文献情報
文献番号
200936079A
報告書区分
総括
研究課題名
封入体筋炎(IBM)の臨床調査および診断基準の作成に関する研究
課題番号
H21-難治・一般-024
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
青木 正志(東北大学 大学病院)
研究分担者(所属機関)
- 西野 一三(国立精神・神経センター神経研究所)
- 森まどか(吉村まどか)(国立精神・神経センター病院)
- 日下 博文(関西医科大学神経内科学)
- 樋口 逸郎(鹿児島大学医学部神経内科)
- 近藤 智善(和歌山県立医科大学神経内科)
- 内野 誠(熊本大学大学院 神経内科学分野・臨床神経学)
- 梶 龍兒(国立大学法人徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部臨床神経科学分野, 神経内科)
- 糸山 泰人(東北大学病院神経内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
14,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
封入体筋炎(以下IBM)は骨格筋に縁取り空胞と呼ばれる特徴的な組織変化を生じ炎症細胞浸潤を伴う難治性・進行性筋疾患であり、時に筋萎縮性側索硬化症(ALS)と鑑別困難な場合もある難病であり有効な治療法は無い。IBMの診断基準は1995年にGriggsらが提唱されたものが改変されて用いられているが病理学的に多発筋炎との相違が問題になる例も多い。また、欧米では高齢者の筋疾患の中で最多という報告もあるが、IBMの日本での自然歴や有病率は検討されたことがない。本研究の目的はIBMの日本語での診断基準を作成し、自然歴や有病率を明らかにする。
研究方法
国立精神神経センターの筋バンクは世界にも類を見ない数の筋病理が保管されており、後向き調査を行う場合に非常に有用である。これを元に臨床経過をさかのぼって評価することでIBMの臨床経過の特徴をつかむことができる。この後向き調査を元に欧米で用いられている診断基準を見直し、IBM診断基準を作成する。協力施設からIBM患者情報を収集し、日本人IBM患者の臨床的特徴を抽出する。
結果と考察
平成21年度に国立精神神経センターの全国からの検体情報と各協力施設の症例を検討し日本での有病率の概数を2003年時点で10万人当り1.17人と推定した。これは1990年代前半の0.25人と比較して5倍弱の増加であり日本でIBMが急増していることを裏付ける結果であり、この疾患に対する対策の重要性を明らかにした。臨床的・病理学的にIBMと確定した121例の検討では男女比は男性に1.23倍とやや多く、初発年齢は64.4±8.6歳(40-81)、初発症状は74%が大腿四頭筋の脱力による階段登りなどの障害であった。嚥下障害は23%に見られ生命予後を左右する要因の一つである。診断確定までに52.7±47.6ヶ月(4-288) かかっており、病理前診断がIBMだったものが半数程度であることから疾患の認知度を広めることも重要である。この調査を元に暫定的な日本語版の診断基準を作成した。IBMの調査票を作成し倫理委員会による検体収集を含めた調査の承認も得ている。
結論
過去10年での日本人IBMの患者数増加には戦後生れの発症数増加が寄与していると考えられる。生活習慣の欧米化も影響があるものと推測しており、疫学的にIBMの病因を推定する上でも貴重な資料となりうる。本年度は研究協力施設のみの調査であったが、正確な患者数把握には全国調査が必要である。また病態把握や将来の治療開発のためには生体サンプルの収集や自然歴の把握が必要であり戦略的・継続的な調査が必須であると考える。
公開日・更新日
公開日
2010-05-24
更新日
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