孤発性ALSの分子異常を標的とした治療技術の確立

文献情報

文献番号
200935064A
報告書区分
総括
研究課題名
孤発性ALSの分子異常を標的とした治療技術の確立
課題番号
H21-こころ・一般-017
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
郭 伸(東京大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 相澤仁志(旭川医科大学)
  • 村松慎一(自治医科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
孤発性ALS運動ニューロンでは、グルタミン酸受容体サブタイプであるAMPA受容体のGluR2 サブユニットQ/R 部位でRNA編集が低下しており,これは,同部位の特異的RNA編集酵素であるadenosine deaminase acting on RNA 2 (ADAR2)の活性低下に依ると考えられる.この分子異常は孤発性ALSに疾患特異的分子異常であり,運動ニューロン死の直接原因であることを,ADAR2のコンディショナルノックアウトマウスの解析から明らかにした.本研究では,ADAR2活性の正常化が孤発性ALSの治療につながると考えられるので、ADAR2活性賦活によるALS治療の基盤技術の確立を目的とする.
研究方法
我々が開発したTetHeLaG2m細胞を様々な化学物質に暴露し,ADAR2活性を賦活する物質を市販薬およびUS Drug Collectionから探索した。このスクリーニングにより得られた候補物質を野生型マウスに全身投与し,運動ニューロンにおけるADAR2活性賦活作用を検討した.また,ADAR2 遺伝子治療のためのベクターを開発し、培養細胞、野生型マウス脳実質投与によるADAR2 活性賦活作用を検討した。
結果と考察
TetHeLaG2m細胞を用いてADAR2活性賦活する物質を約20種類得た。これらの作用メカニズムは、ADAR2 mRNA発現量の増加によるもの、ADAR2 mRNA/GluR2 pre-mRNA比の増加によるものの他、これらのADAR2 活性に関連しうる分子には影響を与えないものがあり、異なる分子メカニズムに依ることが明らかになった.一部の薬剤を野生型マウスに投与し、脳・脊髄におけるADAR2 活性を賦活することを確認した。また、ヒトADAR2a、変異型ADAR2E396A cDNAをAAVベクターに組み込んだコンストラクトを作製し、培養細胞、マウス脳実質投与によりADAR2活性を賦活することを確認した.さらに、血管内投与による遺伝子導入のためのベクターを開発し、脊髄ChAT陽性細胞の20%程度に発現するAAVベクターの開発に成功した.以上の成果により、目的とするADAR2 活性賦活によるALS治療の基盤技術の確立を進めている。
結論
1)ADAR2活性賦活物質のスクリーニングを進めin vivoでも作用を持つ物質を複数得た.
2)遺伝子治療のためのコンストラクトの開発、血管経由による神経細胞への遺伝子導入のためのベクターの開発を進めた.

公開日・更新日

公開日
2010-08-31
更新日
-