文献情報
文献番号
202323004A
報告書区分
総括
研究課題名
ワンヘルスに基づく食品由来薬剤耐性菌のサーベイランス体制強化のための研究
課題番号
21KA1004
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
菅井 基行(国立感染症研究所 薬剤耐性研究センター)
研究分担者(所属機関)
- 四宮 博人(愛媛県立衛生環境研究所)
- 大屋 賢司(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)
- 小西 典子(東京都健康安全研究センター 微生物部 食品微生物研究科)
- 富田 治芳(群馬大学大学院医学系研究科 生体防御機構学 細菌学分野)
- 浅井 鉄夫(岐阜大学大学院連合獣医学研究科)
- 石井 良和(東邦大学 医学部 微生物・感染症学講座)
- 川西 路子(農林水産省動物医薬品検査所 検査第二部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
36,064,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
今まで培われて来た食品由来薬剤耐性菌サーベイランスを実施する各種研究機関、大学等の専門家ネットワークを用いて実施体制の強化を行い、動物性食品の薬剤耐性菌の動向調査・薬剤耐性に関する研究を実施し、その知見を「薬剤耐性ワンヘルス動向調査年次報告書」、GLASS2.0に提供すること。
研究方法
地方衛生研究所(地衛研)で扱う耐性菌(全国20-30か所)、食肉衛生検査所および検疫所由来鶏肉検体からの耐性菌、食肉処理場(豚)および市販豚肉由来メチシリン耐性ブドウ球菌、市販鶏肉由来第三世代セファロスポリン耐性菌、JVARM参加食肉処理場(牛・豚)、食鳥処理場の健康家畜由来耐性菌、健常人糞便からのESBL産生大腸菌について菌株分離、収集、各種解析を行い、薬剤耐性研究センターにおいてゲノムデータの取得を進めた。ゲノムデータは薬剤感受性データ、菌株とともに薬剤耐性菌バンクで一元管理し、解析に用いた。またGLASS 2.0に対応し、データの提出を行うためのプログラムの検討・開発を進めた。
結果と考察
研究班で得られた耐性菌データが、国内・国外への情報発信に貢献していることは大きな成果である。国内においては「薬剤耐性ワンヘルス動向調査年次報告書2021」、国外においてはWHO GLASSに提供され、日本におけるワンヘルスアプローチによる基礎データを提供した。
「薬剤耐性ワンヘルス動向調査年次報告書」「WHO GLASS」では薬剤耐性データは菌株の感受性データとして報告されている。現在、検討されているGLASS 2.0ではさらに耐性遺伝子データの収載が検討されており、併せて全ゲノムシークエンス配列を読む Genomic Surveillanceが推奨されている。このことに鑑み、本研究班では新規に収集する薬剤耐性菌及び、すでに収集した薬剤耐性菌について可能な限り全ゲノムシークエンスデータを採取し、それを元に国内外での報告に資する基盤データを作出することを目的とした。最終年度は各分担研究者から収集菌株あるいは精製DNAを収集し、全ゲノムシークエンスを作出するとともに個別にゲノムデータを解析した。今後、データをもとにワンヘルス動向調査報告書に投稿できるように形式を整える必要がある。
サルモネラに関してはヒト由来株のうち食品からも分離された血清型、S. Infantis, S. Schwarzengrund, S. Manhattanでは、2015年~2022年分離株と同様にヒト由来株と食品由来株の耐性傾向に強い類似性があり、関連が強く示唆された。大腸菌については下痢原性大腸菌の方がEHECより耐性率は高く、多剤耐性傾向を示した。C. jejuniとC. coliはともにヒト由来株と食品由来株に強い類似性があり、関連が強く示唆された。また鶏肉由来ESBL産生菌では国産鶏肉の方が輸入鶏肉より多く検出された。一方、ESBL選択培地を使用せず分離した大腸菌での第3世代セファロスポリン耐性率は、国産鶏肉の方が輸入鶏肉より低かった。食鳥処理場、と畜場で分離された大腸菌及びサルモネラのうち、コリスチン耐性遺伝子(mcr-1~mcr-10)調べたところ、大腸菌からmcr-1、mcr-3及びmcr-5が検出された(5%以下)。鶏肉からはVanN 型VREが国産鶏肉5 検体(4%)から検出されたが、ヒトで認められているVanA/B型は検出されなかった。またリネゾリド耐性腸球菌(optrA +)が国内産鶏肉7検体(6%)検出された。と畜場での豚耳検体からは地域を問わずLA-MRSAが検出され、ドラフトゲノム解析からCC398株が多数検出された。市販豚肉で得たMRSA株も全てST398であった。今後、全ゲノムシークエンス解析の結果に基づき、病原性を含めた性状を明らかにしてゆく必要がある。
「薬剤耐性ワンヘルス動向調査年次報告書」「WHO GLASS」では薬剤耐性データは菌株の感受性データとして報告されている。現在、検討されているGLASS 2.0ではさらに耐性遺伝子データの収載が検討されており、併せて全ゲノムシークエンス配列を読む Genomic Surveillanceが推奨されている。このことに鑑み、本研究班では新規に収集する薬剤耐性菌及び、すでに収集した薬剤耐性菌について可能な限り全ゲノムシークエンスデータを採取し、それを元に国内外での報告に資する基盤データを作出することを目的とした。最終年度は各分担研究者から収集菌株あるいは精製DNAを収集し、全ゲノムシークエンスを作出するとともに個別にゲノムデータを解析した。今後、データをもとにワンヘルス動向調査報告書に投稿できるように形式を整える必要がある。
サルモネラに関してはヒト由来株のうち食品からも分離された血清型、S. Infantis, S. Schwarzengrund, S. Manhattanでは、2015年~2022年分離株と同様にヒト由来株と食品由来株の耐性傾向に強い類似性があり、関連が強く示唆された。大腸菌については下痢原性大腸菌の方がEHECより耐性率は高く、多剤耐性傾向を示した。C. jejuniとC. coliはともにヒト由来株と食品由来株に強い類似性があり、関連が強く示唆された。また鶏肉由来ESBL産生菌では国産鶏肉の方が輸入鶏肉より多く検出された。一方、ESBL選択培地を使用せず分離した大腸菌での第3世代セファロスポリン耐性率は、国産鶏肉の方が輸入鶏肉より低かった。食鳥処理場、と畜場で分離された大腸菌及びサルモネラのうち、コリスチン耐性遺伝子(mcr-1~mcr-10)調べたところ、大腸菌からmcr-1、mcr-3及びmcr-5が検出された(5%以下)。鶏肉からはVanN 型VREが国産鶏肉5 検体(4%)から検出されたが、ヒトで認められているVanA/B型は検出されなかった。またリネゾリド耐性腸球菌(optrA +)が国内産鶏肉7検体(6%)検出された。と畜場での豚耳検体からは地域を問わずLA-MRSAが検出され、ドラフトゲノム解析からCC398株が多数検出された。市販豚肉で得たMRSA株も全てST398であった。今後、全ゲノムシークエンス解析の結果に基づき、病原性を含めた性状を明らかにしてゆく必要がある。
結論
多くのデータを得るとともに、ゲノムデータの作出が進んだ。次年度には収集した各種菌株のゲノム情報に基づき、ゲノムレベルでの各セクター間での耐性遺伝子の移動を解析するための新しいプラットフォーム作りが期待される。
公開日・更新日
公開日
2024-08-29
更新日
-