重症多形滲出性紅斑に関する調査研究

文献情報

文献番号
200936003A
報告書区分
総括
研究課題名
重症多形滲出性紅斑に関する調査研究
課題番号
H19-難治・一般-004
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
橋本 公二(国立大学法人 愛媛大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 玉井 克人(国立大学法人 大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 飯島 正文(昭和大学)
  • 池澤 善郎(横浜市立大学)
  • 塩原 哲夫(杏林大学)
  • 外園 千恵(京都府立医科大学)
  • 森田 栄伸(島根大学)
  • 中村 好一(自治医科大学)
  • 浅田 秀夫(奈良県立医科大学)
  • 相原 雄幸(神奈川県厚木保健福祉事務所)
  • 椛島健治(国立大学法人 京都大学 大学院医学系研究科)
  • 岸本治郎(株式会社資生堂 新成長領域研究開発センター)
  • 小豆澤宏明(国立大学法人 大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 白方裕司(国立大学法人 愛媛大学 大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
52,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
重症多形滲出性紅斑は全身の皮膚多形紅斑、皮膚粘膜移行部のびらん、発熱を主症状とする疾患で、表皮の壊死性変化をきたし、しばしば重篤な視力障害を残す。従って、早期診断と迅速な治療が必要であり、診断基準整備と治療法の確立が急務である。本研究は①疫学調査、②診断基準の制定、③重症度の分類と治療ガイドラインの作成、④発症に関与する遺伝子多型の解析、⑤皮膚・角膜再生医療の開発を主な研究目的とした。
研究方法
全国の皮膚科専門医研修施設592施設に一次調査表を送付し、回答が得られた施設に二次調査表を送付し疫学調査を行った。診断基準・治療ガイドラインを整備した。SJS, TENの患者でHLAタイピングを行った。DIHS患者のゲノムワイドスキャンを行った。病態に関しては表皮内浸潤単球の性質、治療と血清サイトカインの動態、自己免疫現象、浸潤T細胞プロフィール、形質細胞様樹状細胞の面から検討を加えた。培養角膜、培養皮膚の再生法の開発に関する基礎的データを収集した。
結果と考察
SJS, TENの推定患者数は人口100万人あたりそれぞれ2.3人, 1.4人、死亡率は3.2%, 18.6%、後遺症は11%、38%であった。診断基準・治療ガイドラインを日本皮膚科学会誌に掲載し、特定疾患認定基準と個人調査表を完成させた。DIHS遺伝子多型解析は132例のスキャンを終了した。SJSとTENの病態形成にCD16陽性単球が重要であること、DIHSにおいては回復期に高率に自己抗体が検出され、皮膚組織に形質細胞様樹状細胞が多数浸潤し、制御性T細胞が高値を持続することを発見した。フローサイトメトリーを用いたDLST法を開発した。骨髄間質多能性細胞動員因子により骨髄由来細胞を回収し、皮膚構成細胞へ分化誘導可能であった。脂肪組織から間葉系幹細胞を分離培養し、脂肪細胞、骨細胞への分化能を維持していることを明らにした。ヒト外毛根鞘細胞とヒト毛乳頭細胞から、毛包原基様の細胞塊を培養できた。
結論
本研究により重症多形滲出性紅斑の年間患者推計数が明らかとなった。重症多形滲出性紅斑の診断基準、治療指針が確立できた。本疾患におけるウィルスの再活性化、関与する遺伝子多型、血中サイトカイン、候補となりうるマーカーなど、病態が明らかとなりつつある。骨髄ならびに脂肪組織由来間葉系幹細胞を用いた表皮・真皮の再生医療法の可能性を明らかにした。

公開日・更新日

公開日
2010-05-10
更新日
-

文献情報

文献番号
200936003B
報告書区分
総合
研究課題名
重症多形滲出性紅斑に関する調査研究
課題番号
H19-難治・一般-004
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
橋本 公二(国立大学法人 愛媛大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 玉井 克人(国立大学法人 大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 飯島 正文(昭和大学 医学部)
  • 池澤 善郎(横浜市立大学 大学院医学研究科)
  • 塩原 哲夫(杏林大学 医学部)
  • 外園 千恵(京都府立医科大学 大学院医学研究科)
  • 森田 栄伸(島根大学 医学部)
  • 中村 好一(自治医科大学 医学部)
  • 浅田 秀夫(奈良県立医科大学 医学部)
  • 相原 雄幸(神奈川県厚木保健福祉事務所)
  • 木下 茂(京都府立医科大学 大学院医学研究科)
  • 小豆澤 宏明(国立大学法人 大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 椛島 健治(国立大学法人 京都大学 大学院医学系研究科)
  • 岸本 治郎(株式会社資生堂 新成長領域研究開発センター)
  • 白方 裕司(国立大学法人 大阪大学 大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
重症多形滲出性紅斑(Stevens-Johnson症候群(SJS)、中毒性表皮壊死症(TEN)、薬剤過敏症症候群(DIHS))は全身の皮膚多形紅斑、粘膜傷害と発熱を伴う疾患であり、30%は死に至る重篤な疾患で、重篤な視力障害を残す。従って、早期診断と迅速な治療が必要であり、そのための診断基準整備と治療法の確立が急務である。本研究は①重症多形滲出性紅斑の疫学調査、②診断基準の制定、③重症度の分類と治療ガイドラインの作成、④重症多形滲出性紅斑の発症に関与する遺伝子多型の解析、⑤後遺症である角膜欠損、皮膚欠損に対する皮膚・角膜再生医療の開発、を主な研究目的とする。
研究方法
全国の皮膚科専門医研修施設592施設に一次調査表を送付し、回答が得られた施設に二次調査表を送付し疫学調査を行った。診断基準2005について、症例を検討することによりその精度を検討した。分担研究者施設での症例を検討することにより治療ガイドラインを作成した。SJS, TENの患者でHLAタイピングを行った。DIHS患者とコントロール計132例のゲノムワイドスキャンを行った。角膜欠損、皮膚欠損に対する皮膚・角膜再生医療の基礎的データを収集した。
結果と考察
推定患者数は人口100万人あたりSJS:2.3人, TEN:1.4人、死亡率はSJS:3.2%, TEN:18.6%、後遺症はSJS:11%、TEN:38%であり、本邦初の疫学調査が明らかとなった。SJS, TEN, DIHSの診断基準、重症度スコア、治療指針すべてが完成し、特定疾患認定基準と個人調査表を完成させた。病態解明について、薬剤、ウィルスと皮膚浸潤リンパ球との相互関係、サイトカインプロフィールなどが重要であることを示した。遺伝的背景についてHLAとの関連が示唆され、遺伝子多型解析がほぼ終了した。角膜上皮欠損に対する培養粘膜上皮移植法を確立し、骨髄幹細胞による表皮再生、毛包を備えた培養皮膚の開発の基礎的データを収集した。
結論
重症多形滲出性紅斑の診断基準、重症度スコア、治療指針を整備し、本邦初の全国疫学調査を行い、特定疾患認定基準と個人調査表を完成させた。病態解明、新規治療法の開発、遺伝子多型解析を行った。

公開日・更新日

公開日
2010-05-10
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200936003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
病態解明について、薬剤、ウィルスと皮膚浸潤リンパ球との相互関係、サイトカインプロフィールなどが重要であることを示した。現時点では明らかになっていない遺伝的背景を同定するために、ゲノム解析を開始し、DIHS患者と対照群合計134例のゲノムワイドスキャンを終了した。骨髄幹細胞による表皮再生、脂肪組織からの間葉系幹細胞の分離培養法、毛包の再生についての基礎的データを収集した。
臨床的観点からの成果
重症多型滲出性紅斑の新たな治療法として血漿交換療法と大量ガンマグロブリン静注療法の有用性について検証し、治療ガイドラインに盛り込んだ。ラジオアイソトープを用いない薬剤リンパ球幼弱化試験を開発した。後遺症である角膜上皮欠損に対する培養角膜移植法を確立し、臨床応用を行った。三次元培養皮膚をさらに改良し、羊膜を併用することにより機能的に優れた培養皮膚を作製する方法を生み出し、さらに簡易作製法を開発した。
ガイドライン等の開発
重症多形滲出性紅斑(Stevens Johnson syndrome;SJS, toxic epidermal necrolysis;TEN, drug-induced hypersensitivity syndrome;DIHS)の重症度スコア、治療ガイドラインを作成し、日本皮膚科学会誌に掲載した。また、診断マニュアルを改訂し、難病情報センターウェブサイトにてアップデートした。
その他行政的観点からの成果
重症多形滲出性紅斑の疫学調査(1次調査、2次調査)をほぼ終了し、推定発生率、死亡率、後遺症を明らかにした。特定疾患に認定され、認定基準と個人調査票を制定した。
その他のインパクト
特になし。

発表件数

原著論文(和文)
24件
原著論文(英文等)
198件
その他論文(和文)
95件
その他論文(英文等)
10件
学会発表(国内学会)
123件
学会発表(国際学会等)
78件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計8件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
その他成果(普及・啓発活動)
2件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
相原道子,狩野葉子,飯島正文,他
Stevens-Johnson症候群および中毒性表皮壊死症(TEN)の治療指針。-平成20年度厚生労働科学研究補助金(難治性疾患克服研究事業)重症多形滲出性紅斑に関する調査研究班による治療指針 2009の解説-
日本皮膚科学会雑誌 , 119 (11) , 2157-2163  (2009)
原著論文2
岡崎秀規、藤山幹子、村上信司、他
薬剤性過敏症症候群 (DIHS)の特徴的な顔面の所見とHHV-6再活性化との時間的関係
日本皮膚科学会雑誌 , 119 (11) , 2187-2193  (2009)
原著論文3
山根裕美子、相原道子、 立脇聡子、他
Stevens-Johnson症候群および中毒性表皮壊死症の治療と予後に関する検討
アレルギー , 58 (5) , 537-547  (2009)
原著論文4
Tohyama M, Shirakata Y, Sayama K, et al.
The influence of hepatic damage on serum soluble Fas ligand levels of patients with drug rashes
J Allergy Clin Immunol. , 123 (4) , 971-972  (2009)
原著論文5
Tohyama M, Hanakawa Y, Shirakata Y, et al.
IL-17 and IL-22 mediate IL-20 subfamily cytokine production in cultured keratinocytes via increased IL-22 receptor expression.
Eur J Immunol , 39 (10) , 2279-2288  (2009)
原著論文6
Yang L, Shirakata Y, Tokumaru S, et al.
Living Skin Equivalents Constructed Using Human Amnions as a Matrix.
J Dermatol Sci , 56 (3) , 188-195  (2009)
原著論文7
Shiohara T
Fixed drug eruption: pathogenesis and diagnostic tests.
Curr Opin Allergy Clin Immunol , 9 (4) , 316-321  (2009)
原著論文8
Shiohara T, Kano Y, Takahashi R
Current concepts on the diagnosis and pathogenesis of drug-induced hypersensitivity syndrome.
JMAJ , 52 (5) , 347-352  (2009)
原著論文9
Aota N, Shiohara T
Viral connection between drug rashes and autoimmune diseases: how autoimmune responses are generated after resolution of drug rashes.
Autoimmun Rev , 8 (6) , 488-494  (2009)
原著論文10
Takahashi R, Kano Y, Yamazaki Y, et al.
Defective regulatory T cells in patients with severe drug eruptions: timing of the dysfunction is associated with the pathological phenotype and outcome.
J Immunol , 182 (12) , 8071-8079  (2009)
原著論文11
Sotozono C, Ueta M, Koizumi N, et al.
Diagnosis and treatment of Stevens-Johnson syndrome and toxic epidermal necrolysis with ocular complications
Ophthalmology , 116 (4) , 685-690  (2009)
原著論文12
Araki Y, Sotozono C, Inatomi T, et al.
Successful treatment of Stevens-Johnson syndrome with steroid pulse therapy at disease onset
Am J Ophthalmol , 147 (6) , 1004-1011  (2009)
原著論文13
Ueta M, Sotozono C, Takahashi J, et al.
Examination of Staphylococcus aureus on the ocular surface of patients with catarrhal ulcers
Cornea , 28 (7) , 780-782  (2009)
原著論文14
Tanioka H, Kawasaki S, Sotozono C, et al.
The relationship between preoperative clinical scores and immunohistological evaluation of surgically resected tissues in chronic severe ocular surface diseases
Jpn J Ophthalmol , 54 (1) , 66-73  (2010)
原著論文15
Tokuda R, Nagao M, Hiraguchi Y, et al.
Antigen-induced expression of CD203c on basophils predicts IgE-mediated wheat allergy
Allergol Int , 58 (2) , 193-199  (2009)
原著論文16
Kabashima K, Sakabe JI, Yoshiki R, et al.
Involvement of Wnt signaling in dermal fibroblasts
Am J Pathol , 176 (2) , 721-732  (2009)
原著論文17
Hashikawa K, Hamada T, Ishii N, et al.
The compound heterozygote for new/recurrent COL7A1 mutations in a Japanese patient with bullous dermolysis of the newborn
J Dermatol Sci , 56 (1) , 66-68  (2009)
原著論文18
Tamai K, Kaneda Y, Uitto J.
Molecular therapies for heritable blistering diseases
Trends Mol Med , 15 (7) , 285-292  (2009)
原著論文19
Tohyama M, Hashimoto K, Yasukawa M, et al.
Association of human herpesvirus 6 reactivation with the flaring and severity of drug-induced hypersensitivity syndrome
Br J Dermatol , 157 (5) , 934-940  (2007)
原著論文20
Sotozono C, Ang LP, Koizumi N, et al.
New grading system for the evaluation of chronic ocular manifestations in patients with Stevens-Johnson syndrome
Ophthalmology , 114 (7) , 1294-1302  (2007)

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
-