文献情報
文献番号
202323033A
報告書区分
総括
研究課題名
残留農薬規制における国際整合を推進するための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23KA1014
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
渡邉 敬浩(国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部)
研究分担者(所属機関)
- 佐藤 安志(国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構果樹茶業研究部門 茶業研究領域)
- 清家 伸康(国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 農業環境研究部門)
- 坂 真智子(株式会社エスコ)
- 飯島 和昭(財団法人残留農薬研究所 化学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
7,301,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
残留農薬規制の国際整合においては、最大残留基準値(MRL)の設定及び検査体制の構築が極めて重要である。厚生労働省は基本原則を定め残留農薬規制の国際整合を進めているが多くの課題が残されている。本研究では、国際整合をさらに進め世界に遅れることなく更新していくために、MRL設定と検査に関連する分野を横断して最新情報を収集・整理し、新たな提案や分析法開発を行うことを目的として、①後作物由来食品のMRL設定の国際整合に関する研究、②グループMRL設定対象食品群の決定方法の開発に関する研究、③茶のMRL設定の課題特定とQuEChERS法の開発と導入に関する研究、④国際標準のMRL設定に影響する評価機関等の動向調査、⑤残留農薬規制に影響する将来的な課題と各国の検討状況の調査を実施する。
研究方法
①後作物由来食品のMRL設定の国際整合:OECDやU.S. EPA等の海外機関、並びにわが国における関係省庁の農薬の後作物残留に関するガイダンス及び農薬の後作物残留実態に関する情報を入手し比較した。
②グループMRL設定対象食品群の決定方法:キウイフルーツにおける浸漬・噴霧等の基礎実験結果に基づき、5種類の球形果実を対象に「水洗前後の果実重量差」と「最終散布1日後の実残留農薬量」間の相関関係を確認した。
③茶のMRL設定の課題特定とQuEChERS法の開発と導入:生産国毎に異なる輸出向け茶種や汎用農薬の違い等を国際整合上の課題として特定した。また、貿易障壁となる可能性がある農薬を特定し分析対象に選定する等してQuEChERS法開発の基礎検討を行った。
④国際標準のMRL設定に影響する評価機関等の動向調査:JMPR報告書を入手し、一般検討事項を中心にMRL設定に影響する議論の内容並びに背景を整理した。
⑤残留農薬規制に影響する将来的な課題と各国の検討状況の調査:U.S. EPA、EFSAといった機関や豪州、カナダ等の国による残留農薬規制の動向を調査した。
②グループMRL設定対象食品群の決定方法:キウイフルーツにおける浸漬・噴霧等の基礎実験結果に基づき、5種類の球形果実を対象に「水洗前後の果実重量差」と「最終散布1日後の実残留農薬量」間の相関関係を確認した。
③茶のMRL設定の課題特定とQuEChERS法の開発と導入:生産国毎に異なる輸出向け茶種や汎用農薬の違い等を国際整合上の課題として特定した。また、貿易障壁となる可能性がある農薬を特定し分析対象に選定する等してQuEChERS法開発の基礎検討を行った。
④国際標準のMRL設定に影響する評価機関等の動向調査:JMPR報告書を入手し、一般検討事項を中心にMRL設定に影響する議論の内容並びに背景を整理した。
⑤残留農薬規制に影響する将来的な課題と各国の検討状況の調査:U.S. EPA、EFSAといった機関や豪州、カナダ等の国による残留農薬規制の動向を調査した。
結果と考察
①後作物由来食品のMRL設定の国際整合:後作作物由来食品を対象とするMRLを設定のために、OECDは、第1段階として後作物代謝試験、必要に応じて第2段階として限定した後作物残留試験、第3段階としてMRL設定のために拡大した後作物残留試験を要求することが明らかとなった。一方わが国においては、後作物由来食品のMRL設定の規定がないことが明らかとなった。
②グループMRL設定対象食品群の決定方法:農薬の残留性の評価に役立つ簡易実験手法を検討した。その結果、キウイフルーツ、ビワ、メロン、スイカ、トマトの5種類の球形果実における「水洗前後の果実重量差」と「農薬の最終散布1日後の実残留農薬量」との間に良好な相関関係を確認した。また、キウイフルーツの有毛品種と無毛品種の間で農薬の残留性を比較した。
③茶のMRL設定の課題特定とQuEChERS法の開発と導入:FAO IGG on Teaにおける報告書の解析を通じて、茶のMRL設定においては、輸出向け茶種や汎用農薬の生産国毎の違いや輸出入国間での登録農薬の違い、主要輸出国によるIT申請戦略等が国際調和上の課題として特定された。また、新規登録された16種類の農薬を投与した大規模なインカード試料の作製やこれら新規剤の中長期残留に係る網羅的な調査・解析に着手した。
④国際標準のMRL設定に影響する評価機関等の動向調査:JMPR報告書に含まれる一般的検討事項の内容を翻訳するとともに論点を明らかにした。その結果、国際短期ばく露量推定に関する議論やMRLの外挿に関する議論、水田における後作物残留に関する議論等において、今後のわが国の残留農薬規制において検討すべき課題が抽出された。
⑤残留農薬規制に影響する将来的な課題と各国の検討状況の調査:米国、EUにおける新たな残留農薬規制に関する状況として、複合ばく露評価に関する取組、グリーンディール政策に基づく農薬使用低減への取組、PFASの規制に伴う取組等が特定された。
②グループMRL設定対象食品群の決定方法:農薬の残留性の評価に役立つ簡易実験手法を検討した。その結果、キウイフルーツ、ビワ、メロン、スイカ、トマトの5種類の球形果実における「水洗前後の果実重量差」と「農薬の最終散布1日後の実残留農薬量」との間に良好な相関関係を確認した。また、キウイフルーツの有毛品種と無毛品種の間で農薬の残留性を比較した。
③茶のMRL設定の課題特定とQuEChERS法の開発と導入:FAO IGG on Teaにおける報告書の解析を通じて、茶のMRL設定においては、輸出向け茶種や汎用農薬の生産国毎の違いや輸出入国間での登録農薬の違い、主要輸出国によるIT申請戦略等が国際調和上の課題として特定された。また、新規登録された16種類の農薬を投与した大規模なインカード試料の作製やこれら新規剤の中長期残留に係る網羅的な調査・解析に着手した。
④国際標準のMRL設定に影響する評価機関等の動向調査:JMPR報告書に含まれる一般的検討事項の内容を翻訳するとともに論点を明らかにした。その結果、国際短期ばく露量推定に関する議論やMRLの外挿に関する議論、水田における後作物残留に関する議論等において、今後のわが国の残留農薬規制において検討すべき課題が抽出された。
⑤残留農薬規制に影響する将来的な課題と各国の検討状況の調査:米国、EUにおける新たな残留農薬規制に関する状況として、複合ばく露評価に関する取組、グリーンディール政策に基づく農薬使用低減への取組、PFASの規制に伴う取組等が特定された。
結論
後作物由来食品を対象としたMRL設定におけるわが国と国際社会とのギャップが特定された。グループMRL設定に資する農薬残留性を評価するための簡易手法の開発が進められた。国内外における茶を対象とするMRL設定の課題が明らかにされるとともに、当該課題を踏まえた簡易な農薬分析法(QuEChERS法)の開発に着手した。JMPR報告書の解析により、短期ばく露量推定やMRLの外挿、農薬残留物等の安全性評価のためのリスクに基づく決定木アプローチ等、今後のわが国の残留農薬規制において検討すべき課題が抽出された。また、諸外国が現在取り組んでいる残留農薬規制に関する課題が明らかとなった。
公開日・更新日
公開日
2024-08-27
更新日
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