を実施することになった。この連携の構築は、日本国内から幅広く情報を収集して研究成果をあげるために重要であると期待できる。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
12件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
10件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
-