文献情報
文献番号
202321058A
報告書区分
総括
研究課題名
特定行為にかかる評価指標を用いた活動実態調査研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22IA2007
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
真田 弘美(石川県立看護大学 )
研究分担者(所属機関)
- 康永 秀生(国立大学法人東京大学 大学院医学系研究科公共健康医学専攻臨床疫学・経済学)
- 仲上 豪二朗(東京大学大学院医学系研究科 老年看護学/創傷看護学分野)
- 紺家 千津子(石川県立看護大学 看護学部)
- 須釜 淳子(藤田医科大学 研究推進本部)
- 春山 早苗(自治医科大学 看護学部)
- 磯部 陽(国際医療福祉大学 臨床医学研究センター)
- 太田 秀樹(医療法人 アスムス)
- 吉田 美香子(東北大学大学院医学系研究科ウィメンズヘルス・周産期看護学分野)
- 北村 言(東京大学 大学院医学系研究科看護管理学/看護体系・機能学分野)
- 森田 光治良(東京大学 医学系研究科附属グローバルナーシングリサーチセンター)
- 三浦 由佳(藤田医科大学 研究推進本部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
4,642,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究では、修了者の就業する施設を対象に収集されたアウトカム指標の大規模データを分析し、患者QOLや医療者の働き方に研修修了者が与える効果を示すことを目的とする。
研究方法
令和4年度厚生労働省補助事業「看護師の特定行為に係る実態調査・分析等事業」(補助事業)で収集されたデータの分析を行った。事業の実施にあたり、研究班で協議を行い調査手法を改良し、調査プロトコルを作成した。主な改良点はデータ入力・回収方法のWebシステムから紙およびエクセルの調査票への変更、データ収集を行う部門と解析を行う部門の分離である。この調査プロトコルにもとづき、厚生労働省からの事業委託を受けて三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社が調査を実施した。研究班は厚生労働省から調査データを受領し、分析を担当した。データ分析は、修了者特性、1か月間に修了者が実施したセッティングごとの特定行為38行為の実施回数、病院・事業所単位のアウトカム、病棟単位のアウトカムについて記述統計を行った。特定行為38行為の実施回数および病院・事業所単位のアウトカムについては、令和2年度病床機能報告におけるDPC病院分類(大学病院本院群・DPC特定病院群・DPC標準病院群・DPC病院でない)の情報と修了者票、病院票とを医療機関番号を用いて紐づけし、分析した。修了者の人数が患者QOL、医療者の労働環境に及ぼす影響を検証するために、看護師150名当たりの修了者の人数がアウトカムに与える影響を回帰モデルを用いて推定した。修了者の働き方(具体的指示/包括的指示での活動や医師との協働の程度など)が患者QOL、医療者の労働環境に及ぼす影響を明らかにするために、各変数の影響を回帰モデルを用いて分析した。
結果と考察
合計1342の病院、事業所に調査の依頼状を郵送し、病院・事業所票の回答があったものはうち361件であった(回収率26.9%)。修了者票は1398件、病棟票は726件、患者・利用者票の回答は808件であった。患者・利用者票の回答808件のうち、修了者票および病院・事業所票と結合できた件数は580件であった。多変量解析においては、急性期医療領域を含む247病院を解析対象とした。看護師150人あたりの特定行為研修修了者が1名増えると、新規褥瘡発生が1000人日あたり0.16件(95%信頼区間:-0.24, -0.09; p < 0.001)有意に減少し、物理的身体拘束の延べ人数が1000人日あたり13.10人(95%信頼区間:-20.80, -5.40; p = 0.001)有意に減少した。研修修了のみであることと比べ、具体的指示または包括的指示の下で活動していることは患者のICU滞在日数の短縮に有意な影響を及ぼした。本研究において初めて、修了者の人数が増加することが褥瘡の発生の減少や物理的身体拘束の延べ人数の減少に影響すること、研修修了のみと比較して実際に活動していることがICU滞在日数の短縮に影響することを明らかにした。このような研修制度やフォローアップ体制への提言が可能な結果を示すことができた理由として、これまで改良を重ねてきた調査プロトコルのもと、十分なデータ数の確保を達成できた、という点が大きい。データ数の増加には、紙・Excelでのデータ回収が大きく影響したと考えられる。データ数は大幅に増加したが、研究として4つの限界がまだある。一つ目は、分析対象を急性期医療領域を含む病院に限定していたことである。二つ目は、修了者の人数が増加すると新規褥瘡発生が減少する、物理的身体拘束の延べ人数が減少する、という結果についてデータからはメカニズムをまだ十分明らかにできていない点である。三つめは、修了者票、病院・事業所票、患者・利用者票間でIDの紐づけができず、分析ができなかった票が多く発生してしまったという点である。四つ目は、欠損割合の高いアウトカム指標や発生頻度の非常に少ないアウトカム指標が依然として存在するという点である。これらの点を踏まえて調査票およびプロトコルを再度改良した。令和6年度はアウトカム指標へ修了者がおよぼす効果のメカニズムを明らかにするための調査・分析を実施していく。
結論
急性期医療領域を含む病院の修了者の人数と働き方が与える影響として、以下の3点を明らかにした。1. 看護師150人あたりの修了者が1名増えると新規褥瘡発生が1000人日あたり0.16件減少する。2. 看護師150人あたりの特定行為研修修了者が1名増えると物理的身体拘束が1000人日あたり13人減少する。3. 研修修了のみに比べ具体的または包括的指示にて実際に活動している修了者がいる方がICU滞在日数が短縮される。
公開日・更新日
公開日
2024-06-11
更新日
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