職域におけるHIV感染症に関する知識の普及啓発の促進に向けた研究

文献情報

文献番号
202319019A
報告書区分
総括
研究課題名
職域におけるHIV感染症に関する知識の普及啓発の促進に向けた研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23HB1003
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
横幕 能行(独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター 感染症内科)
研究分担者(所属機関)
  • 高橋 秀人(帝京平成大学 薬学部)
  • 増田 将史(独立行政法人国立病院機構 名古屋医療センター臨床研究センター)
  • 生島 嗣(特定非営利活動法人ぷれいす東京)
  • 石丸 知宏(産業医科大学 産業生態科学研究所 環境疫学研究室)
  • 今橋 真弓(柳澤 真弓)(独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター 臨床研究センター 感染・免疫研究部)
  • 堀 愛(筑波大学 医学医療系)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
11,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
職域は、国民皆保険制度下の日本において、悉皆的に国民に健康情報提供を行うことが可能な領域で、知人友人、家族内などへの二次的な普及効果も期待できる重要な啓発の場となり得る。本研究では、HIVと共に生きる人々に対する差別偏見の解消とQOLの改善を目的に、職域でHIV及びHIV感染症/AIDSに関する正しい知識の普及啓発を行う。職域でのエイズに関する最新で正しい知識の普及啓発がPLHIVのQOL改善に重要であることを示すとともに、エイズ関連の課題克服への取組は、職域においてヘルスリテラシー向上や適切な健康情報取扱規定の策定と運用に寄与することを検証する。
研究方法
エイズ等の知識の普及啓発の現状評価のために、職域の比較対象群として、一般人口におけるエイズの知識普及度をインターネットを利用して調査する。先行研究で実施した啓発効果の検証のため、先行研究参加企業等に協力を得て、上記インターネット調査と同じ内容で職域でのエイズの知識普及状況を調査する。
職域におけるエイズ等検査の提供機会の整備を目的に、職域における風疹の検査・ワクチン勧奨の取り組みの知見を基に、啓発の結果エイズ等検査受検を想起した者に対し、産業保健業務従事者が中心となり、エイズ等検査が健診センターで提供可能となるための課題を抽出、検討する
報道等で表面化していない採用時や就労現場でHIVを理由として不利益を被った事例収集するために、相談施設、医療現場及び職域で事例を収集し解析する。
結果と考察
文献調査によると我が国の15~64歳の労働力人口比率は80.1%で、被保険者は9300万人(73%)でその50%が被用者保険を使用していた。名古屋医療センターの2022年の定期通院者1521人の労働力人口割合は約90%であったその約6割が被用者保険を使用していた。教育機関に加え職域も啓発の場として重要である。国民に広くエイズに関する啓発を行うためには、職域でエイズに関する情報を提供することは有効である。
職域での知識普及度の確認の前に、インターネット調査により一般市民のエイズに関する知識普及度を調査した。これにより国民一般の現在の予防指針改正後の知識普及度の評価が可能になる。また、職域での知識普及度の調査のために、アンケート協力企業を募り2023年末時点で、先行研究参画企業3社、非参画企業1社の協力を得た。アンケート調査内容を決定し倫理審査承認を受けた。先行研究でHIV検査機会を提供した企業、しなかった企業で同様の調査を行うことで、企業での啓発がエイズの知識普及にどの程度貢献しているか評価が可能になる。
健診や人間ドックにおけるエイズ等検査実施について実務担当者のヒアリング調査準備を行った。これは産業保険業務従事者の知識普及度調査を兼ねる。今年度、調査のための半構造化面接のインタビューガイドを作成し、倫理審査承認を受けた。現在、エイズ等検査が適切に実施される体制は十分ではない。この点について、風疹対策で職域での検査・ワクチン接種勧奨に従事する研究者により、HIV検査への抵抗に関する課題の検討が提起開始されたことは重要である。ガイドラインの主旨が正しく理解され、健康情報管理規程に基づき適正なHIV検査が職域でも提供可能になることが期待される。
「職場におけるエイズ問題に関するガイドライン」を現状に即した内容に改正すべき等の提言を行った「職域における HIV検査の現状と課題」が産業衛生学雑誌に掲載された。産業保健従事者から職域に向けた課題提起されることは重要である。
当事者に対する調査として、ぷれいす東京への相談者及び名古屋医療センター感染症内科定期通院中の患者を対象にインタビューによる事例収集を開始した。また、産業保険業務従事者に対して寄せられた、就労現場での課題と現場の対応等についての実態調査を実施した。医療・福祉分野でと異なり一般企業において不利益を被った事案は表面化していないが、今回の調査より職域の啓発不足から不利益を被っている者は少なくないのではと推測される。プライバシーに十分配慮しつつ丁寧な聞き取りを当事者に行うことにより、QOL改善に対する職域での啓発の重要性が明らかになる可能性がある。
結論
職域では従業員に対しHIV検査が行われている実態があり、それに即したガイドラインの改正や運用の改善を行う必要がある。ガイドラインが適正に活用されてこなかった結果、職域でエイズに関する知識普及が測られてこなかった結果PLHIVが不利益を被っている可能性ある。本研究により、エイズに関する差別偏見解消のためには職域における啓発が重要であることを示し、実施できるよう産業保険従事者と連携する必要がある。

公開日・更新日

公開日
2025-05-13
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2025-05-13
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202319019Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
14,300,000円
(2)補助金確定額
14,296,000円
差引額 [(1)-(2)]
4,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 4,174,407円
人件費・謝金 2,201,722円
旅費 428,620円
その他 4,191,276円
間接経費 3,300,000円
合計 14,296,025円

備考

備考
千円未満切り捨てのため

公開日・更新日

公開日
2025-05-13
更新日
-