胎児診断における難治性脳形成障害症の診断基準の作成

文献情報

文献番号
200936083A
報告書区分
総括
研究課題名
胎児診断における難治性脳形成障害症の診断基準の作成
課題番号
H21-難治・一般-028
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
山崎 麻美(独立行政法人国立病院機構 大阪医療センター 臨床研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 伊東 恭子(京都府立医科大学大学院医学研究科 分子病態病理学)
  • 宇都宮 英綱(国際医療福祉大学大学院)
  • 岡本 伸彦(地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪府立母子保健総合医療センター 遺伝診療科)
  • 加藤 光広(山形大学医学部附属病院 小児科)
  • 金村 米博(独立行政法人国立病院機構 大阪医療センター 臨床研究センター )
  • 小崎 健次郎(慶應義塾大学医学部 小児科学教室)
  • 齋藤 伸治(北海道大学病院 小児科)
  • 白根 礼造(宮城県立こども病院)
  • 坂本 博昭(大阪市立総合医療センター 小児脳神経外科)
  • 師田 信人(国立成育医療センター 脳神経外科)
  • 夫 律子(クリフム夫律子マタニティクリニック臨床胎児医学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
40,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
主任研究者らは、2005年に『胎児期水頭症診断と治療ガイドライン』を刊行した。しかしそれをさらに発展させ、予後のよい単純な脳室拡大の診断を確実なものにする為には、難治性脳形成障害症の診断基準を策定することが必須であることが明らかになってきた。そこで本研究は、胎児診断における難治性脳形成障害症の診断基準の作成及び新規治療法開発、病態解析研究を支援するデータ及び患者由来生体試料のデーターバンクの構築を目的として開始した。
研究方法
重症水頭症(1.X連鎖性遺伝性水頭症 2.その他の遺伝性水頭症 3.水頭症症候群)、全前脳胞症、脳梁欠損症、神経細胞移動異常症(神経細胞移動異常症<滑脳症、丸石様滑脳症、異所性灰白質>、大脳皮質構築障害<多小脳回症、裂脳症>、異常増殖<片側巨脳症>)ダンディウォーカー症候群、水無脳症、二分頭蓋(脳瘤)キアリ2型奇形(脊髄髄膜瘤に合併する脳形成異常症のうち難治性のもの)その他の上記に分類されない脳形成異常症を対象としている。症例登録施設から症例を登録し、閲覧・症例検討する。L1CAM 、SHH 、EN2、WNT1 、CASKなど47種類の必要な遺伝子解解析を行い、未知のものについては、CGHアレイなどを行う。患者由来生体試料(神経組織、胎盤組織、羊水など)のバンク化、iPS細胞の樹立をおこなう。3年間で200例を目標とし、2歳時の予後の調査を行い、診断に至る方法の有効性を検証し、診断基準を策定する。
結果と考察
(ア)班会議独自のサーバーを立ち上げ症例登録17施設、遺伝子解析8施設、病理解析1施設を登録し、画像解析、胎児超音波診断は、それぞれのエキスパートによって画像検討委員会を組織した。(イ)サーバーが立ちあがってから、実質4カ月で、15施設から57件が登録され、38件で、診断が明らかになった。
(ウ)患者生体試料は、検体数 DNA 15件、末梢血6件、臍帯1件、胎盤組織3件を集積し L1、DCX、 ARX、CASKについて検索を行ない、L1は、2家系で、DCXは1家系で遺伝子異常があった。
(エ)2例に病理検索を行い、また、アレイCGHの有効性も検討した。
結論
各分野でのエキスパートや症例が多く集まる病院を網羅した研究組織を創りあげることができた。本研究は難治性脳形成障害症の胎児診断における診断基準の策定、病態解明と治療技術の開発を行う為の基礎的研究の推進に貢献できる。

公開日・更新日

公開日
2010-05-24
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200936083C

成果

専門的・学術的観点からの成果
データーバンクは、今後、難治性脳形成障害症の病態解析、予防法の確立、新規治療法開発の研究に大きく貢献するものである。
臨床的観点からの成果
症例が多く集まる病院の協力を得られた結果、症例登録は順調にすすんでいる。神経小児科医、小児脳神経外科医、産科医など一線の多忙を極める臨床家が登録しやすい体制を整えた。つまり、大型サーバーにオンラインで各症例のDICOMデータをアップし、遠隔診断および議論ができるようにした。小児神経放射線医、臨床遺伝子学、小児神経病理のエキスパートがその診断の議論にくわわり、意見や読影レポートを提出でき、またそれを全体が閲覧できるシステム自体は、このような希少疾患のコンサルテーションシステムとして高く評価できる。
ガイドライン等の開発
今回胎児期水頭症診断と治療ガイドラインの改訂第2版を刊行した。このような難治性疾患において、診断至るプロセスそのものが、診断基準をさらに発展させる基礎となる。今年度の課題として、ガイドラインの英訳本を準備している。
その他行政的観点からの成果
西欧諸国では、重篤な脳形成障害があれば妊娠後期でも選択的妊娠中絶が施行されるという現状が先行し、われわれが参考にできるガイドラインもデーターベースも存在しない。臨床と基礎・臨床遺伝の研究者が、稀少疾患に対する克服対策について一堂に会して、班会議を形成するのは、貴重なことであり、この分野では国際的にも注目される成果が期待できる。
その他のインパクト
胎児診断の基準を作成することは倫理的課題を多く含んでいる。各国の宗教的政治的倫理的背景の22年10月には、international symposium of fetal neurologyを共催した。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
7件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
54件
学会発表(国際学会等)
15件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
-