新型コロナウィルス感染症対策に取組む食品事業者における食品防御の推進のための研究

文献情報

文献番号
202323009A
報告書区分
総括
研究課題名
新型コロナウィルス感染症対策に取組む食品事業者における食品防御の推進のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
21KA1009
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
今村 知明(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部 公衆衛生学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 岡部 信彦(川崎市健康福祉局 川崎市健康安全研究所)
  • 赤羽 学(国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部)
  • 高畑 能久(大阪成蹊大学 マネジメント学部)
  • 田口 貴章(国立医薬品食品衛生研究所 食品部)
  • 渡辺 麻衣子(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)
  • 加藤 礼識(別府大学 食物栄養科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
16,752,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、食品への意図的な毒物混入事件が頻発したこともあり、通常の食品事業者においては食品防御への対応が進んできているところであるが、飲食物の運搬を請負う事業者については参考となる食品防御対策ガイドラインが存在せず、十分な対応が行われているとは言えない。特に、新型コロナウィルス感染症がもたらした新しい飲食サービス形態に関する安全・安心の実現は急務である。そこで本研究では、従来の食品事業者だけではなく、飲食物の運搬を請負う事業者においても、食品への意図的な毒物混入を防御するための方策について研究を行った。
研究方法
今年度は、以下に示す9項目について、国内外の政府機関ウェブサイト、公表情報の収集整理、実地調査、ヒアリング調査、アンケート調査、人体試料やモデルウィルスを用いた分析、検討会における生物・食品衛生等の専門家・実務家らとの討議を通じて研究を実施した。
結果と考察
(1)「フードチェーン全体の食品防御上の安全性向上に向けた脆弱性評価」では、食品を取り扱う事業所2箇所に対して実地調査を実施し、食品防御の観点からみた脆弱性に関する情報を収集・整理した。今後、食品防御対策ガイドラインに反映できる可能性のある対策4点を抽出した。
(2)「新型コロナウィルス感染症対策と調和した食品防御対策ガイドラインに関する検討」では、ガイドラインの食品製造工場向け(令和元年度改訂版)(案)、運搬・保管施設向け、調理・提供施設向け(各令和元年度版)(案)について、新型コロナウィルス感染症対策との調和を考慮して修正を行った。併せて、小規模事業者向けチェックリスト(案)、フードデリバリーサービス提供事業者及び利用事業者向けの食品防御対策チェックリスト(案)についても修正を行い、後者は配達員向けチェックリスト及びリーフレットの作成を行った。
(3)「テイクアウト・デリバリー施設等における食品防御対策の実態調査」では、同施設における食品衛生や食品防御対策に関する認識の低さが明らかになり、同施設関係者に対して食品防御教育ツールを提供することの重要性が確認された。
(4)「コロナ禍に実施した食品に対する意識調査結果のテキスト分析」では、市民の食品製造会社に期待することとして、コロナ禍にあっても、「異物混入の防止」に対する期待が一定程度存在したことが明らかになった。
(5)「飲食店における食品防御対策の現状と課題~客の不適切な食品の取り扱いの責任を飲食店が負わなければならないのは何故か~」では、客テロが発生した飲食店におけるその後の対策等に関する調査を通じて、今後、客テロ行為に対しても食品防御対策が必要であることを明らかにした。
(6)「血液・尿等人体試料中毒物及び食品中の毒物・異物の検査手法の開発と標準化」では、尿中シアン化物イオン(CN-)及びチオシアン酸イオン(SCN-)の迅速同時分析法を開発した。
(7)「食品のデリバリーやテイクアウト用の容器等における新型コロナウィルスのモデルウィルスを用いた生残性評価」では、食品の容器・包装上の感染性ウィルス生残性は容器・包装の種類によって異なること、また、それらのウィルス生残性減少の傾向は、大きくは生残性の高いプラスチック樹脂系統と、生残性の低い紙類系統に分類されるが、発泡スチレンや、表面をサンドブラスト加工したポリスチレン、表面をポリスチレンコーティングした未晒クラフト紙等、表面加工の程度や添加物の使用等の要因によって影響を受け、大きく変化することが示唆された。
(8)「新興感染症流行時における地方自治体の食品防御対策の検討」では、食品衛生監視員の食品防御に関する知識向上を図る必要があること、食品防御対策に関して所管が不明瞭な自治体が多いこと、感染症の流行状況により流通食品表面にSARS-CoV-2が存在する可能性があることなどを明らかにした。
(9)「海外における食品防御政策等の動向調査」では、米国FDA「食品への意図的な混入に対する緩和戦略」規則・ガイダンスについては今年度の大きな更新はなかったが、CODEX委員会の2023年5月のCCFICS部会で食品偽装に関するガイダンス草案が提出されたことを把握した。
結論
新型コロナウィルス感染症の流行を契機に、「オンラインフードデリバリーサービス」等の、調理・提供業者と消費者の間を繋ぐ新たな事業の創業が相次いだ。この調理・提供事業者と消費者とを接続する部分のサービスにおいて、食品防御に関する多くの懸念点が散見されるようになった。本研究では、特にこの新しい事業形態(飲食物の運搬)を行う事業者における、実行性のある食品防御対策を行うための研究を実施し、それらを踏まえた今後の新しい食品防御のあり方と具体的方法を提示した。

公開日・更新日

公開日
2025-01-23
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2025-02-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202323009B
報告書区分
総合
研究課題名
新型コロナウィルス感染症対策に取組む食品事業者における食品防御の推進のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
21KA1009
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
今村 知明(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部 公衆衛生学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 岡部 信彦(川崎市健康福祉局 川崎市健康安全研究所)
  • 赤羽 学(国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部)
  • 高畑 能久(大阪成蹊大学 マネジメント学部)
  • 田口 貴章(国立医薬品食品衛生研究所 食品部)
  • 渡辺 麻衣子(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)
  • 加藤 礼識(別府大学 食物栄養科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、食品への意図的な毒物混入事件が頻発したこともあり、通常の食品事業者においては食品防御への対応が進んできているところであるが、飲食物の運搬を請負う事業者については参考となる食品防御対策ガイドラインが存在せず、十分な対応が行われているとは言えない。特に、新型コロナウィルス感染症がもたらした新しい飲食サービス形態に関する安全・安心の実現は急務である。本研究では、従来の食品事業者だけではなく、飲食物の運搬を請負う事業者においても、食品への意図的な毒物混入を防御するための方策について研究を行った。
研究方法
以下に示す9項目について、国内外の政府機関ウェブサイト、公表情報の収集整理、実地調査、ヒアリング調査、アンケート調査、人体試料やモデルウィルスを用いた分析、検討会における生物・食品衛生等の専門家・実務家らとの討議を通じて研究を実施した。
結果と考察
(1)「フードチェーン全体の食品防御上の安全性向上に向けた脆弱性評価」では、様々な飲食事業者に対してオンラインヒアリング/オンサイト訪問を行い、食品防御の観点からみた脆弱性に関する情報を収集・整理した。その結果、今後、食品防御対策ガイドラインに反映できる可能性のある脆弱性25点を抽出した。
(2)「新型コロナウィルス感染症対策と調和した食品防御対策ガイドラインに関する検討」では、ガイドラインの食品製造工場向け(令和元年度改訂版)(案)、運搬・保管施設向け、調理・提供施設向け(それぞれ令和元年度版)(案)について、新型コロナウィルス感染症対策との調和を考慮した修正を行った。また、フードデリバリーサービス提供事業者及び利用事業者向けの食品防御対策チェックリスト(案)について実態を踏まえた修正を行うとともに、同チェックリスト(案)から配達員向けの教育ツール及びリーフレットの作成を行った。
(3)「テイクアウト・デリバリー施設等における食品防御対策の現状調査」では、同施設では配送時の食品防御対策や衛生管理は宅配代行事業者を信頼するしかない現状であることから、契約時に提示できる実効性のあるテイクアウト・デリバリー関連事業者向けの食品防御対策ガイドラインが強く求められていることを把握した。
(4)「食の安心・安全に関するアンケート調査結果の分析-食品に異常があった場合の対応とコロナ禍における外食の不安に関する要因分析-」では、宅配サービスにおける食品防御対策の必要性、消費者が感染症拡大下において食品製造会社・外食産業に対して持つ期待の内容を明らかにした。
(5)「飲食店における不適切な食品の取り扱いに対する対応~「バイトテロ」・「客テロ」を防ぐための食品防御対策~」では、配達員に対する食品防御教育の必要性や、飲食店における客テロ行為に対する食品防御対策の必要性を明らかにした。
(6)「血液・尿等人体試料中毒物及び食品中の毒物・異物の検査手法の開発と標準化」では、食品テロ等、意図的毒物混入事件発生時に有用と考えられる迅速同時分析法を開発した。
(7)「食品のデリバリーやテイクアウト用の容器等における新型コロナウィルスのモデルウィルスを用いた生残性評価」では、食品用容器包装の添加物や素材原料の溶出が表面に付着した感染性ウィルスの生残性に対して影響を及ぼすこと、またその影響の程度は、大きくはプラスチック樹脂と紙類に分類され、さらに成形時の加工や表面加工の程度等にも影響され、変化する可能性があることなどの示唆を得た。
(8)「新興感染症流行時における地方自治体の食品防御対策の検討」では、食品衛生監視員の食品防御に関する知識向上を図る必要があること、食品防御対策に関して所管が不明瞭な自治体が多いこと、感染症の流行状況により流通食品表面にSARS-CoV-2が存在する可能性があるが、手洗いや調理前の食材洗浄をしっかり行うことで、食品表面に付着したSARS-CoV-2が感染源となる可能性は極めて低くなることなどを明らかにした。
(9)「海外における食品防御政策等の動向調査」では、米国FDA「食品への意図的な混入に対する緩和戦略」規則・ガイダンスの研究期間の大きな更新はなかったが、CODEX委員会の2023年5月のCCFICS部会で食品偽装に関するガイダンス草案が提出されたことを確認した。
結論
新型コロナウィルス感染症の流行を契機に、「オンラインフードデリバリーサービス」等の、調理・提供業者と消費者の間を繋ぐ新たな事業の創業が相次いだ。この調理・提供事業者と消費者とを接続する部分のサービスにおいて、食品防御に関する多くの懸念点が散見されるようになった。本研究では、特にこの新しい事業形態(飲食物の運搬)を行う事業者の実態調査等を通じて、今後の新しい食品防御のあり方、および具体的かつ実効性の高い方法の提案を行った。

公開日・更新日

公開日
2025-01-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2025-02-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202323009C

収支報告書

文献番号
202323009Z