産業現場で活動する保健師・看護師の活用及び資質向上のための方策に係る研究

文献情報

文献番号
202322017A
報告書区分
総括
研究課題名
産業現場で活動する保健師・看護師の活用及び資質向上のための方策に係る研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23JA2001
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
中谷 淳子(産業医科大学 産業保健学部 産業・地域看護学)
研究分担者(所属機関)
  • 井上 彰臣(産業医科大学 IR推進センター)
  • 吉川 悦子(高橋 悦子)(日本赤十字看護大学 看護学部)
  • 金森 悟(帝京大学 大学院 公衆衛生学研究科)
  • 錦戸 典子(東海大学健康科学部)
  • 千葉 敦子(青森県立保健大学 健康科学部 看護学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
3,847,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 近年産業保健現場では、労働者の高齢化、生活習慣病対策、メンタルヘルス対策、治療と仕事の両立支援、これらを包括した健康経営の推進などにより産業保健機能の強化が重要性を増している。活動の担い手として、労働安全衛生法上選任の定めのある産業医や衛生管理者に加え、複雑化、多様化する産業現場のニーズに対応するために保健師や看護師(以下、産業看護職とする)の更なる活躍が期待されている。加えて、大企業と中小規模事業場との産業保健活動の格差も問題となっており、中小規模事業場への産業保健サービスの提供者としての産業看護職の需要も高まっている。このような中、産業看護職の量的な確保ならびに期待に応えうる実践力を有することが期待され、体系的な研修プログラムの必要性が高まっている。
 現在、産業看護職の卒後教育として関連団体による研修等が随時開催されているが、実務経験が必要であるもの、受講要件があるもの、単発のテーマであり体系的なプログラムではないものなど、これから産業保健活動に携わろうとする者を含めた全ての看護職を対象とした体系的な研修プログラムは存在していない。  
 本研究では、産業看護職の資質向上を目的に、求められる業務や必要な能力を明確化し、新任期や産業看護活動未経験者の受講を想定した体系的な学習機会を提供するための研修プログラムおよび教材を開発する。
1年目の目的は、産業現場および受講者のニーズに即した実効性の高い研修プログラムを開発するための基礎資料とするため、潜在看護師・保健師の産業看護職への就労可能性や研修ニーズの把握、中小規模事業場を含む事業場において産業看護職に求められる役割や能力を明らかにすることである。
研究方法
以下の3つの研究を遂行した。
1.潜在保健師・看護師の産業看護職としての就労可能性および研修に関するニーズ調査
2.産業看護職に求められる実践能力ならびにコンピテンシーに関するスコーピングレビュー
3.中小規模事業場における産業看護職の活用ニーズに関する調査
結果と考察
1.産業保健の現場での活動経験が少ない保健師・看護師を対象とした研修プログラムを開発するにあたり、受講者として想定される潜在保健師・看護師を対象に、産業看護職としての就労意欲や受講を希望する研修テーマについて尋ねるアンケート調査を実施した。その結果、保健師・看護師ともに80%以上が就労を前向きに検討していた。研修テーマについては多くのテーマで「受けておきたい」と回答されたが、「用語の意味が分からない」との回答もあり、研修では用語の説明も含めたより丁寧な解説の必要があると考えられた。

2.産業看護職におけるコンピテンシーを含む産業看護実践能力についての網羅的な概観を明らかにするためにスコーピングレビューを行った。その結果、産業看護実践能力は、「基本的実践能力」と「高度実践能力」に分類され、質的に分類した結果では「産業看護職としての基盤」「コーディネーション」「マネジメント」「産業看護活動」の4つのカテゴリーが抽出された。新人期から熟練期までの段階を追った産業看護実践能力の明確化と、段階に応じた教育プログラム開発の必要性が示唆された。

3.中小規模事業場の支援に関わる看護職に求められる能力を明らかにするために、看護職を活用している中小規模事業場の経営者または安全衛生担当者に対しインタビュー調査を実施した。看護職の役割として1次~3次予防まで幅広く実施されており、支援効果では社員の健康意識の向上や生活習慣改善、受診や治療の促進、担当者の負担軽減、経営者の健康意識の向上と行動改善などが抽出された。中小規模事業場への支援においても、看護職は産業保健分野の幅広い知識とコンピテンシーを有することが必要であり、系統的な教育研修の必要性が示唆された。
結論
 潜在看護師・保健師の多くが産業看護職として就労することを前向きに検討していたが、「企業の中でうまく働けるかどうか分からない」という回答も多かったことから、未経験者のニーズに即した実効性の高い研修プログラムを作ることで、産業看護職の人材確保ならびに一定の質の担保をはかることに繋がると考えられた。
 また、産業保健サービスが十分に行き渡っていないとされる中小規模事業場においても、産業看護職の支援により従業員の健康づくりや企業の活性化につながることがわかり、文献レビューで明らかになった、産業看護実践能力ならびにコンピテンシーを備えた産業看護職育成の必要性が示唆された。これらの結果を基に研修プログラムおよび教材開発を進める。

公開日・更新日

公開日
2025-01-08
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2025-01-08
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202322017Z