文献情報
文献番号
202323002A
報告書区分
総括
研究課題名
新たなバイオテクノロジーを用いて得られた食品の安全性確保とリスクコミュニケーションのための研究
課題番号
21KA1002
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
近藤 一成(昭和女子大学 食健康科学部)
研究分担者(所属機関)
- 小泉 望(大阪府立大学生命環境科学研究科)
- 早川 英介(沖縄科学技術大学院大学 進化神経生物学ユニット)
- 富井 健太郎(産業技術総合研究所 人工知能研究センター)
- 柴田 識人(国立医薬品食品衛生研究所 生化学部)
- 安達 玲子(国立医薬品食品衛生研究所 生化学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
25,817,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
遺伝子改変技術を応用した食品開発は、技術的には外来遺伝子導入による遺伝子組換え食品(GM 食品)から生物自身が持つ内在性遺伝子改変で新たな形質を生み出すゲノム編集技術応用食品(ゲノム編集食品)へ、また、その生物が持たない多数の遺伝子を導入した酵母などから新規食品機能成分を産生させる合成生物学利用へと変化している。このような技術では、想定される意図しない変化も一様でないことが明らかになりつつある。意図しない塩基変化や
そこから生じる代謝成分の変化を網羅的に検出または予測し、その変化が与える影響を正確に評価することは、食品の安全性確保において急務の課題である。また、これまでの遺伝子組換え食品の安全性評価の考え方が、新しい技術に対応できるのか、課題は何か、どのような評価の仕組みが必要かなどの検討を行い、今後の評価基準の修正など安全性確保に必要な検討を実施する。
そこから生じる代謝成分の変化を網羅的に検出または予測し、その変化が与える影響を正確に評価することは、食品の安全性確保において急務の課題である。また、これまでの遺伝子組換え食品の安全性評価の考え方が、新しい技術に対応できるのか、課題は何か、どのような評価の仕組みが必要かなどの検討を行い、今後の評価基準の修正など安全性確保に必要な検討を実施する。
研究方法
本研究班構成では、意図しないゲノムDNA配列の変化の解析手法開発と標準化を柴田が、意図しないタンパクの生成に伴うアレルゲン性の評価手法開発と実用化およびアレルゲンデータベースADFSの維持更新を、深層学習も取り入れながら安達および富井が、また、意図しない代謝物変化の網羅的開発手法の開発とWeb環境で利用できるような実用化を早川が担当した。リスクコミュニケーションについては、ゲノム編集食品、合成生物学利用食品、特に代替タンパク質に重点を置きながら小泉が担当した。
結果と考察
ゲノム解析分野では、ゲノム編集食品の安全性評価の一つである外来遺伝子配列のゲノム上にお
ける残存を網羅的に調べる方法として、次世代シークエンサーを利用して得られた全ゲノムシーク
エンスデータを用いた標準的解析手法の開発に取り組んだ。本年度は、実際に残存が想定されうる
外来遺伝子配列(Cas9 配列など)について手法の妥当性を検討すると共に、このアセンブリ法によ
って解析可能な残存配列の長さや解析で必要とされる全ゲノムシークエンスにて取得すべきデータ
量(シークエンスカバレッジ)を明らかにした。ゲノム編集食品の安全性評価の精緻化・向上のみ
ならず、こうした新たなバイオテクノロジーを活用した食品に対する国民受容の向上にも役立つと
期待される。
網羅的代謝物解析分野では、昨年度までの化合物単位での解析に加え、本年度は分析データから
エンリッチメント解析を通じて代謝パスウェイにおける変動を明らかにする検討を行った。開発し
たスペクトル類似度計算に基づく未知化合物の構造解析および可視化を行う解析ツールを、ウェブ
ブラウザ上で動作する Docker イメージとして配布、GitHub で公開した。これにより、未知化合物
の迅速な解析と可視化という従来高度な質量分析とインフォマティクス技術が必要だった解析が広
範な研究者および技術者にも利用可能となった。
アレルゲン性予測の分野では、既に開発したサポートベクターマシンを用いた手法である
allerSTAT について、客観的性能評価のために F1 スコア、MCC で評価した結果、既存のツールよ
りも優れていることが確認できた。また、食物由来タンパクの主要組織適合性複合体 HLA への結合
性を予測する手法を検討して、既存深層学習モデルをベースに追加の特徴量を組み合わせたトレー
ニングを行い、予測性能を比較、性能向上の可能性と有効な特徴量を検証した。
ける残存を網羅的に調べる方法として、次世代シークエンサーを利用して得られた全ゲノムシーク
エンスデータを用いた標準的解析手法の開発に取り組んだ。本年度は、実際に残存が想定されうる
外来遺伝子配列(Cas9 配列など)について手法の妥当性を検討すると共に、このアセンブリ法によ
って解析可能な残存配列の長さや解析で必要とされる全ゲノムシークエンスにて取得すべきデータ
量(シークエンスカバレッジ)を明らかにした。ゲノム編集食品の安全性評価の精緻化・向上のみ
ならず、こうした新たなバイオテクノロジーを活用した食品に対する国民受容の向上にも役立つと
期待される。
網羅的代謝物解析分野では、昨年度までの化合物単位での解析に加え、本年度は分析データから
エンリッチメント解析を通じて代謝パスウェイにおける変動を明らかにする検討を行った。開発し
たスペクトル類似度計算に基づく未知化合物の構造解析および可視化を行う解析ツールを、ウェブ
ブラウザ上で動作する Docker イメージとして配布、GitHub で公開した。これにより、未知化合物
の迅速な解析と可視化という従来高度な質量分析とインフォマティクス技術が必要だった解析が広
範な研究者および技術者にも利用可能となった。
アレルゲン性予測の分野では、既に開発したサポートベクターマシンを用いた手法である
allerSTAT について、客観的性能評価のために F1 スコア、MCC で評価した結果、既存のツールよ
りも優れていることが確認できた。また、食物由来タンパクの主要組織適合性複合体 HLA への結合
性を予測する手法を検討して、既存深層学習モデルをベースに追加の特徴量を組み合わせたトレー
ニングを行い、予測性能を比較、性能向上の可能性と有効な特徴量を検証した。
結論
培養肉、植物由来代替タンパクなどフードテック分野のリスクコミュニケーション結果は、今後の国民理解や普及に向けた方針決定の参考になる。ゲノム解析、代謝物解析、アレルゲン性解析などの観点から作成した新たな手法を、完成、公開のための作業を進めている。これらの手法を活用することで、信頼性のある解析が誰でも出来ることが期待される。
公開日・更新日
公開日
2024-10-04
更新日
-