文献情報
文献番号
202323013A
報告書区分
総括
研究課題名
我が国における生物的ハザードとそのリスク要因に応じた規格基準策定のための研究
課題番号
22KA1003
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
窪田 邦宏(国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部第二室)
研究分担者(所属機関)
- 岡田 由美子(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部)
- 百瀬 愛佳(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部)
- 山崎 栄樹(国立大学法人 帯広畜産大学 畜産衛生学研究部門)
- 小関 成樹(北海道大学大学院 農学研究院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
9,413,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
食品の生物的ハザード、国内外での食品衛生の体系比較や規格基準の設定状況、国内流通食品における微生物汚染実態に関する知見の取得等を行い、それらを整理・分析することで、我が国の食品のリスク要因に応じた規格基準の在り方について国際整合性を踏まえて検討することを目的とする。
研究方法
生鮮果実を対象とした国際的な微生物規格基準に関して、Codex委員会が策定した文書の調査を行うことで、今後注視すべき食品やその微生物規格基準の必要性を検討した。海外での食肉加工食品による最近のアウトブレイク事例を調査するために米国感染症疾病予防センター(US CDC)のWebページに掲載されている「複数州にわたる食品由来アウトブレイク」のリストより過去10年間(2023~2014)に発生した食肉加工食品を原因食品とするアウトブレイクを抽出した。また浅漬け類からの食中毒菌検出のための試験法検討及び海藻類による食中毒発生状況に関する調査研究では現在微生物規格を有しない食品群において、衛生実態を管理するための微生物規格を検討する上での基礎知見の集積を図ることを目的として、国内外における海藻類を原因食品とする食中毒事例の調査報告及び海藻類における細菌汚染実態についての文献調査を行った。昨年度調査で高い汚染率を示した浅漬け類におけるリステリア・モノサイトゲネスについて、現在非加熱食肉製品等に用いられる公定法が浅漬け類においても適用可能かを、添加回収試験を行い検証した。果実類の細菌およびウイルスによる食中毒発生状況に関する研究では国内外の食中毒発生状況および果実類の汚染状況について文献調査を行った。食品における微生物汚染実態等に関する研究では欧州委員会規則「COMMISSION REGULATION (EC) No 2073/2005」に示されたカンピロバクターに関するサンプリングプランを国内へ適用するモデルケースを設定し、同モデルケールについてコーデックス委員会が示す「Principles and Guidelines for the Establishment and Application of Microbiological Criteria Related for foods (CAC/GL 21-1997)」に対する妥当性検証に必要な情報の収集・整理を行った。微生物リスク分析に関する研究ではサンプリングプラン検討ソフトウェアがサンプリングプラン策定にどのように寄与するかを日本国内における市販低温殺菌牛乳の一般生菌数データの分布を用いて、3階級のサンプリングプランの策定を検討した。
結果と考察
Codex委員会は、生鮮果実カテゴリーの28食品について規格基準を設定していること、および、これらの規格基準のすべてにおいて、CXG 21-1997に沿って設定された任意の微生物基準に従うよう規定していることがわかった。2000年以降に国内外で発生した海藻類が原因食品である集団食中毒事例は、大腸菌O7:H4に汚染された海藻サラダによる国内の1事例、ノロウイルスに汚染されたカット海苔及び青のりを原因食品とする国内と韓国の各1事例の計3事例が見られた。国内外での海藻類の細菌汚染実態調査は3例の報告が見られ、イタリアの1例において非加熱喫食用の海藻類からリステリア・モノサイトゲネスとセレウス菌が2~3 log colony forming unit (CFU)/gのレベルで検出されていた。野菜浅漬け類へのリステリア・モノサイトゲネス添加回収試験では、白菜浅漬けを用いた場合の前増菌培地からの選択分離培養における50%検出水準値 は0.744 CFU/25 g(検体量)、増菌培地からの選択分離培養におけるLOD50は1.11 CFU/25 g(検体量)であった。欧米ではサルモネラ属菌がカンタロープメロン、マンゴー、パパイヤ、ナッツ等の多様な果実類による食中毒の病因物質となっており、ノロウイルスおよびA型肝炎ウイルスは冷凍ベリー類・イチゴによる食中毒の主要な病因物質であった。食品における微生物汚染実態調査では同モデルケースにおいて妥当性検証に必要な国内情報の多くが整備されている事が明らかとなった。微生物リスク分析では必要なロット合格率等の入力情報から、必要最低限のサンプル数の推定が可能であることを確認した。
結論
非加熱食肉製品及びナチュラルチーズの公定法を用いた本菌の検出は可能であると思われた。また国内だけでなく海外における食中毒発生状況および微生物汚染状況もリアルタイムで注視していく必要があると考えられた。微生物リスク分析ではソフトウェアの感度分析機能を用いることで、種々の入力パラメータの影響を検討できることを確認した。
公開日・更新日
公開日
2024-09-11
更新日
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