ライソゾーム病(ファブリ病含む)に関する調査研究

文献情報

文献番号
200936002A
報告書区分
総括
研究課題名
ライソゾーム病(ファブリ病含む)に関する調査研究
課題番号
H19-難治・一般-002
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
衛藤 義勝(東京慈恵会医科大学 遺伝病(ライソゾーム病)研究講座)
研究分担者(所属機関)
  • 鈴木義之(国際医療福祉大学大学院)
  • 芳野 信(久留米大学医学部小児科学)
  • 田中あけみ(大阪市立大学大学院医学研究科発達小児医学)
  • 島田 隆(日本医科大学生化分子生物学講座)
  • 酒井規夫(大阪大学大学院医学研究科内科系臨床医学専攻情報統合医学小児科学)
  • 高橋 勉(秋田大学医学部生殖発達医学講座小児科学分野)
  • 高柳正樹(千葉県こども病院)
  • 大野耕策(鳥取大学医学部脳神経小児科学)
  • 辻 省次(東京大学医学部付属病院・神経内科学)
  • 難波栄二(鳥取大学生命機能研究支援センター)
  • 鈴木康之(岐阜大学医学部医学教育開発研究センター)
  • 桜庭 均(明治薬科大学分析化学教室)
  • 北川照男(財団法人東京都予防医学協会)
  • 奥山虎之(国立成育医療センター臨床検査部)
  • 坪井一哉(名古屋セントラル病院血液内科)
  • 松田純子(東海大学未来科学技術共同研究センター)
  • 加藤俊一(東海大学医学部基盤診療学系再生医療科学)
  • 遠藤文夫(熊本大学大学院生命科学研究部小児科学)
  • 下澤伸行(岐阜大学生命科学総合研究支援センターゲノム研究分野)
  • 今中常雄(富山大学大学院医学薬学研究部分子細胞生物学)
  • 小林博司(東京慈恵会医科大学DNA医学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
49,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の最終目的はLSD患者の予後、ADL、QOLの改善にあり、この目的のために.現時点での臨床像(I)を明らかにし、同時に病態を詳細に解析する(II)ことで、新たな診断・治療法の開発(III)につなげていく。 以上のI-IIIの三つの柱を相互に関連付けつつ進めていく。
研究方法
I臨床像把握ではQOLスクリーニング実施、新生児スクリーニング方法開発、ムコリピドーシス(ML)の自然歴、II病態解析ではMLの遺伝子・オートファジー機能解析、ゴーシェ病遺伝子とパーキンソン病の関連性、ニーマンピックA/Bでの細胞内コレステロール輸送解析、ペルオキシソーム膜形成の分子病態解析が為され、III.治療ではゴーシェ病・GM1ガングリオシドーシスなどへの経口シャペロン療法開発、AAV・レンチウイルスベクターを用いた遺伝子治療、造血幹細胞移植の後方視的研究および標準移植法の開発を進めている。更にライソゾーム病疾患モデルマウスおよびヒト線維芽細胞由来のiPS細胞樹立を試みた。
結果と考察
ムコ多糖症(MPS)の患者家族の意識調査では酵素補充療法を積極的に考える傾向。MPSI、Pompe病、ファブリー病スクリーニングは簡便性、有効性が証明されている。GBA遺伝子のパーキンソンの発症との関連有意性、サポシンC欠損マウスの作製および病態解明、ファブリー病バイオマーカーの測定法開発、MLでのオートファゴゾームとライソゾームの融合後のクリアランス低下、更にペルオキシソーム膜形成における因子Pex19p,Pex3pの相互作用の重要性を指摘。ゴーシェ病、βガラクトシダーゼ欠損症のシャペロン療法の開発進展、MLDに対する遺伝子治療ではAAV1型ベクター髄腔内注射の有効性検討、クラッベ病ではレンチウイルスの性能改善などの成果を挙げつつある。造血幹細胞移植に関しては生着因子として、細胞源としての骨髄、同胞ドナー、HLA適合、非照射前処置が挙げられた。更にiPS細胞研究はFabry病, Krabbe病, ムコ多糖症VII型のモデルマウスよりiPS細胞の樹立に成功し、ヒト由来の細胞開発を開始している。
結論
今回も引き続きライソゾーム疾患の臨床予後、QOLの改善を目指して様々な研究が行なわれた。酵素補充療法がいくつかのライソゾーム疾患で保険適応となり臨床面でも新しい展開を迎えつつある現在、更によりよい根本治療や他の疾患に対する対策などますますより精力的な調査研究を推進する必要があると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2010-05-26
更新日
-

文献情報

文献番号
200936002B
報告書区分
総合
研究課題名
ライソゾーム病(ファブリ病含む)に関する調査研究
課題番号
H19-難治・一般-002
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
衛藤 義勝(東京慈恵会医科大学 遺伝病(ライソゾーム病)研究講座)
研究分担者(所属機関)
  • 鈴木義之(国際医療福祉大学大学院)
  • 芳野 信(久留米大学医学部小児科学)
  • 田中あけみ(大阪市立大学大学院医学研究科発達小児医学)
  • 島田 隆(日本医科大学生化分子生物学講座)
  • 酒井規夫(大阪大学大学院医学研究科内科系臨床医学専攻情報統合医学小児科学)
  • 高橋 勉(秋田大学医学部生殖発達医学講座小児科学分野)
  • 高柳正樹(千葉県こども病院)
  • 大野耕策(鳥取大学医学部脳神経小児科学)
  • 辻 省次(東京大学医学部付属病院・神経内科学)
  • 難波栄二(鳥取大学生命機能研究支援センター)
  • 鈴木康之(岐阜大学医学部医学教育開発研究センター)
  • 桜庭 均(明治薬科大学分析化学教室)
  • 北川照男(財団法人東京都予防医学協会)
  • 奥山虎之(国立成育医療センター臨床検査部)
  • 坪井一哉(名古屋セントラル病院血液内科)
  • 松田純子(東海大学未来科学技術共同研究センター)
  • 加藤俊一(東海大学医学部基盤診療学系再生医療科学)
  • 遠藤文夫(熊本大学大学院生命科学研究部小児科学)
  • 下澤伸行(岐阜大学生命科学総合研究支援センターゲノム研究分野)
  • 今中常雄(富山大学大学院医学薬学研究部分子細胞生物学)
  • 小林博司(東京慈恵会医科大学DNA医学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の最終目的はLSD患者の予後、ADL、QOLの改善にあり、この目的のために.現時点での臨床像(I)を明らかにし、同時に病態を詳細に解析する(II)ことで、新たな診断・治療法の開発(III)につなげていく。 以上のI-IIIの三つの柱を相互に関連付けつつ進めていく。
研究方法
I臨床像把握ではQOLスクリーニング実施、新生児スクリーニング方法開発、ムコリピドーシス(ML)の自然歴、II病態解析ではMLの遺伝子・オートファジー機能解析、ゴーシェ病遺伝子とパーキンソン病の関連性、ニーマンピックA/Bでの細胞内コレステロール輸送解析、ペルオキシソーム膜形成の分子病態解析が為され、III.治療ではゴーシェ病・GM1ガングリオシドーシスなどへの経口シャペロン療法開発、AAV・レンチウイルスベクターを用いた遺伝子治療、造血幹細胞移植の後方視的研究および標準移植法の開発を進めている。更にライソゾーム病疾患モデルマウスおよびヒト線維芽細胞由来のiPS細胞樹立を試みた。
結果と考察
ムコ多糖症(MPS)の患者家族の意識調査では酵素補充療法を積極的に考える傾向。MPSI、Pompe病、ファブリー病スクリーニングは簡便性、有効性が証明されている。GBA遺伝子のパーキンソンの発症との関連有意性、サポシンC欠損マウスの作製および病態解明、ファブリー病バイオマーカーの測定法開発、MLでのオートファゴゾームとライソゾームの融合後のクリアランス低下、更にペルオキシソーム膜形成における因子Pex19p,Pex3pの相互作用の重要性を指摘。ゴーシェ病、βガラクトシダーゼ欠損症のシャペロン療法の開発進展、MLDに対する遺伝子治療ではAAV1型ベクター髄腔内注射の有効性検討、クラッベ病ではレンチウイルスの性能改善などの成果を挙げつつある。造血幹細胞移植に関しては生着因子として、細胞源としての骨髄、同胞ドナー、HLA適合、非照射前処置が挙げられた。更にiPS細胞研究はFabry病, Krabbe病, ムコ多糖症VII型のモデルマウスよりiPS細胞の樹立に成功し、ヒト由来の細胞開発を開始している。
結論
今回も引き続きライソゾーム疾患の臨床予後、QOLの改善を目指して様々な研究が行なわれた。酵素補充療法がいくつかのライソゾーム疾患で保険適応となり臨床面でも新しい展開を迎えつつある現在、更によりよい根本治療や他の疾患に対する対策などますますより精力的な調査研究を推進する必要があると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2010-05-26
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200936002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
ゴーシェ病遺伝子のパーキンソンの発症との関連有意性指摘、サポシンC欠損マウス病態解明、ムコリピドーシス、ペルオキシソーム病の病態解明、ゴーシェ病、βガラクトシダーゼ欠損症のシャペロン療法の開発進展、異染性白質ジストロフィー(MLD)、クラッベ病での遺伝子治療研究の進展。更にiPS細胞研究はファブリー病, クラッベ病, ムコ多糖症VII型のマウスよりiPS細胞樹立。

臨床的観点からの成果
ムコ多糖症(MPS)の患者家族の意識調査では酵素補充療法を積極的に考える傾向。MPSI(ムコ多糖症Ⅰ型)、Pompe病、ファブリー病スクリーニングは簡便性、有効性が証明されている。造血幹細胞移植に関しては後方視的研究を施行し生着因子として、細胞源としての骨髄、同胞ドナー、HLA適合、非照射前処置が挙げられた。
ガイドライン等の開発
1. 2008年3月、ペルオキシソーム病診断パンフレットを出版し診断フローチャートを示した。
2. 尿を用いる信頼性の高いFabry診断法を開発し、早期治療により予後を改善したことをPed. Neph(2008) 23 :1461-1471に報告。
3. ファブリ病およびポンペ病の診断・治療ハンドブツクを一般向けに発刊(審議会では参考にされていない)
その他行政的観点からの成果
ペルオキシソーム病国内診断システムの確立と診断パンフレットの作成
ポンペ病乳児型の新早期スクリーニング法(Immune capture法)の開発
わが国におけるライソゾーム病(ゴーシェ病、ポンペ病、ファブリー病、MPS)患者のQOLおよびADLの実態調査

その他のインパクト
/明薬大公開シンポ2010 /ペルオキシソーム病治療研究(中日新聞2009.11.18)/ 糖鎖科学・糖鎖工学への招待コース(2008,2009)/ 第3回国際ライソゾーム病シンポ(2009.名古屋)/ニーマン・ピック病C型関連番組(2009.9.28. NHK夕時ネットワーク) /インターネット.ソネットm3「オピニオンメッセージ―ムコ多糖症I型について」 / Kiss FMまゆみとドクター森下のバイオRadio「ムコ多糖症について」(2009.6.13)

発表件数

原著論文(和文)
8件
原著論文(英文等)
87件
その他論文(和文)
55件
その他論文(英文等)
12件
学会発表(国内学会)
210件
学会発表(国際学会等)
76件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計9件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
11件
ペルオキシソーム病診断パンフレット,ホームページ開設、ファブリ病スクリーニングに関するセミナー、ムコ多糖症親の会でのシンポ、その他各種講演

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Miyake, N., Miyake, K., Karlsson, S., et al.
Successful Treatment of Metachromatic Leukodystrophy Using Bone Marrow Transplantation of HoxB4 Overexpressing Cells.
Mol. Ther.  (2010)
原著論文2
Yoneshige, A., Suzuki, K.,Suzuki K.,et al.
A Mutation in the Saposin C Domain of the Sphingolipid Activator Protein (Prosaposin) Gene Causes Neurodegenerative Disease in Mice.
J. Neurosci. Res.  (2010)
原著論文3
Kobayashi, H., Shimada, Y., Ikegami, M., et al.
Prognostic factors for the Late Onset Pompe Disease with Enzyme Replacement Therapy: From Our Experience of 4 cases including an autopsy case.
Mol. Genet. Metab. , 100 (1) , 14-19  (2010)
原著論文4
Kyosen, OS., Iizuka, S., Kobayashi, H., et al.
Neonatal gene transfer using lentiviral vector for murine Pompe disease: long term expression and glycogen reduction.
Gene Therapy. , 17 , 521-530  (2010)
原著論文5
Otomo, T., Higaki, K., Nanba, E., et al.
Inhibition of autophagosome formation restores mitochondrial function in mucolipidosis II and III skin fibroblasts.
Mol Genet Metab , 98 (4) , 393-399  (2009)
原著論文6
Araya, K., Sakai, N., Mohri, I., et al.
Localized donor cells in brain of a Hunter disease patient after cord blood stem cell transplantation
Mol Genet Metab , 98 (3) , 255-263  (2009)
原著論文7
Sugawara K., Tajima Y., Kawashima I.,et al.
Molecular interaction of imino sugars with human α-galactosidase: Insight into the mechanism of complex formation and pharmacological chaperone action in Fabry disease.
Mol. Genet. Metab. , 96 (4) , 233-238  (2009)
原著論文8
Tajima, Y., Kawashima, I., Tsukimura, T., et al.
Use of a modified α-N-acetylgalactosaminidase in the development of enzyme replacement therapy for Fabry disease.
Am. J. Hum. Genet. , 85 (5) , 569-580  (2009)
原著論文9
Kashiwayama, Y., Seki, M.,Yasui, A., et al.
70-kDa peroxisomal membrane protein related protein (P70R/ABCD4) localizes to endoplasmic reticulum not peroxisomes, and NH2-terminal hydrophobic property determines the subcellular localization of ABC subfamily D proteins.
Exp. Cell Res. , 315 (2) , 190-205  (2009)
原著論文10
Ogawa, K., Hirai, Y., Ishizaki, M., et al.
Long-term inhibition of glycosphingolipid accumulation in Fabry model mice by a single systemic injection of AAV1 vector in the neonatal period.
Mol. Genet. Metab. , 96 , 91-96  (2009)
原著論文11
Takahashi, Y., Seki, N., Ishiura, H., et al.
Development of a high-throughput microarray-based resequencing system for neurological disorders and its application to molecular genetics of amyotrophic lateral sclerosis
Arch. Neurol , 65 (10) , 1326-1332  (2008)
原著論文12
Kitagawa, T., Suzuki, K., Ishige, N., et al.
Non-invasive high-risk screening for Fabry disease femizygotes and heterozygotes
Pediatr Nephrol , 23 , 1461-1471  (2008)
原著論文13
Yoshimizu, M., Tajima, Y., Matsuzawa, F., et al.
Binding parameters and thermodynamics of the interaction of imino sugars with a recombinant human acid α-glucosidase (alglucosidase alfa): Insight into the complex formation mechanism.
Clin. Chim. Acta , 391 , 68-73  (2008)
原著論文14
Ohno, K., Saito, S., Sugawara, K.., et al.
Structural consequences of amino acid substitutions causing Tay-Sachs disease.
Mol. Genet. Metab. , 94 (4) , 462-468  (2008)
原著論文15
Tsukimura, T., Tajima, Y., Kawashima, I., et al.
Uptake of a recombinant human α-L-iduronidase (laronidase) by cultured fibroblasts and osteoblasts.
Biol. Pharm. Bull. , 31 (9) , 1691-1695  (2008)
原著論文16
Kobayashi, M., Ohashi, T., Sakuma, M., et al.
Clinical manifestations and natural history of Japanese heterozygous females with Fabry disease.
J. Inherit. Metab. Dis.  (2008)
原著論文17
Kato, T., Kato, Z., Kuratsubo, I., et al.
Evaluation of ADL in patients with Hunter disease using FIM score
Brain and Development , 29 (5) , 298-305  (2007)
原著論文18
Kawashima, I., Ohsawa, M., Fukushige, T., et al.
Cytochemical analysis of storage materials in cultured skin fibroblasts from patients with I-cell disease.
Clin. Chim. Acta , 378 , 142-146  (2007)
原著論文19
Kurai, T., Hisayasu, S., Kitagawa. R., et al.
AAV1 mediated co-expression of formylglycine-generating enzyme and arylsulfatase A efficiently corrects sulfatide storage in a mouse model of metachromatic leukodystrophy.
Mol. Ther. , 15 , 38-43  (2007)
原著論文20
Ohashi, T., Sakuma, M., Kitagawa, T., et al.
Influence of antibody formation on reduction of globotriaosylceramide (GL-3) in urine from Fabry patients during agalsidase beta therapy.
Mol. Genet. Metab. , 92 (3) , 271-273  (2007)

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
-