「昆虫食」における大規模生産等産業化に伴う安全性確保のための研究

文献情報

文献番号
202323029A
報告書区分
総括
研究課題名
「昆虫食」における大規模生産等産業化に伴う安全性確保のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23KA1010
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
志田 静夏(齊藤 静夏)(国立医薬品食品衛生研究所 食品部)
研究分担者(所属機関)
  • 渡辺 麻衣子(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)
  • 安達 玲子(国立医薬品食品衛生研究所 生化学部)
  • 畝山 智香子(国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
12,258,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
昆虫食において懸念されるハザードとしては重金属、農薬、ダイオキシン類、微生物、マイコトキシン、アレルゲン等がある。EU等の諸外国ではこれらを対象に養殖昆虫の安全性評価が行われている。一方、我が国においてはほとんど調査が行われておらず、昆虫食の安全性に関する科学的知見は限られている。本研究では国内に流通する昆虫食の安全性について総合的に調査し、昆虫食全般のリスク管理を検討する際の基礎的データを提供することを目的とした。
研究方法
課題1 昆虫は、農産物や畜水産物とは構成成分が大きく異なるため、分析法は適用できない可能性がある。このため、昆虫を対象とした試料調製方法を検討した後、有害元素、農薬及びダイオキシン類の分析法を検討した。
課題2 国内流通昆虫食の微生物分布およびマイコトキシン汚染実態調査に向けての試験法確立のため、細菌・真菌・寄生虫・マイコトキシンの試験法である培養法、分子生物学的手法、質量分析法などについての性能評価等予備検討を実施した。
課題3 種々の昆虫食サンプルについて、加工食品の食物アレルゲン表示検証のための甲殻類アレルゲンELISAキットにおける反応性を測定し、各サンプルに含有される昆虫トロポミオシンと甲殻類トロポミオシンとの交差反応性について検討した。
課題4 海外規制機関や食品安全担当機関、国際機関等の情報を収集した。
結果と考察
課題1 マイクロ波分解/ICP-MS法を用いたカドミウム、鉛及びヒ素分析法及び加熱気化型水銀分析計を用いた総水銀分析法の昆虫食に対する適用性を検討した。また、ダイオキシン類分析法として、当所で従来から使用している分析法の昆虫食に対する適用性を検討した。各分析法の性能を評価したところ、いずれの分析法も良好な結果が得られ、実態調査のための分析法として妥当であることが示された。加えて、昆虫食を対象とした新規農薬分析法として、LC-MS/MS及びGC-MS/MSを用いた農薬一斉分析法を開発した。妥当性評価試験を行ったところ、検討化合物の約94%で妥当性評価ガイドラインの目標値を満たし、一部の農薬を除き、実態調査のための分析法として妥当と考えられた。
課題2 細菌・真菌については、昆虫食での分布程度が高い細菌および真菌種を明らかにして試験法の絞り込みを行うため、昆虫食12製品を対象として網羅的検出を行い、複数の製品で大腸菌群、Bacillus属菌およびStaphylococcus属菌の検出濃度が高く、これらをターゲットにした検出法を実施するべきであることを確認した。寄生虫については、昆虫食8製品を用いて寄生虫DNAの添加回収実験を行ってのリアルタイムPCR法の性能評価を行い、低濃度のクリプトスポリジウムまたはジアルジアDNAを昆虫食から検出できることを確認した。マイコトキシンについては、昆虫食8製品を用いてマイコトキシンの添加回収実験によって7種マイコトキシンの一斉分析法の性能評価を行い、一斉に検出可能である利点を活かし食用昆虫におけるマイコトキシンのスクリーニングには利用できると考えられた。
課題3 公定検査法として定めている甲殻類アレルゲンの定量検査法(ELISA法)を用いて、昆虫食に含まれるタンパク質の交差反応性について検討した。昆虫の種類や加工度が異なる12検体を解析に供したところ、すべての検体において甲殻類トロポミオシン特異的抗体が認識するタンパク質が含まれていることを確認した。
課題4 世界各国の食品安全担当機関やリスク評価担当機関によるここ数年の発表を収集した。また、PubMedの文献検索およびEurekAlertでのプレスリリースの監視等から、いくつかの文献をピックアップした。さらに、昆虫食の販売にあたってリスク評価機関やリスク管理機関がどのような情報を検討したのか整理した。
結論
昆虫食を対象とした有害元素、農薬、ダイオキシン類、微生物及びマイコトキシンの試験法を確立した。来年度以降は、本年度確立した分析法を用いて国内に流通する昆虫食の汚染実態調査を行う予定である。
甲殻類アレルゲンと昆虫アレルゲンは交差反応性を示すことが知られており、昆虫食の摂取により甲殻類アレルギー
患者にアレルギー症状が誘発される可能性が高い。本研究において実際に市販されている昆虫食を対象として得られる知見は、今後消費量の増加が予想される現状で、昆虫食による健康被害を防止するための行政施策につながるものである。

公開日・更新日

公開日
2024-09-24
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-09-24
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202323029Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
12,258,000円
(2)補助金確定額
12,258,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 6,217,586円
人件費・謝金 3,968,820円
旅費 335,776円
その他 1,735,818円
間接経費 0円
合計 12,258,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2024-09-24
更新日
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