文献情報
文献番号
200936086A
報告書区分
総括
研究課題名
中性脂肪蓄積心筋血管症の発見 -その疾患概念の確立、診断法、治療法の開発
研究課題名(英字)
-
課題番号
H21-難治・一般-031
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
平野 賢一(大阪大学 大学院医学系研究科 内科学講座 循環器内科学)
研究分担者(所属機関)
- 植田 初江(国立循環器病研究センター 臨床病理科)
- 内藤 博昭(国立循環器病研究センター 放射線診療部)
- 宮田 敏行(国立循環器病研究センター研究所 病因部)
- 瀬藤 光利(浜松医科大学 分子解剖学)
- 財満 信宏(浜松医科大学 分子解剖学)
- 千葉 仁志(北海道大学・大学院保健科学研究院)
- 戸田 達史(神戸大学神経内科・分子脳科学)
- 福嶌 教偉(大阪大学 大学院医学系研究科薬理学分子医薬学)
- 隅 寿恵(大阪大学 大学院医学系研究科情報統合医学講座神経内科学)
- 笹栗 靖之(産業医科大学 第二病理)
- 加藤 誠也(琉球大学大学院医学研究科 細胞病理学講座)
- 小林 邦久(九州大学病院 内分泌代謝・糖尿病内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
中性脂肪蓄積心筋血管症 (Triglyceride deposit cardiomyovasculopathy, TGCV) は、2008年、我が国の心臓移植待機症例から研究班長らが見出した新規疾患単位(N Engl J Med. 359: 2396-2398, 2008)であり、心筋、冠状動脈に中性脂肪が蓄積することによって、重症心疾患をきたす。心臓外症状として骨格筋ミオパチーを来す症例もある。本症においては、正常心ではエネルギー源であるべき長鎖脂肪酸が利用できずに中性脂肪として蓄積され、臓器障害が生じる、いわば“心臓の肥満 (Obesity of the Heart)“である。
本研究は、TGCVの疾患概念の確立、診断法、治療法を開発することをその目的とする。
本研究は、TGCVの疾患概念の確立、診断法、治療法を開発することをその目的とする。
研究方法
TGCV症例の探索、集積は、心臓移植の摘出心、剖検心、心筋生検サンプルから、オイルレッドO染色などの脂質染色、組織からの抽出脂質を用いたTGの生化学的定量により行った。また、原発性TGCVの原因遺伝子として明らかであるATGL欠損について、文献的に症例を探索した。
本症の特徴の一つである組織における中性脂肪の蓄積の証明は、これまで組織片から脂質抽出し生化学的に同定することでなされている。TGCV の実態把握には、簡易スクリーニング法は必須であり、病理、質量顕微鏡、放射線画像診断、血液学、脂質生化学、分子遺伝学など様々なアプローチを用いて開発を試みた。
本症の特徴の一つである組織における中性脂肪の蓄積の証明は、これまで組織片から脂質抽出し生化学的に同定することでなされている。TGCV の実態把握には、簡易スクリーニング法は必須であり、病理、質量顕微鏡、放射線画像診断、血液学、脂質生化学、分子遺伝学など様々なアプローチを用いて開発を試みた。
結果と考察
原発性TGCVの今のところ明らかな原因は、細胞内中性脂肪分解の必須酵素であるAdipose triglyceride lipase (ATGL)の遺伝子的欠損である。ATGL欠損症は、H21年度の研究班の活動により、我が国では7例、5家系、4変異の存在が明らかとなった。ATGL欠損症は、全例で心臓に中性脂肪が蓄積していた。4例はすでに心臓死している。いずれの例も死因は、心不全或いは不整脈によると思われる突然死である。2例は心臓移植を受けていた。ATGL欠損によらない二次性TGCVを進行糖尿病剖検例から見出した。症例に対して、直ちに適応できる治療法として、中鎖脂肪酸を用いた食事療法を開発して、自主研究を行った。
結論
TGCVは、心筋、冠状動脈、骨格筋などに中性脂肪が蓄積することにより、重症心不全、不整脈、虚血性心疾患、重症ミオパチーなどを来す難病である。現時点での情報を広く公開するとともに、診断基準作成、簡易診断法開発、治療法、予防法の開発に努め、1日でも早くこの難病を克服する必要がある。
公開日・更新日
公開日
2010-05-28
更新日
-