自然毒等のリスク管理のための研究

文献情報

文献番号
202323005A
報告書区分
総括
研究課題名
自然毒等のリスク管理のための研究
課題番号
21KA1005
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 敏之(国立研究開発法人水産研究・教育機構 水産技術研究所 環境・応用部門 )
研究分担者(所属機関)
  • 松嶋 良次(国立研究開発法人 水産研究・教育機構 水産技術研究所  水産物応用開発部 安全管理グループ)
  • 渡邊 龍一(国立研究開発法人水産研究・教育機構 水産技術研究所  環境・応用部門 水産物応用開発部)
  • 内田 肇(国立研究開発法人 水産研究・教育機構 水産技術研究所 環境・応用部門 水産物応用開発部 安全管理グループ)
  • 小澤 眞由(国立研究開発法人水産研究・教育機構 水産技術研究所環境・応用部門水産物応用開発部安全管理グループ)
  • 髙橋 洋(国立研究開発法人水産研究・教育機構 水産大学校)
  • 辰野 竜平(水産研究・教育機構 水産大学校 食品科学科)
  • 登田 美桜(国立医薬品食品衛生研究所  安全情報部第三室)
  • 南谷 臣昭(岐阜県保健環境研究所 食品安全検査センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
24,054,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、ふぐ毒をはじめとした動物性自然毒やきのこを含む有毒植物など植物性自然毒に係る知見を収集・整理し、関係事業者に効果的な対策を提供するとともに、消費者に対して正確な情報提供を行うことを目的とする。
研究方法
「雑種ふぐの発生状況およびふぐの流通状況の把握」では、調査地において水揚げされた選別前の天然フグについて外部形態に基づき種・雑種鑑別を行い、種組成および雑種と思われる種類不明フグの個体数を数えた。雑種と思われる種類不明フグはTaqManアッセイにより遺伝子型決定し、種・雑種判別を行い、各組織の毒含量を調べた。「国際的に妥当性が評価されたLC/MS/MS法による国内貝毒検査法の確立」では、枝分かれ試験 (分析者1名、2併行、5日間) の添加回収試験を実施した。「汎用性の高い植物性自然毒の分析法の確立」では、LC/MS/MSによる一斉分析法等を検討した。「植物性自然毒の食中毒の発生動向調査及び「自然毒のリスクプロファイル」更新」では、高等植物による食中毒の傾向について、30年間のデータを調査した。
結果と考察
「雑種ふぐの発生状況およびふぐの流通状況の把握」では、2023年に神奈川県横須賀市、宮城県気仙沼市、福島県相馬市で行われたフグの現地調査において、各地で釣獲されたフグの中に雑種フグが混在していることが確認された。雑種フグの混獲率は地域により異なり、神奈川県横須賀市では7.96%、宮城県気仙沼市では8.79%、福島県相馬市では3.13%(漁業者による雑種フグの排除後)と推計された。雑種フグの卵巣、肝臓には高濃度のTTXが検出され、これらの部位は喫食不可と判断された。また、雑種フグの毒力は交雑相手の部位の有毒性が強く継承されることが示唆された。「国際的に妥当性が評価されたLC/MS/MS法による国内貝毒検査法の確立」では、LC/MS/MS法による国内貝毒検査法の確立について、麻痺性貝毒11成分の検出下限および定量下限が明らかにされ、その妥当性が評価された。また、麻痺性貝毒の代謝物M-toxinsについて、分析法の検証およびホタテガイにおける部位別蓄積を検証した。「汎用性の高い植物性自然毒の分析法の確立」では、有毒きのこの毒成分一斉分析法のためのLC-MS/MS測定条件が最適化された。また、抽出法や前処理法を検討し、本分析法は食中毒の対応には十分な真度と精度を有する汎用性の高い分析法であることが示された。「植物性自然毒の食中毒の発生動向調査及び「自然毒のリスクプロファイル」更新」では、高等植物による食中毒の傾向として、食中毒事件は年間の件数は少ないものの、死亡事例も報告され、食品安全行政上の重要課題の一つとなっていることが確認された。「自然毒のリスクプロファイル」の更新作業を行い、キノコ及び高等植物について暫定的な更新版を作成した。これらの情報は将来的に厚生労働省HPに掲載予定である。また、キノコによる食中毒の注意喚起パンフレットを作成し、国立医薬品食品衛生研究所安全情報部のウェブサイト上に公開する予定である。
結論
本研究により、ふぐ毒をはじめとした動物性自然毒やきのこを含む有毒植物など植物性自然毒に係る知見を収集・整理し、関係事業者に効果的な対策を提供するための知見が得られた。また、消費者に対してより正確な情報提供を行うことが可能になった。

公開日・更新日

公開日
2024-11-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2024-11-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202323005B
報告書区分
総合
研究課題名
自然毒等のリスク管理のための研究
課題番号
21KA1005
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 敏之(国立研究開発法人水産研究・教育機構 水産技術研究所 環境・応用部門 )
研究分担者(所属機関)
  • 松嶋 良次(国立研究開発法人 水産研究・教育機構 水産技術研究所  水産物応用開発部 安全管理グループ)
  • 渡邊 龍一(国立研究開発法人水産研究・教育機構 水産技術研究所  環境・応用部門 水産物応用開発部)
  • 内田 肇(国立研究開発法人 水産研究・教育機構 水産技術研究所 環境・応用部門 水産物応用開発部 安全管理グループ)
  • 小澤 眞由(国立研究開発法人水産研究・教育機構 水産技術研究所環境・応用部門水産物応用開発部安全管理グループ)
  • 髙橋 洋(国立研究開発法人水産研究・教育機構 水産大学校)
  • 辰野 竜平(水産研究・教育機構 水産大学校 食品科学科)
  • 登田 美桜(国立医薬品食品衛生研究所  安全情報部第三室)
  • 南谷 臣昭(岐阜県保健環境研究所 食品安全検査センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、ふぐ毒をはじめとした動物性自然毒やきのこを含む有毒植物など植物性自然毒に係る知見を収集・整理し、関係事業者に効果的な対策を提供するとともに、消費者に対して正確な情報提供を行うことを目的とする。
研究方法
「雑種ふぐの発生状況およびふぐの流通状況の把握」では、調査地において水揚げされた選別前の天然フグについて外部形態に基づき種・雑種鑑別を行い、種組成および雑種と思われる種類不明フグの個体数を数えた。雑種と思われる種類不明フグはTaqManアッセイにより遺伝子型決定し、種・雑種判別を行い、各組織の毒含量を調べた。「国際的に妥当性が評価されたLC/MS/MS法による国内貝毒検査法の確立」では、枝分かれ試験 (分析者1名、2併行、5日間) の添加回収試験を実施した。「汎用性の高い植物性自然毒の分析法の確立」では、LC/MS/MSによる一斉分析法等を検討した。「植物性自然毒の食中毒の発生動向調査及び「自然毒のリスクプロファイル」更新」では、高等植物による食中毒の傾向について、30年間のデータを調査した。
結果と考察
日本全国の複数の地点において、フグの種類と雑種の調査を行った。全体で18254個体が調査され、そのうち9種のフグと雑種が確認された。雑種の混獲率は全体で9.04%であった。各地点での調査結果は以下の通りである。:気仙沼市:雑種混獲率は13.35%と16.5%、稚内市:雑種混獲率は0.08%、輪島市:雑種混獲率は0%、秋田市・男鹿市:雑種混獲率は1.47%、初山別村・神恵内村:雑種混獲率は0.15%、横須賀市:雑種混獲率は7.96%、相馬市:雑種混獲率は3.13%(ただし、漁業者による雑種フグの排除後の割合であり、過小評価の可能性が高い)。また、多くの地域で市場において雑種フグは選別されずに水産加工業者等に購入され、加工施設内でふぐ処理者の監督下で選別・排除されていた。雑種フグの可食部位を検討した結果、皮ではゴマフグ、トラフグ、戻し交配:(トラフグ✕マフグ)✕トラフグを除き、すべてで10 MU/gを超えた。精巣はすべての検体で10 MU/g以下であり、卵巣は食用不可と判断された。肝臓もまた、皮同様、コモンフグ✕ショウサイフグを除き、10 MU/gを上回る個体が多かったため、食用に適さないと判断された。HILIC-MS/MSを用いて、ホタテガイとその他二枚貝種を分析し、マウスを用いた動物試験法(MBA)との相関性について調べた。その結果、HILIC-MS/MSの結果はMBAの結果と正の相関を示した。HILIC-MS/MSにおける単一試験室による妥当性確認評価試験を実施し、麻痺性貝毒11成分とフグ毒テトロドトキシン(TTX)の検出と定量が可能であることを確認した。有毒植物と有毒きのこの毒成分一斉分析法として、28植物群の44成分を分析対象化合物とするLC-MS/MS一斉分析法を新たに開発した。有毒きのこの一斉分析法1においては、中毒事例や死亡事例が多い5きのこ群(ツキヨタケ、ドクツルタケ、カエンタケ、カキシメジ、ニセクロハツ)の9成分を対象とするLC-MS/MS一斉分析法を新たに開発した。有毒きのこの一斉分析法2においては、中毒事例が多いテングタケ等のきのこに含まれる高極性のアミノ酸やアミン類の4成分をAQC試薬によりプレカラム誘導体化し、アセタケ類やクサウラベニタケ等の多くの毒きのこに含まれる四級アミンのムスカリンと同時にLC-MS/MSにより分析する手法を開発した。直近30年間に全国自治体から厚生労働省へ報告された植物性自然毒(キノコ、高等植物)を原因とする食中毒事件について傾向をまとめた。さらに、食中毒の主な発生原因である食用キノコと毒キノコの誤認について市民に注意を呼び掛けることを目的に、パンフレット「毒きのこに気をつけて!」を作成した。「自然毒のリスクプロファイル」のうち、キノコと高等植物について暫定的な更新版を作成した。毒化要因を排除した環境で養殖された台湾産養殖ハタ(交配種)の毒化可能性について、シガテラリスクを検討した。その結果、これまでの知見に鑑みて、養殖された交配種については、餌の中にシガトキシンが含まれていなければ毒化する可能性は極めて低く、更に、既に十分な食経験もあり、シガテラ中毒事例も報告されていないことからも、シガテラ中毒の懸念は極めて低いと考えられた。
結論
本研究により、ふぐ毒をはじめとした動物性自然毒やきのこを含む有毒植物など植物性自然毒に係る知見を収集・整理し、関係事業者に効果的な対策を提供するための知見が得られた。また、消費者に対してより正確な情報提供を行うことが可能になった。

公開日・更新日

公開日
2024-11-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202323005C

収支報告書

文献番号
202323005Z