食中毒原因ウイルス等の汎用性を備えた検査法と制御を目的とした失活法の開発のための研究

文献情報

文献番号
202323011A
報告書区分
総括
研究課題名
食中毒原因ウイルス等の汎用性を備えた検査法と制御を目的とした失活法の開発のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22KA1001
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
上間 匡(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部)
研究分担者(所属機関)
  • 村上 耕介(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • 岡 智一郎(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • 吉村 和久(東京都健康安全研究センター)
  • 佐藤 慎太郎(和歌山県立医科大学 薬学部)
  • 木村 博一(群馬パース大学 大学院保健科学研究科)
  • 元岡 大祐(大阪大学 微生物病研究所)
  • 遠矢 真理(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
19,050,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ノロウイルスによる食中毒被害低減には,次の2つが重要となる.
1.食中毒発生時に原因物質,原因となった食品および汚染経路の特定により,効果的な食品汚染防止策を示すこと
2.ノロウイルスによる食中毒の多くが食品取り扱い現場において従事者による食品汚染が原因と推定されることから,食品製造時の調理条件や食材の洗浄,さらに従事者の手指等や調理環境に用いる消毒剤などによる不活化条件を示すこと
しかしながら,現状では食中毒の原因と推定される食品はバラエティにとみ、検査担当者は様々な食品に対応する必要があること、さらに細菌と異なり食品中でウイルスが増殖しないため,食品からの微量のウイルスの検出そのものが非常に難しいことなどがあり、さまざまな食品に対応可能な汎用性の高い食品処理法が求められている。
また,食品の製造工程や食品取り扱いの環境において、ノロウイルス等の対策を取る必要があるが、これまでノロウイルスの実用的な培養系が存在しなかったため、直接的なノロウイルスの不活化条件が提示できないという課題があった.
本研究班では、上記の2つの課題に対して、汎用性の高い食品からのウイルス検出法の整備、および食品取り扱い現場で実施可能なウイルスの制御のための具体的なノロウイルスの不活化条件等の提示を目的とする。
研究方法
1検査法の整備 食中毒事件において、さまざまな一般食品からノロウイルス検出の実績のあるパンソルビン・トラップ法、ISO法の食品処理法の汎用性を比較した。A3T法による食品からのウイルス検出について検討した。網羅的なウイルス遺伝子検出法としてのNGSの導入に関して最適化のための検証を実施した。
2ウイルスの制御 地衛研の強力を得てin vitro増殖系に供するノロウイルス検体を入手し、腸管オルガノイドおよびiPS由来腸管上皮細胞で同等に効率よく増殖する株を選定した。加熱不活化など直接的な不活化条件など科学的データの蓄積を図る。調理従事者等の上気道飛沫中のノロウイルス実態調査を実施した。
結果と考察
1検査法の整備
・パンソルビン・トラップ法とISO法の比較を実施した.
・冷凍ベリーの処理は、ISO法がパンソルビントラップ法よりもウイルス検出成績がよかった.
・ISO法が様々な食品の処理にも汎用できる可能性を示した.
・秋田県で2019-2022年度に発生したウイルス性食中毒7事件において食品検体83検体のうち7検体からパンソルビン・トラップ法にてノロウイルスを検出した。
・2021年4月から2024年2月に東京都で発生した食中毒事例に関連した食品検体874検体について、A3T法にてウイルス検出を実施し,4検体から検出した.
・福島県衛生研究所にて実施したパンソルビントラップ法とA3T法の比較検証報告では,パンソルビントラップ法よりもA3T法がウイルス検出成績が優れていた.
・食品へのウイルス添加回収試験について、パンソルビン・トラップ法で得られた核酸抽出物をメタゲノム解析に最適化する手順を検証した.
・DNaseI処理などを実施してもウイルス遺伝子の検出感度の上昇は見られず,ISO法などの方がウイルス検出においては成績が良かった.
・食品検査についてメタゲノム解析が実施できる可能性は十分あることが示された。
・国内における2018-2023年のノロウイルスの遺伝子群、遺伝子型はGIIがGIより多く検出されていた。
・GI.2, GI.3, GI.4, GI.7が検出報告されていた。
・GII.2, GII.4, GII.6, GII.17が多く検出報告されていた。
・主要流行株はGII.4からGII.2、GII.17と変遷していたが,2022年以降はGII.4の検出数が増加傾向にあった.

2ウイルスの制御
・ノロウイルス培養系に用いる糞便検体80検体を入手した.
・オルガノイド培養系にて増殖性の高い8検体を選定し,iPS由来細胞培養系での増殖性を検討した.
・iPS由来腸管上皮細胞においても,オルガノイド系と同様に増殖性が高いことが確認できた.
・ノロウイルス不活化評価に用いるGII.4株2検体を選定した.
・食品取り扱い事業者を対象に唾液中のノロウイルスの実態調査を実施した。
・令和5年度は371検体について唾液の調査を実施したが、ノロウイルスは検出されなかった。
・令和5年度の便検査におけるノロウイルス陽性率は0.5%と例年より低いCOVID-19期と同様の状況であった.
結論
1検査法の整備 食中毒事件に対応する汎用性の高い食品処理法としてパンソルビン・トラップ法、A3T法、ISO法ともに汎用性の高さが示唆された。食品よる得手不得手が示唆された。
2ウイルスの制御 in vitro増殖系を用いてHACCPに従った衛生管理対応に向けたウイル科学的データの蓄積を進める。

公開日・更新日

公開日
2025-01-18
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2025-01-18
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202323011Z