文献情報
文献番号
202321013A
報告書区分
総括
研究課題名
医療安全支援センターの機能評価及び質改善のためのICTを用いた地域連携と情報収集の体制構築に関する研究
課題番号
22IA1005
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
荒神 裕之(国立大学法人 山梨大学 大学院総合研究部医学域)
研究分担者(所属機関)
- 松村 由美(京都大学医学部附属病院 医療安全管理部)
- 菊池 宏幸(東京医科大学 公衆衛生学分野)
- 天笠 志保(帝京大学 公衆衛生学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
4,371,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
医療安全支援センター(センター)は、約20年に渡り、患者や家族からの相談、苦情への窓口対応を中核機能として、医療の安全の確保を図ってきた。センター設置や運営が各自治体の裁量に委ねられた制度的背景の故に、機能や対応状況などの地域格差が顕在化している(センター総合支援事業(支援事業)調査結果)。支援事業では、多様化した機能や対応状況の平準化と質向上を図る研修会等の施策が展開されているが課題は未だ少なくない。例えば、医療機関側の窓口不詳がセンター側の連携支障と示されている(嶋森好子ら「医療安全支援センターと医療機関内患者相談窓口の地域における連携と人材育成のための研究」)。これら課題解決に向けて、センターへの直接的な関わりだけでなく、医療安全推進協議会の活性化など制度全体を俯瞰し地域を包括するアプローチが必要である。これまで、地理的、時間的な制約のゆえに、枠組み作りに大きな困難を伴った。ICTの利活用は、地理的、時間的な制約を乗り越える有効な方策であり、近時のコロナ禍でICTの利活用が急拡大し、新たなアプローチを検討する基盤が整いつつある。しかしながら、ICTの利活用に伴うセキュリティ上の問題や、センター事業へ展開する具体的な方策は未だ明らかでない。
そこで本研究の目的は、センター事業の機能や対応状況における地域差を解析し、制度全体の運用状況と地域を包括する枠組みの実態との関連性を解明し、支援事業が提供すべき新たな支援の内容を明らかにすると共に、ICTの利活用による地域を包括した連携の枠組み構築について、ICT利活用に伴うセキュリティ上の問題を含めた課題を解明し、支援事業に実装化するための試行と検証を行うことである。
そこで本研究の目的は、センター事業の機能や対応状況における地域差を解析し、制度全体の運用状況と地域を包括する枠組みの実態との関連性を解明し、支援事業が提供すべき新たな支援の内容を明らかにすると共に、ICTの利活用による地域を包括した連携の枠組み構築について、ICT利活用に伴うセキュリティ上の問題を含めた課題を解明し、支援事業に実装化するための試行と検証を行うことである。
研究方法
令和4年度は、センター事業における地域差の実態解明と制度運用状況等との関連性を検討するとともに、教訓的事例の取りまとめを行った。また、令和4年度の繰越課題(令和5年度に実施)では、ICTの利活用に関して、地域を包括した連携の枠組み構築を実現するあり方の検討とシステム開発を行い、海外の医療相談対応に関する調査として、英国National Health Service(NHS)が運営する医療機関で開設されているPALS(Patient Advisory and Liaison service)の取り組みを調査した。また、センターが情報発信する際に問題となりうる倫理的、法的、社会的課題(ELSI)に関する検討と検討結果の整理、集約を行なった。
センター機能の解明では、第1に、相談員に必要とされる知識や技術、態度について明らかにすることを目指して相談員の業務実態に関するインタビュー調査を計画した。第2に、2023 年度のセンター運営調査データを基に、協議会の設置状況および協議会内での患者参画の有無について分析した。また、協議会への患者参画の視点での検討を行った。第3に、2023 年度のセンター運営調査データを基に、センターにおける人員配置(職種や人数)等の運営体制についての分析を行った。
センター機能の解明では、第1に、相談員に必要とされる知識や技術、態度について明らかにすることを目指して相談員の業務実態に関するインタビュー調査を計画した。第2に、2023 年度のセンター運営調査データを基に、協議会の設置状況および協議会内での患者参画の有無について分析した。また、協議会への患者参画の視点での検討を行った。第3に、2023 年度のセンター運営調査データを基に、センターにおける人員配置(職種や人数)等の運営体制についての分析を行った。
結果と考察
ウェブページ型のマイページを開発し、研究に必要となるアクセスログ機能や、モデル地区候補のセンターからの聴取で課題解決に資すると考えられたウェブページ管理者側からのファイル登録機能、及び視聴側の医療機関が文字による書き込みを行うことが可能な機能を実装した。英国の取り組みの調査では、相談員の配置の体制や、相談対応への苦慮などの点で日本のセンターと似た状況にある一方で、NHS内で一元化されている相談、苦情の情報管理・共有の仕組みや医療者ごとに相談、苦情の記録を個別化し、医療者への教育や指導に活用するなどの取り組みは、今後のセンターの運営に関し、参考になる情報であった。センター機能の解明では、患者相談窓口担当者にパイロットインタビューを実施してインタビューガイドを作成し、センター相談員へのインタビュー調査に着手した。また、協議会の調査では、都道府県が 63%が開催していたが、それ以外は開催していない場合が過半数であり、設置主体と協議会の開催有無には統計的有意差が認められることを明らかにした。協議会への患者参画の視点での検討では、運営調査では患者代表の参画有無は調査されていないものの、住民代表は約65%の協議会において委員として参画しており、これら住民が患者の立場で参画している実態が推察された。加えて、センターにおける人員配置(職種や人数)等の運営体制についての分析を行い、医療知識や医療行為に関する相談への対応に関して、現状の体制では、専門人材の関与に課題がある可能性を明らかにした。
結論
ICTの利活用による地域を包括した連携の枠組み構築のためのWebページ型マイページの構築を完了した。今後、実装に向けたモデル地区の運用を行い、効果と課題の解明に取り組む。
公開日・更新日
公開日
2024-06-12
更新日
-